☆☆☆★★
※ 鑑賞直後のメモから
神保町を舞台にした1人の元OLの成長物語。
原作は100ページ弱の中編でとても読み易く。すんなりと本の街の神保町の世界へと誘ってくれる。
かって寺山修司は、〝書を捨てよ町に出よう〟と語った。
映画館の椅子に座っているだけだったり。知識だけを頭に詰め込んでみたところで、実際に自分の眼で見、手で触り、耳で捉え、足で探した方が遥かに身につく…と。
しかしそれとて、ある程度の知識がなければ。見て、触れて、感じる事など出来ない。
それを最も簡単に吸収出来るのは、やはり活字媒体に他ならない。
でも、この物語の主人公である貴子は今時の女の子。
特に目標がある訳でもなく、漠然とし日々を毎日送っていた。
映画は原作にほぼ忠実に作られたいて。映画オリジナルと言える箇所は、数カ所の回想場面と。恋人に振られた主人公の貴子が、悔しさを噛み殺し回想するコインランドリーの場面。それと叔父役の内藤剛志が、喫茶店のマスター役のきたろうと昔話をする場面。
ひょっとしたら。内藤剛志が主人公の貴子役の菊池亜希子を、同じ喫茶店に連れ出し。彼女が昔の来店ノートを読む場面も映画オリジナルだったかも知れない。勿論原作でも、神保町界隈の描写はされるが。映画だとより詳しく路地裏等が描写され、世界一の書店街をアピールする。
その中でも、予想通りに谷口書店(映画書籍専門店)が映ると「やっぱり!」とばかりにニヤッとしてさそまう。
それと、もう1つ映画オリジナルと言える場面として。貴子が本の値段を決める場面が出て来る。
この場面こそは、「甘えてはいけない!自分は変わらなければいけないんだ!」…と。これまでの自分に決別する事を、自覚するきっかけに繋がっていた。
主演の菊池亜希子ちゃんは、大体原作のイメージに近い。
逆に内藤剛志が演じた叔父さんは、イメージはイメージが湧かなかったのだが。この人らしい誠実な面が強調され、段々と違和感がなくなり。きたろうと、常連役の話好きなおじさん役の岩松了は。原作を読んだ時には逆の配役でイメージしていたが、これも観ている内にやはり違和感がなくなって来た。
友達になる女子大生役として田中麗奈も出演していた。
大した盛り上がり等は皆無な内容なのだけど。最後には人と人との触れ合い優しさ等の暖かさに胸が詰まった。
日本映画の良心に溢れた作品だと思います。
2010年11月1日 シネセゾン渋谷