「ドラゴンボール超 ブロリー」。ドラゴンボール史上、いや、東映アニメーション映画史上、最高峰の出来の作品! : 細野真宏の試写室日記

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コラム:細野真宏の試写室日記 - 第15回

2018年12月12日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第15回「ドラゴンボール超 ブロリー」。ドラゴンボール史上、いや、東映アニメーション映画史上、最高峰の出来の作品!

2018年11月6日@丸の内TOEI①

今年の冬休み映画は、期待通り、前回に書いたように、少し早い段階で「ボヘミアン・ラプソディ」から盛り上がってきてくれました。

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」がヒットするのは誰が考えても明らかなので、本来の冬休み期間前の「ボヘミアン・ラプソディ」から勢いが出たことは映画業界にとっても頼もしい限りなのです。

ボヘミアン・ラプソディ」は、出来やポテンシャルを考えると、どうしても「グレイテスト・ショーマン」は超えないとおかしい、と思っていて、何とか無事に達成してほしいと思います。

ただ、この流れを見越した前回の、次の一文が、現実味を帯びてきて複雑な気持ちなのです…。

〈「12月14日公開週末は、日本の映画館の座席が足りなくなるんじゃないのか?」という危惧さえしています(笑)。〉

まさに、その大きな要因になりそうなのが、今回の「ドラゴンボール超 ブロリー」なのです!

画像1 (C)バードスタジオ/集英社 (C)「2018ドラゴンボール超」製作委員会

そもそも「ドラゴンボール」のマンガでの連載が始まったのは1984年で、1995年までの10年半続き、この当時は「少年ジャンプ」の発行部数が歴代最高の653万部(!!)を記録するなど、文字通り「社会現象化」してました。

ドラゴンボール」の映画が始まったのは連載開始の2年後の1986年からで、最初は年1で公開され、第5作目からは春休み映画、夏休み映画として、年2回体制になり、1996年の第17作目で”終わった状態“になっていました。

とは言え、テレビアニメとしての放送はコツコツと続いていて、2013年に(17年ぶりに!)第18作目の映画「DRAGON BALL Z 神と神」が作られました。

一度、映画としては終わっていたものを復活させるには、それなりの「モチベーションを上げる仕掛け」が必要です。

そこで第18作目の「DRAGON BALL Z 神と神」では、これまでと何が変わったのかというと、何と言っても原作者の鳥山明が関わったことでしょう。

大まかなストーリーとキャラクターデザインを手掛け、これまでとは一線を画すような注目をされ、改めて「ドラゴンボール」というコンテンツのポテンシャルを示す形になりました。

そして2年後の2015年の第19作目「ドラゴンボールZ 復活の「F」」ではさらに鳥山明が脚本とキャラクターデザインを手がけ、ますます注目され、日本での興行収入は37.4憶円を記録し、全世界では79億円を記録するなど、世界的なコンテンツであることが改めて証明された形になってきています。

ただ、原作者の鳥山明は良くも悪くも子供を意識して脚本を書いているように思えます。

第18作目「DRAGON BALL Z 神と神」から始まった新シリーズでは、個人的には少し子供に寄り過ぎているのかな、という印象を持っていました。

とは言え、この「ドラゴンボール」という伝説的な作品に、第18作目から「原作者・鳥山明が参加」したことで私の好奇心が触発されたのは確かでした。

さて、そういう変遷を経て、いよいよ記念すべき「劇場版第20作」となったのが、本作「ドラゴンボール超 ブロリー」なのです。

本作で私が特に注目したのは、「脚本・鳥山明」はもちろんですが、「ドラゴンボール」映画では初めての「長峯達也」監督作品ということでした。

試写前に資料で長峯達也という名前を見た時には、ちょっとテンションが上がりました。というのも、この長峯達也監督は「ONE PIECE FILM Z」の監督だったからです。

「ONE PIECE FILM Z」 「ONE PIECE FILM Z」 (C)尾田栄一郎/2012「ワンピース」製作委員会

よくよく考えてみると、実は私が「ワンピース」の映画で、本心から「これは凄い作品だな」と思ったのは、現時点では「ONE PIECE FILM Z」だけなのです。

しかも配給元の東映にとっても、今回の「ドラゴンボール超 ブロリー」は相当に自信作のようで、実は試写会の仕掛けも邦画では「異例」過ぎる形式だったのです。

まず通常は、マスコミ向け試写を公開までに10日くらいは回すものですが、試写は基本、この限定の1回だけで、場所も東映の試写室ではなく映画館で、しかも「本作だけは、試写状もかなり少数にしか送らない」という、文字通り「プレミア試写会」の形式だったのです。

その意味では、一般の試写会として唯一行われた11月14日の「ワールドプレミア㏌日本武道館」で見ることができた人は、本当にラッキーだと思います。

想定以上の観客が集まり、会場に入りきれない人が続出するという異例の事態まで生み出したようですが、それだけ本作への期待度は一般の人にも大きいことがわかります。

(超話題作の時は、通常のマスコミ試写でも、1時間前に並んでも満席で入れない状態は割とよく起こるものなのです)

では、ここからが「本題」です。

まず、この限定マスコミ試写は、入場者を相当に絞り込んでいたので、会場の大きさと観客が合っていませんでした。

ただ、開演時間の初めに東映の宣伝マンが舞台に上がり、「この出来立ての作品に関してだけは、どうしても大きなスクリーンで体感してもらいたかった」ということで、その理由がわかりました。

そして、宣伝マンに呼ばれて長峯達也監督が登壇し、軽く制作秘話が語られました。興味深かったのは、「スタッフの熱量の高さ」です。

長峯達也監督自身の大きなミッションとしては、原作者の鳥山明が「これはすごい戦いだ!」と脚本に書いていたなら、作品を生み出した原作者自身にそう思わせ、さらには観客にもそう思わせる画作りをしないといけないわけで、確かにこれは想像以上に高いプレッシャーとハードルです。

そして、それに応えるべく、締め切りギリギリまでこだわり続けたスタッフたちの奮闘ぶり。

長峯監督は立場上、「今日が締め切りなんです」と言わないといけないわけですが、それに対して、「いや、もう少し待ってくれ。どうしてももっと描きこみたい!」という作画チームや、

「この、かめはめ波にこれまでのキャリアすべてをかけたいから、もう少しだけ待ってくれ!」といった特殊効果チームなど、長峯監督が根負けしてしまうほどのこだわり様だったそうです。

そして、いよいよ本編が公開されましたが、大きな感想で言うと「とにかく凄かった!!」に尽きます。

画像3 (C)バードスタジオ/集英社 (C)「2018ドラゴンボール超」製作委員会

まず、登場人物を減らすことで、シンプルな人間関係になっていること。そして、この映画は「孫悟空とは?」「ベジータとは?」「フリーザとは?」といったスタート地点からも描かれているので、過去作を見ていなくても、全作品が網羅できるような構成になっています。つまり、この作品からドラゴンボールを見はじめても十分に楽しめます!

また、原作者・鳥山明による脚本は、監督のセンスによってはスベったり、子供向けな感じになってしまう面もあるのですが、やはり長峯達也監督作だけあって非常に上手く活かされていて、良い意味で「子供っぽさ」は消え「全世代向け」になっています。

そして後半の戦闘シーンですが、これは「日本のアニメーションって、本当にここまで来たんだな」と感慨深くなるくらいに、とにかく凄いです! 1、2回見ただけでは、満足できないくらいのクオリティーの高さなのです。

まさに東映の宣伝マンが試写冒頭で言っていたように、「体感」しないとこの凄さはわからないと思います。

しかも、これだけ密度が詰まっているのに、上映時間も100分と割とコンパクトにまとめてくれているので、私自身も隙間時間を捻出して、劇場に何度か行きたいな、と思ってもいます。

ちなみに、エンディング曲は三浦大知の「Blizzard」ですが、試写で最初に聞いた時には「う~む、三浦大知か。ちょっと雰囲気が違うのかな?」とか思っていました。

ただ、その後に仕事場で何度か聞いているうちに、実はかなり良い楽曲なのだなと思ってきました。もし年末の紅白歌合戦で三浦大知がこの曲を歌うことになれば、そのパワーも凄いものがある気がします。

さて、ここまで破壊力のあるクオリティーの作品だと、肝心の興行収入が「スカウター」でさえ読み切れないと思います……(笑)。

ミニオン人気で予測を超える動き方をするイルミネーション・エンターテインメントの「グリンチ」、興行収入が落ちてきているとはいえ決してあなどれない「妖怪ウォッチ」などの強敵が同日公開という心配もありますが、この「ドラゴンボール超 ブロリー」の破壊力は、やはり「世界に誇るべき日本のアニメーションの代表作」として語り継がれるべきレベルなので、破格なのかもしれません。

長峯達也監督作の「ONE PIECE FILM Z」の興行収入は68.7億円を記録しましたが、この時は入場者特典として原作者の尾田栄一郎描き下ろしコミックス「第千巻」といった強力な集客要因があったことも考慮しないといけません。

ただ、今年は、入場者プレゼントのない「名探偵コナン ゼロの執行人」が過去最高の出来で、興行収入も過去最高を更新してくれたので、今回の「ドラゴンボール超 ブロリー」には、強敵が多い中でも、前作の37.4億円から一気に興行収入60億円規模のポテンシャルを持つコンテンツに変貌してほしいです。

1984年に生まれた作品が、まさか平成という1つの時代を跨いで本当の意味で生き返るとは…これこそが、真の作品力であって「ドラゴンボール」というコンテンツの持つ潜在能力の高さなのでしょう。

この「ドラゴンボール超 ブロリー」は、まだ“伝説の始まり”なのだと思います。

[筆者紹介]

細野真宏

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 発売以来9年連続完売となっている2019年版の「家計ノート 2019」(小学館)が発売中!

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

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