約30年ぶりの2Dアニメ劇場版「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」が画期的な理由とは?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2025年6月26日 06:00

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
今週末6月27日(金)から「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」が公開されます。「ルパン三世」シリーズとしては、1996年に公開された「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」以来となる約30年ぶりの2Dアニメ劇場版です。
とは言え、個人的には「映画 ルパン三世」が渋滞していたイメージがあり、いまいちピンときませんでした。
本作は、小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズという表現もありますが、まさに“小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ”が私の混乱の要因でした。

では、“小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ”とはどういうものなのでしょうか?
まず、同シリーズは2014年に劇場で期間限定公開された「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標」から始まります。
この作品では、ルパンと次元がどのように相棒になっていったのかを描いていました。

次に2017年に劇場で期間限定公開された「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」があり、若き日の五ェ門が主人公として描かれていました。

そして2019年に劇場で期間限定公開された「LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘」があり、不二子が主人公の作品でした。

当時の私は、とりあえず試写でこれらの作品を見ていても、「どう評価したらいいのかわからない…」という不思議な作品だったのです。
これらはどれも1時間に満たない作品で、しかも限定公開だったので、何のために作られているのかも含め、いまいち理解できなかったからです。
独自性があるとしたら、どれも「ルパン三世」の初期の頃を描いていることと、監督が小池健ということでしょうか。
小池健の作品としては、自身が初めて長編アニメーション映画の監督を手がけた「REDLINE」(2010年)が最も代表的なものとしてあります。
この作品は、日本のアニメーション黎明期にエッジの効いた独自性のある動きを生み出した金田伊功さんの影響を大きく受けたような作画が全編にわたって繰り広げられていました。
主人公の声優は木村拓哉が担当するなど、かなり心血の注がれた作品でしたが、興行収入は残念ながら1億円で終わっています。
そんな特徴的な作品を作り出す監督なので“小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ”も同様にエッジの効いた作画に特徴がありましたが、やはり「ルパン三世」というベースのある作品なので、割と抑え目になってもいました。
そんな“小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ”ですが、ようやく11年の時を経て全貌を見せたのです。
まずは先週末の6月20日(金)から配信を中心に「銭形編」ともいえる「LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン」がリリースされました。
これは、本作「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」の前日譚という位置付けの物語で、事前に見ておくのが望ましい作品といえます。

そして、今回の「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」は、「ルパン三世」シリーズで最初の2Dアニメ劇場版である「ルパン三世 ルパンVS複製人間」(1978年)へと続く物語になっているのです!
つまり、“小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ”は、お馴染みのキャラクターが決して親しくない関係から描いていき、第一弾の「ルパン三世 ルパンVS複製人間」から誰もが知っている関係性になっていくように作られているのです。
この全貌が見えると“小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ”の評価がようやくできます。

要は、初期の「ルパン三世」を、それぞれのキャラクター視点で、ややエッジを効かせて描き、伝説的な第一弾へと続ける意欲的な構想。これは本作の出来を見ても成功といえるでしょう。
「ルパン三世 ルパンVS複製人間」は、日本テレビ系列の地上波のプライムタイムで既に15回も放送されている「超コスパに優れたコンテンツ」。本作を機に、さらにコンテンツの価値が上がるという非常に上手い仕掛けとなっているのです。
第一弾へと続く作品であれば“作画を第一弾に寄せる”という手法もあり得ますが、あえてエッジの効いた現代的な作画にしている方が自然に見えるので、方向性も正解のように思えます。

さて、本作の配給は「TOHO NEXT」。東宝本体ではなく、公開規模も約150館となっています。
目標となるのは今年の1月に公開された「ベルサイユのばら」でしょうか。初週156館で公開し、共に1970年代にテレビアニメ版が放送されているのです。
「ベルサイユのばら」の方は好調で何とか興行収入5億円を超えました。「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」にも興行収入5億円突破の期待がかかります。
今週末の公開日に合わせて日本テレビの「金曜ロードショー」では、第二弾となる「ルパン三世 カリオストロの城」が放送されます。こちらは宮崎駿監督作品ということもあって、19回目という異次元級の放送回数となっているのです。
果たして「ルパン三世 ルパンVS複製人間」は、「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」の効果も加わって、どこまで地上波のプライムタイムで繰り返して放送されるのか――その記録にも注目したいと思います!
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