コラム:細野真宏の試写室日記 - 第31回
2019年6月27日更新
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
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第31回 「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」。【最速レビュー】
2019年6月26日@ソニー試写室
目下、世界興行収入で「タイタニック」を超え、あと少しで「アバター」を抜いて“世界興行収入歴代NO1” の座を奪えそうなところまで来ている「アベンジャーズ エンドゲーム」。日本では、始まりとなる「アイアンマン」で興行収入9.4億円からのスタートでしたが、アベンジャーズの大きな流れが終わる、ということで、「アベンジャーズ エンドゲーム」では、それまで最高だった「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」の興行収入37.3億円を超え、初の40億円台どころか、60億円突破という見事な結果を記録しました。ようやく日本でも「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の作品力に大きな弾みがつきそうな状況になったと言えそうです。
そんな中で、「ここまで世界的に大きくなったコンテンツがこれからどこに向かうのか」が世界中で大きな関心事となっているのですが、まさにその答えの一端が、本作「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」に隠されています!
そもそも「アベンジャーズ エンドゲーム」は、これまでの集大成であったため、あまりに情報量が多く、よくよく考えると、謎はまだ多くあります。
例えば、地球から人口の半分が消え去って、5年後に元に戻ったわけですが、果たして、その5年間に「消えていた人」と「残っていた人」では、現実社会ではどのような違いになったのでしょうか?
本作は、「アベンジャーズ エンドゲーム」の直後から描かれているので、まさにそれらの話が具体的に語られます。
しかも、これだけ世界中での注目作品でありながら、日本では、アメリカなどよりも前に「世界最速公開」されます!
やはり日本では「スパイダーマン」だけは特別な存在のようで、2008年の「アイアンマン」から始まった「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の単体作品では、1作目の「スパイダーマン ホームカミング」が興行収入28億円と他を圧倒しています。
「スパイダーマン」シリーズの大きな魅力は、主役のピーター・パーカーが現代の高校生だったりと、他のシリーズとは違った「シンプルさ」にあります。
今回であれば、「アベンジャーズ エンドゲーム」のラストで“重すぎる現実”にぶつかったばかりのピーターが、せめて「ホームのニューヨークを離れ、夏休みの修学旅行(ヨーロッパ)くらいは普通でいたい」と、自分自身の生活を改めて考えようとすることは誰もが共感できるのではないでしょうか。
とは言え、「スパイダーマン」シリーズの根底には「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という、シンプルで深い哲学があり、その哲学と“重すぎる現実”が交差する瞬間が訪れる度に、きっと「アベンジャーズ エンドゲーム」を見た全員が、ピーターにシンクロできると思います。
もちろん本作は、アクション・恋愛・ユーモアなど様々な要素が満載で単体でも十分に楽しめるのですが、特に「アベンジャーズ エンドゲーム」で“重すぎる現実”を目の当たりにした人には、ぜひ連続で見ておいてほしい作品なのです。
思えば10年ほど前に、「アイアンマン」を初めて見た時に感じた「これから何か凄いことが始まる!」という予感。
期待通りの10年だったわけですが、本作「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」を見終わった後には、あの時と同じものを感じました。
終わりがあれば始まりもあります。そんな、シンプルな深さが「スパイダーマン」シリーズには似合っています。
これから何年後になるのか分かりませんが、「アベンジャーズ エンドゲーム」級の作品が今度こそ日本で興行収入100億円を突破できるように、まずは、「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」には一気に「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」の 37.3億円に匹敵するような40億円規模の大ヒットを期待したいところです。
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono