【昭和、平成、そして令和に】進化を遂げる「トロン」シリーズまとめ その革新とレガシーとは?
2025年10月7日 10:00

長編映画として世界で初めて本格的にCGを導入したことでも知られるSF映画「トロン」のシリーズ第3作「トロン:アレス」が、10月10日から日米同時公開される。
そこでこの記事では、「トロン」(1982)、その続編にあたる「トロン:レガシー」(2010)のあらすじ、キャラクター、独自の考察を通し、昭和、平成、そして令和と進化を遂げる「トロン」シリーズの革新性と遺産(レガシー)に迫る。紹介作品は、劇場公開を控える「トロン:アレス」を除き、全てディズニープラスで配信されている。

【「トロン」あらすじ】
【「トロン」キャスト/キャラクター】
【「トロン」考察――ウォルト・ディズニーに通ずるチャレンジ精神】
【「トロン:レガシー」あらすじ】
【「トロン:レガシー」キャスト/キャラクター】
【「トロン:レガシー」考察――遺産を継承し、技術・テーマともに進化】

数々のビデオゲームを開発してきた天才プログラマーのフリンは、エンコム社のテレビゲーム「宇宙のパラノイア」を完成させるが、同僚のディリンジャーに全データを横取りされる。エンコム社の総合制御システムMCPに記録された証拠を見つけるため、ハッキングを試みるフリンだったが、物質変換光線により電子回路のなかの世界へと送り込まれる。そこで命懸けのサバイバルゲームに挑むことになったフリンは、ユーザーに忠実で勇敢なビデオ戦士「トロン」とともに、人間の世界をも支配しようとするMCPの野望を阻止するべく立ち上がる。

・ブルース・ボックスレイトナー:アラン/トロン
・デビッド・ワーナー:ディリンジャー/サーク司令官
・シンディ・モーガン:ローラ/ヨーリ
・バーナード・ヒューズ:ギブス博士

「トロン」は商業映画として初めて大規模にCGを使用した作品。当時、実験段階にあったCGで描かれた約15分間のシーンは、デジタル世界の表現に新たな可能性を示した。また、バックライトアニメーションやマットペインティング、実写撮影を組み合わせたハイブリッドなアプローチを採用し、デジタルとアナログの融合を目指すスタイルも挑戦的だった。
当時の技術では、1フレームのレンダリング(データを処理、演算することで画像や映像を表示させるプロセス)に最大6時間かかったといい、プレビューも不可能だったため、手作業で座標を計算するというアナログ作業も積み重ねられた。

映画の舞台であるデジタル空間の描写は、グリッド状のデザインや蛍光色の配色で、未来的な美学を構築。このビジュアル言語は、後のSF映画やビデオゲーム、現代のVRやメタバースのデザインに大きな影響を与えている。
一方、革新的な映像が話題を集めた「トロン」には、アカデミー賞において視覚効果賞にノミネートさえされなかった歴史がある。これはアカデミー会員が「CGの使用は“ズル”」と見なしたからとされており、当時のCGに対する認識と風潮を表す対応といえるかもしれない。


CGによって映像革命をもたらした「トロン」は、コンピューター技術がエンタテインメントにどんな貢献ができるのか――その可能性を追求するきっかけを生み出し、映画を通してデジタル世界の概念と脅威を、広く大衆に紹介したという点でも、非常に意義深い存在だ。
かつて、ウォルト・ディズニーが周囲の反対を押し切り、世界初の長編アニメ「白雪姫」を誕生させた精神を受け継ぎ、当時のディズニーが商業的リスクを背負いながら「トロン」を完成させた姿は、映画産業におけるイノベーションの重要性も示しているといえる。

「トロン」から数え、28年ぶりの再起動を果たした続編。デジタル界のカリスマ的存在だったケヴィン・フリンが、息子・サムを残して失踪してから20年が経った。27歳になったサムは、父・ケヴィンから謎のメッセージを受け取り、父が創造したコンピューターの世界に入り込む。そこで独裁者・クルーに命を狙われたサムは、謎の女性・クオラに助けられる。この世界に隠された恐るべき秘密を知ったサムは、父についての手がかりを握るクオラとともに、クルーを相手とした戦いに身を投じていく。エレクトロデュオ「ダフト・パンク」の音楽起用も大きな話題になった。

・ギャレット・ヘドランド:サム・フリン(平川大輔)
・オリビア・ワイルド:クオラ(小松由佳)
・ブルース・ボックスレイトナー:アラン・ブラッドリー/トロン2.0(大塚芳忠)
・ジェームズ・フレイン:ジャービス(咲野俊介)
・ボー・ガレット/ジェム(甲斐田裕子)
・マイケル・シーン:キャスター/ズース(桐本琢也)

「トロン」が生み出した革新的なビジョンを、21世紀の技術で再構築し、新たなファン層にその遺産(レガシー)を継承するために製作された「トロン:レガシー」。リアルタイムレンダリングの活用など、CG技術の進化により、デジタル世界の現実味が増し、アップデートされた「トロン」の世界を提示。最新のVFX技術を紹介するショーケース的な役割も果たした。
特に前作から出演するジェフ・ブリッジスを、若返った姿で登場させるデジタル・ディエイジング技術が大きな話題に。ブリッジスの顔をスキャンし、モーションキャプチャーとCGを組み合わせることで、劇中に20代の姿を再現した。この“若返り”技術は「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のターキン提督(故ピーター・カッシング)、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)といった作品でも活用されている。

ジェームズ・キャメロン監督による「アバター(2009)」が巻き起こした世界的3D映画ブームと“同期”し、翌10年にディズニーが世に送り出したのが「アリス・イン・ワンダーランド」、そして「トロン:レガシー」だった。両作品とも記録的ヒットを叩き出し、3D映画ブームは頂点を迎えた。
「トロン:レガシー」では、3D技術を駆使して、高速で動く光の軌跡や広大なデジタル風景といった「トロン」の世界観を立体的に表現し、視覚的インパクトを最大値化。ライトサイクルやディスク戦のダイナミックなアクションも強化された。3Dならではの、奥行きと臨場感によって、オリジナルの「トロン」が目指したデジタル世界への“没入”を実現させることに成功した。


「トロン」から継承されたのは、テクノロジーや世界観に留まらない。同作が先見的に描いた人工知能やデジタル世界の支配、個人の自由意志といったテーマを引き継ぎ、「トロン:レガシー」では、インターネット文化、デジタルアイデンティティ、AIの進化と倫理的問題といった、より現代的なテーマへの“接続”を試みている。
ケヴィン・フリンの完ぺきなシステムへの執着や、自発的に進化したデジタル生命体であるクオラの存在など、テクノロジーがもたらす理想と現実、哲学的な問いを観客に投げかけた。その問いは、超高度AIプログラムが、デジタル世界から現実世界へと現れ、人類を脅かす存在として描かれるシリーズ最新作「トロン:アレス」に受け継がれている。

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