学生監督たちが作品携え熱のこもったアピール展開【第38回東京国際映画祭】
2025年11月4日 15:45

第38回東京国際映画祭「アジア学生映画コンファレンス プログラム1」の上映会が11月3日にTOHOシネマズ シャンテで行われ、6人の学生監督が舞台挨拶に登壇、それぞれの作品に込めた思いを説明した。
本プログラムは、アジア各国の映画学校が推薦する60分未満の作品から選出された15本の学生映画からなるコンペティション部門。映画監督のリティ・パンを審査委員長に、カンヌ映画祭代表補佐兼映画部門ディレクターのクリスチャン・ジュンヌ、俳優・映画監督の岡本多緒が審査員として参加し、作品賞を授与する予定となっている。
「レディ!サーブ!スマッシュ!」のワン・ハオタイ監督(台湾藝術大学)は、映画やアニメ化で話題となった「ピンポン」にインスパイアされて本作をつくったそうで、「この短編で主に伝えたかったのは“夢の原点を取り戻す”ということ。わたしたちは生活の中で、自分の理想や目標を失いがちですが、もう一度挑戦してみたり、かつて好きだったことを体験し直したりすることで、自分の進むべき道や目標を見つけ出すことができます。わたしは漫画が好きなので、『NARUTO -ナルト-』や『スラムダンク』など多くの漫画の要素を取り入れました。観終わった皆さんに『熱い!』『青春だ!』と感じてもらえるような、わたしが思い描く中高生の姿をつくり出したかったんです」と説明。
「ボウルミーツガール」の関駿太監督(日本大学芸術学部)は「けっこうふざけた話なので、最初は何も考えずに書いていったんですが、気づけば(まわりの人からの)束縛や支配といったものから抜け出して突っ走るような話になってたなと思います。自分がどうしようもないなと思う瞬間はああなるので。今となっては、学生時代を振り返ったような映画になったんじゃないかなと思います。恥ずかしいんですけどね」と笑ってみせる。
そして「ワーニャの困惑」のホウ・ジューユエン監督(上海電影学院)は「この作品はわたしの多くの経験や、この世界に対するわたし自身の見方を表現したものです。わたしは舞台演出家出身で、特にチェーホフが大好きなんです。カメラワーク、人物関係、そして物語の表現方法などを駆使して、過去の自分を総括したいと思い、長回しという映像スタイルを選びました。この17分間の長回しの中で、主人公に寄り添い、彼の精神世界と物語に入り込んでいき、その過程で、演劇と映画の融合を試みたんです。この作品はチェーホフの古典劇『ワーニャ伯父さん』にも言及しているので、皆さんからの感想や質問もお聞きしたいです」と呼びかける。
さらに「金曜礼拝」のリウ・チンリン監督(中国伝媒大学)が「この物語はわたし自身の成長体験に基づいています。中国のイスラム教徒の教えや信仰の多くは、血縁や家庭を通じて伝えられます。そのため、これはごく一部の人が成長過程で抱く葛藤かもしれませんが、家庭と自己の思考から生じる思春期の矛盾というテーマは、誰にでも共通するものだと思います。これは私たちの学部時代の卒業制作で、今年の初めに撮影を終えました」と語ると、イェ・ハンリン監督(中国伝媒大学)も「長編に比べて、短編はより受け入れやすく、新しいことに挑戦しやすいと感じます。短編を撮る際は、より遊び心を持てるんです。この作品では客観的な視点ではなく、少女の視点から映像表現を試みました。編集や音楽においても、私たちの世代に合った表現方法を多く取り入れています」と明かした。
そして最後に「フローティング」のイ・ジユン監督(韓国映画アカデミー)は「この映画の出発点はわたしと父の関係から始まりました。わたしが育つ中で見てきた移民コミュニティに目を向けたとき、彼らはすべてを捨ててアメリカンドリームを追いかけてきたわけですが、そのアメリカンドリームが彼らをどこへ導いたのだろうかという問いかけから物語は始まりました。物語の中で最も力を入れ、悩み、今でも一番愛着のある部分は、大人になった(主人公の)イヨンが父に『アメリカ人になって幸せ?』と問いかける場面です。実はその質問は実際に父に聞きたかった質問でもあります。もちろんこの映画はドキュメンタリーではないので、すべての場面がわたしのもの、わたしの記憶だったというわけではありませんが、皆さんがこの映画を観て、何かの記憶を感じてくださればいいなと思いながらつくりました」と説明した。
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