まともじゃないのは君も一緒

劇場公開日:

まともじゃないのは君も一緒

解説

「婚前特急」の監督・前田弘二と脚本・高田亮が再タッグを組み、成田凌と清原果耶がダブル主演を務めた恋愛ドラマ。人とのコミュニケーションが苦手で、数学ひと筋で生きてきた予備校講師の大野。今の生活に不満はないが、このままずっと1人でいることに漠然とした不安を抱えている。世間知らずで「普通」が何かわからない彼は、女の子とデートをしてもどこかピントがずれているような空気を感じる。教え子の香住は、そんな大野を「普通じゃない」と指摘してくれる唯一の相手だ。恋愛経験はないが恋愛雑学だけは豊富な香住に、「普通」を教えてほしいと頼み込む大野だったが……。

2021年製作/98分/G/日本
配給:エイベックス・ピクチャーズ
劇場公開日:2021年3月19日

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(C)2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

映画レビュー

4.5普通が唯一の正解ではない

2021年3月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 周囲との面倒な摩擦を少なくするために、人が無意識に心に着る「普通」という窮屈な服。この映画を観た後、その服を脱いで一息ついたような気分になれた。
 一見コミュ障で、相手の言葉をおうむ返しする癖がうざい予備校教師大野。でもその仕草に慣れてきて彼の言い分ををよく考えると、結構的を射た内容も多く、だんだん共感が湧いてくる。彼は自分が変わり者なのではという自覚があり、それを直して普通の結婚をしたいと思っている。
 一方香住は、奥手な大野に高飛車な態度で恋愛指南をする一見しっかりしていそうな女子高生だが、行動を追うにつれとんちんかんで世間知らずな面が見えてくる。彼女自身は、自分を変わり者だとは思っていない。
 結局は似た者同士である二人の、お互いに伝わらない会話がコミカルで飽きない。

 キャスティングが秀逸だ。
 いい塩梅に気の抜けた感じの成田凌。「あの年でコミュ障かつ普通の感覚が分からない、でも社会人として働けるレベルだし流れによっては女性受けする」そんなよく考えると匙加減の難しい役をナチュラルに体現している。立ち姿や奇妙な笑い声が絶妙。
 そして清原果耶はやはりよい。
 耳年増で、年上相手にタメ口で机上の恋愛論を指南する女子高生の役は、わずかに表現を間違うとすれた雰囲気が出たり、生意気さを不快に感じてしまいそうなものだ。
 でも、彼女が演じる香住からは言動の根本にある純粋さや幼さゆえの怖いもの知らずな感じが見て取れて、可愛げを感じる。下世話な話をしていても、冒頭に出てきた女子高生グループのような陰湿さや不快感がない。
 香住が自分の気持ちに混乱する場面などは加減を誤るとわざとらしさが漂ってしまいそうだが、きっちりやり切っていて清々しい。
 ちょっとこじらせた意地っ張りな女子高生の突飛な行動を、自然かつ魅力的に見せる巧みな脚本と清原伽耶の力量で、ヒロインの「普通」からはみ出た部分がきらきら輝いていた。
 二人と対比させるように描かれる青年実業家宮本とそのフィアンセ美奈子もよい。小泉孝太郎のごく微かに胡散臭い雰囲気がよく生かされている。人前で講演する姿が様になるのは、血筋かな。

 「普通が唯一の正解ではなくて、いろんな考え方があっていいはず」「普通であることに縛られる滑稽さを描こうと思った」というのは前田監督の言葉だ。
 自分の純粋な気持ちを温存しながら生きていくのは、大人にとっては結構難しいことのように思える。でも、単なる多数派である「普通」が唯一の正解なわけではない。自分にとっての正解を否定せず、忘れないようにして生きていれば、大野の魅力を美奈子が理解したように、意外な理解者が現れるものなのかも知れない。
 「普通」縛りからの解放の第一歩は、自分の胸先三寸なのだ。

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ニコ

4.0和製スクリューボールコメディの可能性

2021年4月30日
PCから投稿

前田監督は、長編デビュー作『婚前特急』の時から、日本的な表現や制約は感じさえつつも、ルビッチ、ワイルダーに代表されるようなハリウッド黄金時代のスクリューボールコメディを彷彿とさせる珍しい作風だった。その後の監督作のすべてを追えているわけではないのだが、デビューから10年経った本作は、まさに王道のスクリューボールコメディであり、10年越しに元気だよと手紙が届いたような(友達でも知り合いでもないですが)、なんと嬉しくなる作品だった。

一見、そりの合わない男女が惹かれあう、というのがこのジャンルの定番なら、ほぼその通りの内容ながら、絶妙なバランス感覚で昨今問題になりがちな「歳の差」の扱いに向き合っているのもいい。タイトルには「まともじゃない」とあっても、こんなにまともで真っ当な映画もなかなかないんじゃないか。もちろん面白い映画の中で、ってことですが。

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村山章

4.0刻々と変わる二人の関係性がたまらない

2021年3月30日
PCから投稿

前田作品はいつも、何気なく始まった会話が生き物のようにうねり、それにあわせて登場人物の内面や関係性が大きくうねる。とりわけ脚本の高田亮と組んだ作品はそういった場面のオンパレード。本作「まともじゃないのは君も一緒」も軽く楽しめるコメディに見えながら、このチームならではのこだわりが緻密かつ大胆にスパークしている。高田の紡ぐ言葉も面白ければ、その一言、一音に生命を吹き込む成田凌と清原果耶は、まるで往年のスクリューボールコメディから飛び出したかのような微笑ましい相棒ぶり。一方の前田監督は長回しを駆使しながら、二人に化学変化が降りてくるまでの過程を息長く、軽やかに写し撮る。そうやって織り成される描写は軽快さを通り越し、スリリングでさえある。”まともじゃない”と銘打つのは自ら難度のハードルをあげるようなもの。だが、本作は見事にそれを超えてきた。丁寧に醸成された空気感、そのクセになる味わいを堪能したい。

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牛津厚信

4.5コメディも制した清原果耶に死角なし。「おかえりモネ」への期待も一層高まる

2021年3月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

幸せ

NHK朝ドラ「あさが来た」で見た時は可憐で演技もうまい子だな、ぐらいの印象だったが、“清原果耶”という女優を認識し注目し始めたのは「3月のライオン」から。当初のピュアな役柄に続き、十代後半ですでに卓越した表現力を身に着けたがゆえか、陰のある役、ダークな役も的確にこなしてきた。映画初主演作「宇宙でいちばんあかるい屋根」にも若干コミカルな要素があったが、「まともじゃないのは君も一緒」で遂にラブコメ主演を果たす。

高田亮の脚本と前田弘二監督の演出は清原のくるくる変わる表情の魅力と緩急自在の台詞回しを効果的に活かし、もうひとりのダブル主演・成田凌とも「ズレているのにテンポ良し」という高難易度の掛け合いを成立させた。“耳年増”だが実体験ゼロの女子高生・香住が、数学オタクでコミュ障気味の予備校講師・大野のためと称して、自分が憧れる青年実業家の婚約者を大野に誘惑させるが…というストーリーは、さして深みはないものの、とにかく軽妙な会話と小気味よい展開で、いつまでもこの世界に浸っていたいと思わせる。音楽の使い方も巧いと感じた。

5月からの清原の朝ドラ主演作「おかえりモネ」がますます楽しみになった。

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高森 郁哉