「エディントンへようこそ」過激な選挙カーのモチーフは「ゆきゆきて、神軍」奥崎謙三の街宣車だった 原一男監督がコメント発表
2025年12月12日 10:00

「ヘレディタリー 継承」「ミッドサマー」「ボーはおそれている」で知られるアリ・アスター監督の最新作「エディントンへようこそ」。同作には、パトカーをカスタムし、過激な文言をまとった選挙カーが登場する。このほど、この選挙カーが、日本の伝説的ドキュメンタリー映画「ゆきゆきて、神軍」(監督:原一男)がモチーフになっていることが明らかになった。
「エディントンへようこそ」の舞台は2020年、ニューメキシコ州の小さな町、エディントン。コロナ禍で町はロックダウンされ、息苦しい隔離生活の中、住民たちの不満と不安は爆発寸前。保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)は、IT企業誘致で町を“救おう”とする野心家の市長テッド(ペドロ・パスカル)と“マスクをするしない”の小競り合いから対立し「俺が市長になる!」と突如、市長選に立候補する。ジョーとテッドの諍いの火は周囲に広がっていき、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上。同じ頃、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)は、カルト集団の教祖ヴァーノン(オースティン・バトラー)の扇動動画に心を奪われ、陰謀論にハマっていく。

1987年に公開された「ゆきゆきて、神軍」は、マーティン・スコセッシら世界の映画人にも影響を与えた問題作だ。ドキュメンタリー映画監督の原一男が、過激な手段で戦争責任を追及し続けるアナーキスト・奥崎謙三の活動を追っていく。
神戸市で妻とバッテリー商を営む奥崎謙三は、自らを「神軍平等兵」と名乗り、「神軍」の旗たなびく車に乗って日本列島を疾駆する。ある日、自身がかつて所属していた独立工兵第36連隊で、終戦後23日も経ってから敵前逃亡の罪で2人の兵士が処刑されていたことを知った奥崎は、その遺族らとともに真相究明に乗り出す。時には暴力も辞さない奥崎の執拗な追及により、元兵士たちの口から事件の驚くべき真実と戦争の実態が明かされていく。

同作で目を引くのが、奥崎が駆るド派手な「街宣車」だ。物騒な言葉が大書されたそのビジュアルに、アリ・アスター監督はインスパイアされたという。ジョーの選挙カーのデザインについても「ゆきゆきて、神軍」で奥崎が全国を走り回ったカスタムカーをモデルにしたと言及。強烈な正義感から出発しながら、次第に狂気を帯びていくジョーのキャラクターが奥崎と重なり合う点を示唆した。
日頃からアスター監督作品をはじめ、エンターテイメント、ハリウッド映画をこよなく愛する原一男監督も、今回の話に驚きを隠せず、以下のコメントを寄せている。
「エディントンへようこそ」は、12月12日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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