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ブライアン・イーノのキャリアのすべて。見る度に違うから、何度でも見たくなる【映画.com編集長コラム】

2025年7月11日 13:00

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「Eno」(公開中)
「Eno」(公開中)

ドキュメンタリー「Eno」(7月11日公開)は、製作が発表されたときから非常に楽しみにしていた1本です。ブライアン・イーノは、個人的に、昔からとてもリスペクトしていたミュージシャンでした。

ティーンエイジャーの頃、デビッド・ボウイのベルリン3部作、とりわけ「Low」「Heroes」の2枚はアルバムジャケットを部屋に飾っていたほどのお気に入りでした。この3部作にプロデューサーとして参加していたのがブライアン・イーノですが、それ以前は「ロキシー・ミュージック」のメンバーだったり、キング・クリムゾンを解散したあとのロバート・フリップとアルバムをリリースしたりしています。UKロックの重要人物でありながら、プログレ界隈のタレントよりはちょっと派手で、かつ、にじみ出るようなインテリ臭を放っていたのがイーノでした。

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私も含め、周りの音楽好きは、ブライアン・イーノのアルバムは発売されるたびに必ず購入していました。が、「ミュージック・フォー・エアポーツ」以降アンビエント系のリリースが続くと、脱落する者が続出します。だって、ロックじゃなくて「環境音楽」なんですよ。楽しくないし、聞いてて眠くなる。もう、イーノも卒業するかなってみんな思う。ところが、イーノが他のバンドをプロデュースしたヤツを聞くと考え直すことになる。トーキング・ヘッズの「リメイン・イン・ライト」やU2の「焰」(The Unforgettable Fire)はめちゃめちゃカッコ良くて、「さすがだなあ」ってなるんです。広い守備範囲と何でもできる、万能系かつ天才系のアーティストとしてリスペクトされていました。

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なので、この「Eno」を見たら、自分の血となり肉となってきた音楽が、どうやって出来上がっていたのか大変よく分かったという貴重な体験でした。しかも、イーノがピンクのシャツを着て、カメラ目線でオーディエンスに向かって語るという、激レアなシークエンスも実に感慨深い。「ディスクリート・ミュージック」の話とか、フェラ・クティの話とか、「アナザー・グリーン・ワールド」の話とか。割と苦労していた時代の話とかもあって、「なるほど。イーノにもそういう時代があったのね」って、ちょっと嬉しくなりました。

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しかもこの映画、世界初の「ジェネラティブ・ドキュメンタリー」とのことで、上映の度に違うバージョンが投影されるというではありませんか! 私が見たバージョンでも十分に興奮&感動したわけなのですが、関係者の方に聞いてみたところ「今日のは、前回上映したのと違っていました。今日のを見て、あの重要なシークエンスが映ってないのか?って驚きましたから」というリアクション。

さらに突っ込んで取材してみたら、「映画は全部で52京バージョン存在していて、お客さんが見られるのはその1バージョン」なんだとか。うーむ。全バージョンのコンプリートは絶対無理!

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印象的だったのは、イーノは常に「自分はアーティストなんだ」と認識していて、商業的なミュージシャンとかプロデューサーという自覚はみじんもなく、その活動はもれなくアートであると断言していること。映画の中でも、インスタレーションでの展示作品に関するシークエンスがありました。正直、これまであまり知らなかったイーノの活動を再認識できました。

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ただし、イーノの家族は一切出てきません。飼い猫がカメラの前を横切るシーンはありますが、(私が見たバージョンには)彼の妻や娘たちは一切登場しませんでした。また、食事のシーンもありません。つまり、プライベートを紹介するシークエンスは本編にはありません(……しかし、他のバージョンにはあるかも知れない)。

とにかく、一度見ただけではすべてを見たことにならないし、すべてを語る資格もない。そんな、イーノを知る者にとっては沼のような映画です。私も、公開されたら映画館であと1〜2回は見ようと思います。重複部分がどれぐらいあるのかも大変興味深い。

このジェネラティブにアウトプットして、見る度に映画の内容が変わる手法って、日本でよく見る「来場の度に違うオマケをプレゼントする」というリピート施策よりは、遙かにスマートな手法だよなあって思いながら、試写会の会場をあとにしました。

執筆者紹介

駒井尚文 (こまいなおふみ)

X(Twitter)

1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi


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