ハンフリー・ボガート : ウィキペディア(Wikipedia)

ハンフリー・ディフォレスト・ボガートHumphrey DeForest Bogart, 1899年12月25日- 1957年1月14日)は、ニューヨーク出身のハリウッド映画の俳優。愛称はボギー

来歴

ニューヨークにおいて、イングランドとオランダ系の血をひく外科医の父ベルモント・デフォレスト・ボガートと、イングランド系で画家の母、モード・ハンフリーの間に生まれる。父は厳格なプレスビテリアン、母は厳格なエピスコパリアンだった"The religious affiliation of Humphrey Bogart." Adherents.com.。

家庭が裕福だったこともあり、イェール大学へ進学するよう希望していたが、ボガートは高校を中退。1918年に海軍に入隊するも、3年後に除隊。やがてブルックリンの劇場で舞台に立ち、俳優の道を志す。

1930年にジョン・フォード監督の『河上の別荘』で初出演を果たす。1936年の『化石の森』に出演して以降15年近くにわたり、ワーナー・ブラザースの専属に近い形で俳優活動を行った。

1930年代はギャング映画の敵役を多く演じたが、40歳を過ぎて主演した『ハイ・シェラ』や『マルタの鷹』のようなフィルム・ノワール作品や『カサブランカ』などで、ハードボイルド・スターの地位を確立。後年は演技派としても活躍し、『アフリカの女王』(1951年)ではアカデミー賞主演男優賞を受賞した。 1947年にはハリウッドのマッカーシズムに反対し、傍聴の様子はライフ (雑誌)にも掲載された。

1940年代 - 1950年代を代表する名優として、時代の象徴的存在に挙げられることが多い。1999年にアメリカン・フィルム・インスティチュートが発表した「映画スターベスト100」では男優の1位に輝いている。

晩年に食道癌を宣告され、妻と共に闘病するものの1957年1月14日に永眠する。

人物

ボガートはヘビースモーカーとして知られ、また酒豪でもあった。愛飲酒はドランブイ(スコッチウイスキーベースの薬用酒)で、飲んだ量に比例して毒舌が激しくなるといわれた。

ジョン・ヒューストンとも馬が合い、彼の監督デビュー作である『マルタの鷹』をはじめ、『黄金』、『キー・ラーゴ』、『アフリカの女王』、『悪魔をやっつけろ』など、死去するまで数多くの作品で主演を務めた。また、マイケル・カーティスラオール・ウォルシュとも交流は深かった。

57年の生涯の中で4度結婚をしている。4人目の妻ローレン・バコールとは非常に仲がよく、彼女との間に1男1女をもうけている。バコールの自伝によると、ボガートはその死まで、妻のことを「キッド」と呼んでいたらしい。

「トレンチコートの襟を立て、紙巻きたばこをキザに咥えて吹かす」というボガートの姿を真似する人も多い。なお、正しい「ボガート・スタイル」では、指に挟むのではなく葉巻のように摘まんで持つ。

主な出演映画

公開年邦題原題役名備考
1930 河上の別荘Up the River スティーヴ・ジョーダン
1931 肉と霊Body and Soul ジム
各国の女Women of All Nations ストーン 出演シーン削除
姉妹小町Bad Sister ヴァレンタイン・コーリス
1932 舗道の三人女Three on a Match ハーヴ
1936 化石の森The Petrified Forest デューク・マンティ
弾丸か投票か!Bullets or Ballots バグス
太平洋横断機Across the Pacific ハップ・スチュアート
1937 札つき女Marked Woman デヴィッド・グラハム
倒れるまでKid Galahad ターキー・モーガン
デッドエンドDead End ベビーフェイス・マーティン
1938 少年院Crime School マーク
メン・アー・サッチ・フールズMen Are Such Fools ハリー・ギャリオン
犯罪博士The Amazing Dr. Clitterhouse ロックス・ヴァレンタイン
汚れた顔の天使Angels with Dirty Faces ジェームズ・フレイザー
1939 オクラホマ・キッドThe Oklahoma Kid ウィップ・マッコード
脱獄者の報酬You Can't Get Away with Murder フランク・ウィルソン
愛の勝利Dark Victory マイケル
彼奴(きやつ)は顔役だ!The Roaring Twenties ジョージ・ハリー
前科者Invisible Stripes チャック・マーティン
1940 ヴァジニアの血闘Virginia City ジョン
田舎町It All Came True Grasselli/Chips Maguire
顔役Brother Orchid ジャック・バック
夜までドライブThey Drive by Night ポール・ファブリーニ
1941 ハイ・シェラHigh Sierra ロイ・アール 事実上の初主演作品
マルタの鷹The Maltese Falcon サム・スペード
1942 パナマの死角Across the Pacific リック・レランド
カサブランカCasablanca リック・ブレイン
1943 サハラ戦車隊Sahara ジョー・ガン
北大西洋Action in the North Atlantic ジョー・ルッシ
1944 渡洋爆撃隊Passage to Marseille ジャン
脱出To Have and Have Not ハリー・モーガン
1945 追求Conflict リチャード・メイソン
1946 三つ数えろThe Big Sleep フィリップ・マーロウ
第二の妻The Two Mrs. Carrolls ジョフリー・キャロル
1947 潜行者Dark Passage ヴィンセント・ペリー
1948 黄金The Treasure of the Sierra Madre ダブス
キー・ラーゴKey Largo フランク・マクラウド
1949 暗黒への転落Knock on Any Door 弁護士アンドリュー・モートン
東京ジョーTokyo Joe ジョー・バレット
1950 大空への挑戦Chain Lightning マット・ブレナン
孤独な場所でIn a Lonely Place ディクソン・スティール サンタナ・プロ製作
1951 脅迫者The Enforcer マーティン・ファーガソン
モロッコ慕情Sirocco ハリー・スミス
アフリカの女王The African Queen チャールズ(チャーリー)・オルナット アカデミー主演男優賞受賞
1952 デッドライン~USADeadline - U.S.A. エド・ハッチソン
1953 悪魔をやっつけろBeat the Devil ビリー
1954 ケイン号の叛乱The Caine Mutiny フィリップ・クイーグ中佐
麗しのサブリナSabrina ライナス・ララビー
裸足の伯爵夫人The Barefoot Contessa ハリー・ドーズ
1955 俺達は天使じゃないWe're No Angels ジョセフ
必死の逃亡者The Desperate Hours グレン・グリフィン
1956 殴られる男The Harder They Fall エディ

受賞歴

アカデミー賞

受賞
1952年 アカデミー主演男優賞:『アフリカの女王』
ノミネート
1944年 アカデミー主演男優賞:『カサブランカ』
1955年 アカデミー主演男優賞:『ケイン号の叛乱』

英国アカデミー賞

ノミネート
1953年 最優秀外国男優賞:『アフリカの女王』

ニューヨーク映画批評家協会賞

ノミネート
1942年 主演男優賞:『カサブランカ』、『パナマの死角』

パロディほか

『勝手にしやがれ』(1959年)
ジャン=リュック・ゴダールのデビュー作。ハンフリー・ボガートを崇める主人公のミシェルは、マルセイユで自動車を盗み、追ってきた警察官を射殺する…。
『ボギー!俺も男だ』(1973年)
ウッディ・アレンの舞台戯曲を彼自らの脚本・主演で映画化。ボガートへのオマージュに満ちたコメディ映画。
原題 『Play It Again, Sam』 は映画『カサブランカ』が由来なのだが、厳密にはボガートはもちろん作中では誰もこの台詞は口にしていない。物真似芸人がボガートの真似をする際にこの言葉を多用したため、多くの人が「『カサブランカ』の中に登場する台詞」と誤解するにいたった。
『ハリウッドに別れを』(1975年)
アンドリュー・バーグマン作の探偵小説。1950年代のハリウッドが舞台になっており、ボガートが主人公の私立探偵を助ける役回りで登場する。
『名探偵再登場』(1978年)
ニール・サイモン脚本の全編『マルタの鷹』と『カサブランカ』のパロディ。ボガートもどきの迷探偵ルー・ペキンポーをピーター・フォークが嬉々として演じた。同じスタッフで作られた『名探偵登場』(1976年) でもフォークはボガートのパロディ(こちらの探偵の名はサム・スペードならぬサム・ダイヤモンド)を演じている。
『カサブランカ・ダンディ』(1979年)
日本の歌手である沢田研二の26枚目のシングル。「ボギー」が歌詞に登場する。
『哀愁のカサブランカ』(1982年)
バーティ・ヒギンズ (en) の1982年のデビューアルバム (en) のシングル収録曲で、1942年の同名映画へのトリビュート作である『Casablanca』を、同年日本の歌手である郷ひろみがカバーしたもの。 その他、鳥羽一郎の『カサブランカ・グッバイ』(1996年) が男女の別れを描いているが、同映画と関連するかは不明。
『四つ数えろ』(1982年)
スティーブ・マーティン主演のパロディ映画。ボガートらのハードボイルド映画を編集でつなぎ合わせて、マーティンの新作カットを押し込み一本の映画にでっちあげた。マーティンの演じる探偵のキャラクター自体もボガートの真似。
「新・俺がハマーだ!」(1987年)
爆裂刑事スレッジ・ハマーの活躍(?)を描くコメディドラマ・シリーズの第17話「ハマー 俺も男だ!」に、ボルサリーノ帽&トレンチコートのそっくりキャラクターが登場。停職中に探偵稼業を始めたハマーを事件の真相に導く。セリフ「君の瞳に乾杯」、楽曲「アズ・タイム・ゴーズ・バイ(時の過ぎゆくままに)」のフレーズも。
『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)
一瞬だけ登場する。セリフはない。

エピソード

  • 日本語吹き替えは、久米明が専任で務めている(次いで大木民夫が起用されていた)が、久米がボガートの吹き替えを始めた頃にはボガードは既に故人であった。
  • 松田優作は『探偵物語』で山口剛から「ボギーをイメージして演じてくれ」と言われたが、「そんなにかっこいいか? 捻り鉢巻すれば寿司屋の親父だろ」と拒んでいる。
  • ルパン三世において、次元大介がボガートとマリリン・モンローの長年のファンであると話すシーンがある。
  • 『太陽にほえろ!』の春日部一刑事のニックネームは、ハンフリー・ボガートの愛称である「ボギー」に因んでおり、劇中でもそれが明確に言及されている。

Video

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/12/04 01:16 UTC (変更履歴
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike and/or GNU Free Documentation License.

「ハンフリー・ボガート」の人物情報へ