「バーフバリ健康法」って本当に効果があるの? 現役医師に聞いてみた!「健康になる――十分にあり得ます」
2025年12月9日 12:00

この世には“観るだけ”で健康になれる映画がある。
「バーフバリ」である。
「観るだけで健康になった気がする」
「肌の調子がいい!」
「風邪が治った」
「デトックス効果がある」
「バーフバリ 伝説誕生」「バーフバリ 王の凱旋」の日本公開当時(2017年)、SNSでは数々の“復調報告”が乱立。圧倒的熱量の大作映画に“癒し”の側面があることがわかり、この“世紀の大発見”に日本中が狂喜乱舞、全国各地から「ジャイホー!!!!!」の雄叫びが響き渡った。
2025年、「バーフバリ」が「バーフバリ エピック4K」として日本に再上陸を果たす(2025年12月12日公開)。これを記念し、映画.comでは、現役の医師・おおたわ史絵氏に疑問をぶつけた。
「バーフバリ健康法、本当に効果がありますか?」
――愚問、なんたる愚問だろうか。効果があるに決まっているじゃないか……という“心の叫び”をぐっとこらえつつ、おおたわ氏の言葉に耳を傾け続けた。
結論から先に申し上げよう。
願いは叶う、信じれば健康は叶うのだ―――!!!!
【「バーフバリ エピック4K」概要】
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.インドのスペクタクルアクション2部作「バーフバリ 伝説誕生」「バーフバリ 王の凱旋」を、S・S・ラージャマウリ監督が自ら再編集。両<完全版>にも収録されなかった未公開シーンや新録ナレーションも加えて1つの作品にまとめ、インド、アメリカ、日本の3カ国限定で劇場上映。古代インドの叙事詩「マハーバーラタ」をもとに、数奇な運命に導かれた伝説の戦士バーフバリをめぐる3世代の愛と復讐の物語を、新たな視点で再構築した。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●おおたわ先生の“初バーフバリ”→ハマる「人と場所を選ばない映画」
――本題に入る前に、まずは「バーフバリ エピック4K」の感想をお聞かせいただけますか? 「バーフバリ」鑑賞は“初めて”とお聞きしていますが、いかがでしたか?
かなりの“長編”だとお聞きしていましたし、マネージャーからも「取材日も迫っているのに、こんなに(本編が)長い作品を見られるんでしょうか?」と心配されていたんですが――あっという間の鑑賞でした。全く休まずにノンストップで見てしまえるほど。私、インド関連の作品は数えるほどしか見たことがなかったんですよ。それなのに心の底から娯楽として楽しめましたし、本当に人と場所を選ばない映画なんだなと思いました。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●早速本題!「バーフバリ健康法」ってあり得ますか?
――どっぷりハマっていただけてよかった……! では、本題に入りますね。「バーフバリ」公開時には「観るだけで元気になった」といった声がSNSで続出していました。これってつまり「バーフバリ健康法」なのではないかと……。率直にお聞きしますが、これってあり得るんでしょうか?
娯楽と身体的変化については、昔から多くの研究がなされてきていて、科学的根拠の裏付けも出てきています。ですので、単刀直入に申し上げると“元気になる”ということは大いにありえます。「健康になる」「幸せになる」といった効果は、十分にあり得ると言っていいと思います。
――ジャイホー!!!!!!!!!!!!!!!!!……あ、失礼しました。
いえいえ。ただし、この効果は作品の内容や質にも大きく影響されます。「バーフバリ」は一大活劇であり、ものすごく“ポジティブ”な内容ですよね。そして、まるで自分自身がバーフバリになったような気分になる――この心理的作用を“同一化”と呼びます。主人公、もしくはその他の登場人物と“同一化”することによって、自分自身も強くなったような気がする。もしくは、何かを達成したような気がしてくる。「バーフバリ」には、このような“爽快”な気分になれる要素が満載に含まれているんだろうなと。
――なるほど。確かに“バーフバリになったような気分”で物語を堪能している自分がいました。
実際に映画や小説、漫画によって、ドーパミンやアドレナリンなどの興奮を促すホルモンが出るということはわかっています。それとハラハラしたり、悲しくなるようなシーンでは泣いてしまうこともありますよね。涙には2つの種類があるんです。
――え、涙って1種類じゃないんですか?
まずは生理的に目を保護する役割を担っているもの――これをバイオロジカルティアーズと呼んでいます。一方、悲しい、嬉しいなど感情を伴って出てくる涙をエモーショナルティアーズと言います。このエモーショナルティアーズの中には、たくさんの脳内ホルモンが含まれていることがわかっていて、これが出ることによって、あとからスッキリしたり、恍惚感や幸福を感じるんです。
“泣いてすっきりした”ということは、誰にでもありますよね。「辛い時には我慢せずに泣けばいい」ということがよく言われていると思いますが、これは泣いた後に起こる“ホルモンの効果”です。ドーパミン、アドレナリン、そしてエモーショナルティアーズといったさまざまなものが相まって、鑑賞中や鑑賞後に精神的な作用が起こる――それが「バーフバリ」の特徴だと思いました。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●どんなシーンが健康に作用する? おおたわ先生の個人的推しポイント
――なるほど、恥ずかしくて涙をこらえちゃうときがあるんですけど、今後は我慢しません! もうぐっちゃぐちゃになるまでエモーショナルティアーズを放出しようと思います。たとえばなんですが、「バーフバリ」のどのようなシーンが“健康”に作用すると言えますか?
これは個々人によって大きく差が出てくるところではあり、あくまで私のポイントになるのですが、色の使い方が効果的だなと思いました。視覚的な効果に原色が非常に多い。その中でも赤色の使い方がとても上手くて。たとえば、物語序盤、バーフバリとバラーラデーヴァが闘いの中で競わされるシーンがありますよね。潤沢な武器を与えられているバラーラデーヴァ。その一方で、自分の知力だけで闘わなくてはならないバーフバリ。この不平等な条件下のもと、バーフバリが布を活用しますが、これが見事な赤色。この赤色の布が広がる瞬間というのは、すごく高揚感を引き出されるなと思いました。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.それとバーフバリと、デーヴァセーナが初めて宮殿の中で共闘するシーン。ここでも2人は赤い服をまとっている。赤と赤が交わって、力を強めていくというのが本当に上手だなと。あとはところどころに赤い血を描写してきますよね。赤い血がすっと一筋流れるシーンも色の使い方が印象的で、感情を色々な意味でかきたてられます。
インド映画ならではの音楽はもちろんですが、この色の使い方という部分に着目していましたね。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●“追いバーフバリ現象”について。リピート鑑賞も心と体に良い?
――確かに「バーフバリ」の色遣いは“脳に刺さる”んですよね……。ちなみに「バーフバリ」では“追いバーフバリ現象”も特筆すべきポイントだと思います。つまりリピート鑑賞です。同じ内容を何度も繰り返してみるという行為が、健康に作用することってあり得ますか?
あると思います。1つ考えられるのは、結論や答えを知ったうえで“期待通りのこと”が起きるということ。予想をして、期待をして、そしてその期待がしっかりと結実する。これで満足度が上がっていっているんだと思うんです。いわば、水戸黄門の印籠と一緒ですね。印籠を出すことは、わかっているわけですよ。でも「来るぞ、来るぞ……はい、来ました!」という流れが心地良いですよね。
この気持ちよさを求めてリピートするという側面もあれば、初回では見逃していたものを“拾える”という喜びも関係しているのではないかと思います。製作サイドが本編に隠していた“小ネタ”を発見できる――そういった意味でも、何度鑑賞を重ねても楽しさというものにつながっていくのではないかなと思います。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.――「バーフバリ」は何回リピートしても「来るぞ、来るぞ……はい、来ました!」という展開で興奮のレベルが落ちないんですよね……。そういえば、「バーフバリ」は、何度も顔のアップをとらえていたり、さらには“決め顔”をしたり――歌舞伎の見得を想起したりしました。日本人にはDNAレベルで響くものがあるのかなと。
その観点でいうと、注目したのは“国母”シヴァガミですね。当初は視野が広く、懐の深い女性のイメージだったんですが、デーヴァセーナが物語に絡んできてからは、どこの社会にもある嫁姑関係が表出してきますよね。時代も違えば国も違いますが、やっぱりこういう家族間の複雑な事情というものは、どこの世界にでもあるのだと――意外とそういう下世話のところもちょっと楽しかったりとかしますよね(笑)。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●歌え!騒げ!手を鳴らせ! 応援上映、マサラ上映――“応援上映”も健康に良い?
――リピート鑑賞に加えて、もう1点!「バーフバリ」では、発声、コスプレ、光り物、鳴り物が許可される「応援上映」、紙吹雪やクラッカーなどの派手な鳴り物、雄叫びやコール、そして歌がOKの「マサラ上映」といった上映方式がありました。この上映方式が健康に作用することはあったりしますか?
たとえば、応援上映の際にキャラクターのコスプレをするパターンもあると思いますが、これは最初に申し上げた通り“同一化”の最たるものです。自分とキャラクターを同一化して、物語世界を体感する。映画という名のアミューズメントパークですよね。
それと「通常、映画館では静かにしなければいけない」という前提も大いに関係してきていると思います。「騒いではいけない場所」から「騒いでも良い場所」に――そんなところで声を出したり、手を叩いたりすることで、より興奮が高まっていくはずです。
拍手や手拍子もストレスの発散方法のひとつです。拍手や手拍子をしているだけでも、人間は気持ちよくなるように出来ていると言われてます。ですから、それが許されているスペースがあれば、より興奮して楽しくなります。今では上映前の注意喚起として「静かに鑑賞してください」と出ますから、そのマナーが解除されることによって、もっともっと興奮が高まるという作用も生まれていると考えられます。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●映画館で鑑賞するメリットは?“わざわざ”によって期待感が醸成されていく
――ありがとうございます。これからは“応援上映”に参加する時は、羞恥心のリミッターを解除させていただきます。ちょっと“映画鑑賞”全般におけることもお伺いしたく。映画館での鑑賞は、不特定多数の、もしかしたら2度会うことはない方々と体験を共有する場でもありますよね。今はストリーミング配信も盛んになってきていて、自宅でひとり、自分の見たいタイミングで見るという方も増えてきていますが「映画館で鑑賞する」という体験自体には、健康や精神的に作用するものがあるのでしょうか?
これは個人によっても大きく差があることだとは思います。他の人と同じ空間で見ることや閉鎖空間が苦手な方もいらっしゃったり、ひとりだけのスペースで見たいという人もいるわけですよね。一概に万人にとって「映画館で見ること」が優れているというものが当てはまるかどうかはわかりません。
あえて言うならば、映画で見ることの良さというのは“わざわざ感”だと思うんです。たいていの人は“わざわざ”電車に乗って行くわけですよね。それに“わざわざ”外出用の衣服に着替えていくわけです。そして“わざわざ”お金を払って切符を買い、下手したら前売り券も買っている。この“わざわざ”をやることによって、期待値が上がっていくんです。これだけのことをやったから、すごくいい報酬が自分にとってあるはずだという期待値が、映画が始まる前にすでに出来上がっているんですよね。
だから、その報酬を得たことがある人は、やっぱりまたその経験を味わいたくなる。再び映画館に足を運ぶというサイクルに入っていくんだと思うんですよね。良い意味での中毒性だと思います。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.――なるほど、確かに映画館で“見る前”から、映画は始まっていると言えそうですね。ちなみに、おおたわ先生にとっての“見ると元気になる映画”はありますか?
私は、「愛と青春の旅だち」がバイブルですね。私、結構へこたれていた時期が長かったんですよ。医学部に行って、国家試験が終わっても、色々な専門試験を受けていくと、努力しても努力してもなかなか報われない。そういう時に、下から這い上がっていってなり上がっていくさまを見ると、私自身も「頑張れるかもしれない」という気持ちになりました。
あとは「カッコーの巣の上で」も好きですね。“叶わない幸せ”というものがあるなかでも、人間は巣から飛び立とうとして、あがいているところも含めて、一種の爽快感や解放感を感じることができたんですよね。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●「バーフバリ、ジャイホー!!」をSNSに連投する→“自己治療”している!?
――単館系映画館へも定期的に通い詰めているとお聞きしていますし、おおたわ先生、かなりの“映画好き”ですね……!! では、「バーフバリ」の話題に戻りますね。「バーフバリ」関連のニュースが出るたび、それがほんの小さな情報だとしても、SNSの盛り上がりが凄まじいという傾向があります。そこで見受けられるのが、劇中にも登場する「バーフバリ、ジャイホー!!バーフバリ、ジャイホー!!」というセリフを連投しまくるという人々。いわゆる語彙力を失うほどの興奮を伝えたいという意味合いととらえているんですが、この行為を先生としてはどうとらえていますか?
あくまで仮説なのですが……興奮を安定化させる作用ではないかなと。
――逆に“自分を落ち着かせる行為”であると?
えぇ、「バーフバリ」の話題に触れた方々は、異様な興奮状態に陥ってしまう。「バーフバリ、ジャイホー!!バーフバリ、ジャイホー!!」と連呼する、もしくはポストすることによって、その興奮状態を“自己治療”しているのではないかと考えられます。つまり「落ち着け、俺」ということ。自分自身をさらに盛り上げるため連呼、もしくはポストをしているのではなく「興奮しすぎだ、一旦落ち着こう」という意味合いなのかなと思いますね。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.●「バーフバリ」を見てみたいと思った人→“あなた”はとても健康的です
――なんとなくわかるかもしれません。あまりにも興奮状態が続くと「このままではどうかしちまうぞ」と……。今後も「バーフバリ」関連のネタが投下された際には、平常心を取り戻すべく、「バーフバリ、ジャイホー!!」の連呼、心掛けます。では、総論に入りましょう!「バーフバリ」を含めたエンタメが健康に良いという観点ではお話いただきましたが、改めて読者へのメッセージをいただけますでしょうか?
映画にせよ、エンタメ一般全般にせよ“何かに興味を持てる”ということは、人間として素晴らしいことではないかと思います。歳をとって認知機能が落ちてきたり、精神的に落ち込んでいて、視野がとても狭くなっている時には、外の世界で起きている出来事に興味を持つということが大体できません。
ですから「バーフバリ」というワードを見かけた時に「これなんだろう?「ちょっと見てみたいかも」と感じた“あなた”は、今とても良い状態にあって、それはとても健康的であるという証明であると言えます。ですから“興味を持てた”だけでも素晴らしいことなんです。
できれば、そこから「外に出て見に行こう」という行動にまで結びつくといいわけですよね。もちろん家の中で鑑賞するのもいいですが、太陽の下を少し歩いたりするだけで、人間は健康になっていくわけなので。まずは「1歩外に出てみる」。そこから「映画館に行ってみる」となると、より健康に近づいていくわけですね。
そこから鑑賞後に何らかの感情が揺さぶられますよね。苛立つシーンもあるでしょうし、腹の立つ時もあるでしょう。悲しいと思うシーンもあるでしょうし、爽快感を得られることだってある。そういった喜怒哀楽が揺さぶられる感覚は、脳にとっては“喜び”なんです。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.人間の脳は、元々すごく貪欲で、いろんな出来事が起きてほしいんです。だから、何にもないフラットな状態で幸せと思える人はなかなかいなくて。何も起きない平凡で退屈な毎日というのは幸せだと感じにくいんです。
ですから「バーフバリ」でさまざまな感情を体験し、さらには“同一化”して、脳を喜ばせてあげてください。
最初に申し上げましたが、「バーフバリ」は国や年齢、男女を問わず「人としてどう生きていきたいか」「人として何が尊いのか」「何が最後に勝るべきか」という普遍的なことがテーマになっています。これは子どもの社会でもお年寄りの社会でも、誰の社会にでも通用するテーマではないかなと思います。ぜひそれぞれの立場で“自分のこと”のように楽しんでみていただくのが良いのではないでしょうか。
――素晴らしいメッセージ、ありがとうございました!
【おおたわ史絵/プロフィール】

総合内科専門医 法務省矯正局医師
筑波大学附属高等学校、東京女子医科大学卒業。
内科医師の難関・総合内科専門医の資格を持ち、多くの患者の診療にあたる。
近年では、少年院、刑務所受刑者たちの診療にも携わる、数少ない日本のプリズン・ドクターである。日本で初めて受刑者復帰支援教育として「笑いの健康体操」を取り入れたパイオニア。積極的に再犯防止に取り組んでいる。
現代社会の流行から犯罪医学まで幅広い知識はテレビメディアでの評価が高く、「信頼できる女性コメンテーター第1位」にも選ばれている。近著は矯正医官として“塀の中の診察室”の日々をユーモアに綴った「プリズン・ドクター」(新潮社)。
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
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