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「SPIRIT WORLD スピリットワールド」あらすじ・概要・評論まとめ ~穏やかで洗練された、心に染み入る高崎の「天使の詩」~【おすすめの注目映画】

2025年10月23日 11:00

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「SPIRIT WORLD スピリットワールド」
「SPIRIT WORLD スピリットワールド」
(C)2024「SPIRIT WORLD」製作委員会

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!

本記事では、「SPIRIT WORLD スピリットワールド」(2025年10月31日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。


画像2(C)2024「SPIRIT WORLD」製作委員会
【「SPIRIT WORLD スピリットワールド」あらすじ・概要】

フランスの名優カトリーヌ・ドヌーブが主演、竹野内豊堺正章風吹ジュンらが共演し、迷える大人たちの希望と再生を描いたファンタジードラマ。日本、フランス、シンガポールの合作映画で、群馬県高崎市や千葉県いすみ市で撮影が行われた。

父・ユウゾウの死をきっかけに群馬県高崎市を訪れたハヤトは、離婚した母に思い出のサーフボードを届けてほしいという父からの遺言と、フランス人歌手・クレアのコンサートチケットを見つける。しかし翌日、来日していたクレアが突然亡くなったことを知る。父の遺言を果たすため、ハヤトは家を出た母を捜す旅に出る。一方、コンサートで訪れた日本で命を落とし、さまよえる魂となったクレアは、死後の世界でユウゾウと出会い、見えない存在としてハヤトの旅を見守ることとなる。

クレア役をドヌーブ、ハヤト役を竹之内、ユウゾウ役を堺がそれぞれ演じる。メガホンを取ったのは、斎藤工松田聖子が共演した「家族のレシピ」も手がけた、シンガポールの映画監督エリック・クー


●穏やかで洗練された、心に染み入る高崎の「天使の詩」(執筆:佐藤久理子)
画像3(C)2024「SPIRIT WORLD」製作委員会

TATSUMI マンガに革命を起こした男」や「家族のレシピ」など、日本と関わりのある作品を制作してきたシンガポールのエリック・クー監督が、再び群馬県高崎市を舞台にした新作。今回の主演はフランスの「国宝俳優」カトリーヌ・ドヌーヴである。最近は海外の監督が日本を舞台にした作品を撮るケースが増えているが、クー監督は西洋とは異なる日本の死生観に理解を示しつつ、彼らしいウィットと洗練をもって、普遍的な物語を紡ぎ出した。

ストーリーは、娘を亡くしていまは天涯孤独なシャンソン歌手クレア(ドヌーヴ)の物語と、彼女の往年のファンであるユウゾウ(堺正章)とその息子ハヤト(竹野内豊)のドラマがシンクロする。早くに離婚し、息子と疎遠になったユウゾウは、ひとり自宅でクレアのレコードを聴きながら静かに息絶える。悲報を聞いたハヤトは実家を訪れ、父の遺言状とクレアのコンサートのチケットを見つける。

一方クレアは、気の進まない来日コンサートを終え、ひとり飲みの居酒屋で突然倒れる。ふたりのメイン・キャラクターが冒頭でいとも呆気なく死んでしまう展開に驚かされるものの、本当に物語が動き出すのはここからだ。ふたりは死後の世界で出会い、共にハヤトの足取りを見守ることになる。

画像4(C)2024「SPIRIT WORLD」製作委員会

過去の確執のせいで父親と向き合えなかったハヤトは、父の代わりにクレアのコンサートを鑑賞したり、「母さんに思い出のサーフボードを届けて欲しい」という遺言に従い、母(風吹ジュン)を探す旅に出るなかで、少しずつ父のことを理解していく。

「存在感」というのはありふれた言葉だが、本作のドヌーヴの佇まいにはまさにそれを彷彿させられる。孤独の重みや、実体を失った魂を思わせる漂流感、ときに母性を滲ませる一方で、ふと艶やかさを醸し出したりもする、その自在な変調ぶりがみごとだ。

対する堺も、穏やかさと軽やかさ、そこはかとないユーモアをたたえ、年輪を重ねた味わいを醸し出す。ユウゾウのキャラクターがかつてグループサウンズのミュージシャンだったという設定は、堺に対するクー監督の目配せだろう。カメオで細野晴臣久保田麻琴が顔を出しているのも、この監督の粋な音楽魂を感じさせる。

画像5(C)2024「SPIRIT WORLD」製作委員会

妙に特殊効果などに頼ることなく、あくまでそこにいながら、人間には見えない存在として魂となった者たちを描く演出は心地よい。そのアプローチは、ヴィム・ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」を思い出させる。

親と子の確執、後悔、孤独、失った者に対する哀悼、そんな普遍的なテーマを死者の視点から語りながら、人間愛を謳う本作は、まるで灯籠の明かりのように、観る者の心を灯してくれる。

執筆者紹介

佐藤久理子 (さとう・くりこ)

X(Twitter)

パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

Twitter:@KurikoSato


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