犬童一心監督、ぶれないヘルツォークに感心 公開控える「のぼうの城」も語る
2012年5月19日 13:30

[映画.com ニュース] ドイツの鬼才ベルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリー「世界最古の洞窟壁画 35mm 忘れられた夢の記憶」の公開を記念し5月18日、犬童一心監督が渋谷シアターNでトークイベントに出席した。
1994年に発見された南仏のショーベ洞窟内部に3万2000年前に描かれた壁画を撮影。今年3月に、オダギリジョーのナレーションで公開された「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」の35mmフィルム版で、ヘルツォーク監督自身によるナレーション(日本語字幕版)で上映する。
ヘルツォークと並び、ニュー・ジャーマン・シネマの旗手として知られるビム・ベンダースの「東京画」に深い思い入れがあり、1年に1度は鑑賞するという犬童監督は、1983年に撮影された同作に登場するヘルツォークのインタビューでの言葉“我々の文明の状況と我々の内面の最深部とその両方に照合する映像が必要だ。つまりそれが必要ならばたとえ戦場にも行くべきだ。8000メートルの山に登る必要があればどんなに難しくても登るべきだ。純粋で、澄んだ透明な映像を得るためにはそれが必要だ(抜粋)”を紹介。当時のヘルツォークはまだ本格的なドキュメンタリーは手がけていなかった。
犬童監督はヘルツォークの映画に対する強い意志に感心した様子で「若い頃からヘルツォークは一貫して自分のやりたいことをやっていたんだな、だから今こういう映画(『世界最古の洞窟壁画』)を撮ることになったんだとわかった。壁画のカットが重ねられたところで“純粋で、澄んだ透明な映像”という言葉を思い出し、ヘルツォークが抱く過去の人間たちへのシンパシーを感じられた。ベンダースのインタビューで話していたことから、一貫してぶれていない」と語った。
また、ヘルツォークの言葉に対するベンダースのナレーションは“彼の純粋な映像への希求はよくわかる。が、私の絵は地上に、街の喧噪の中にある”だったという。「やっぱりベンダースも変わっていなくて、都会や街に住む人たちの映像を作り続けている。人はあまり変われないのかな(笑)」とまとめた。
犬童監督自身も「映画に対する興味は変わらない」とのことで、「映画が分からないところがあるので、作って分かろうとしている。自分の作る映画のジャンルが広いので、その度にどういう風に作ればよいかを常に試している」という。
11月2日公開の「のぼうの城」は、2005年から構想を練り娯楽映画として製作した。「『タッチ』の場合はスター映画を作ろうと思っていて、『黄色い涙』『ジョゼと虎と魚たち』や『メゾン・ド・ヒミコ』の時は考えませんでしたが、今度は娯楽映画というものを一度ちゃんとつくってみなければと思った。映画を分かりたいという気持ちが常にあるので、作って試す。そして得た技術で人を楽しませる芸人みたいになれたら」と幅広い作風を持つ監督ならではの探究心をのぞかせた。
「世界最古の洞窟壁画 35mm 忘れられた夢の記憶」はシアターN渋谷ほかで公開中。 6月1日は「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアス監督のトークイベントを開催する。
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