カリフォルニア州が映画税額控除を大幅増 年3.3億ドル→7.5億ドル投入でハリウッド復活目指す
2025年6月26日 11:00

ハリウッドの本拠地カリフォルニア州が、映画・テレビ業界の危機的状況を受けて大規模な支援に乗り出したと、米Deadlineが報じている。州議会は6月23日(現地時間)、ギャビン・ニューサム知事が提案した年間7億5000万ドル(約1088億円)の映画・テレビ税額控除プログラムの予算を承認した。現行の3億3000万ドル(約478億円)から2倍以上の大幅増額となる。
この法案は、近年深刻化する映画・テレビ制作の州外流出に歯止めをかける緊急措置として位置づけられている。業界では「ランナウェイ・プロダクション」と呼ばれるこの現象により、カリフォルニア州は過去2年間で約4万人の制作関連雇用を失った。米労働統計局のデータによると、この数字は業界全体の雇用に壊滅的な打撃を与えている。
特にロサンゼルス地域の状況は深刻だ。映画許可管理団体FilmLAによると、テレビ制作の撮影日数は2021年から24年のわずか3年間で58%も減少。25年第1四半期も前年同期比22%減となっており、回復の兆しは見えていない。
制作流出の背景には、他州や他国との激しい税制優遇競争がある。ニューヨーク州は昨年、年間8億ドル(約1160億円)の映画・テレビ制作優遇予算を承認し、ジョージア州は上限なしの税制優遇を提供している。さらに深刻なのは海外勢で、ヨーロッパ諸国の中には制作費の最大40%を還元する国もある。
映画プロデューサーのクリス・ベンダーは「70カ国以上が国家レベルの映画制作補助金を提供している」と指摘する。こうした国際競争の結果、カリフォルニア州は世界の映画制作拠点ランキングで6位まで転落し、カナダ・トロント、イギリス、カナダ・バンクーバー、中央ヨーロッパ、オーストラリアに後れを取っている。
今回承認された法案は、単なる予算増額にとどまらない包括的な制度改革を含んでいる。税額控除率は現行の20%から35%に引き上げられ、特にロサンゼルス地域での撮影に対してはより手厚い支援が用意される。また、対象となるプロジェクトも拡大され、1話20分以上のテレビドラマ、アニメーション作品、大規模なリアリティ番組なども新たに含まれることになる。
法案成立に向けて、映画業界の著名人たちも積極的に働きかけを行った。プロデューサーのスコット・バドニックが主導した州都サクラメントへの陳情活動には、「ワンダーウーマン」シリーズのパティ・ジェンキンス監督、「アメリカン・フィクション」のコード・ジェファーソン監督、「ウエストワールド」のジョナサン・ノーラン監督らが参加した。
ニューサム知事は今月記者団に対し「映画製作は生命維持装置につながれた状態だ。ロサンゼルス郡とロサンゼルス市は苦境にある」と語り、法案の必要性を強調していた。
カリフォルニア映画委員会はこのほど、最新の税額控除対象として48作品に総額9600万ドル(約139億円)の支援を発表した。興味深いことに、このうち43作品が予算1000万ドル(約14億5000万円)以下の独立系映画で、大作映画の流出が続く現状を反映している。
州の推計によると、この制度改革により4000から5000人の新規雇用創出が見込まれている。しかし、過去2年間で失われた4万人の雇用を回復するには、さらなる取り組みが必要になるとの見方もある。
米監督組合のラッセル・ホランダー事務局長は「ランナウェイ・プロダクションは新しい問題ではないが、現在我々が経験しているのは世界的な映画・テレビ制作の大幅な縮小だ」と指摘し、「このような状況下では、外国の税制優遇を追って米国を離れる全ての仕事が、これまで以上に重要な意味を持つ」と危機感を示した。
約120億ドル(約1兆7400億円)の州財政赤字という厳しい状況の中での大型予算承認は、カリフォルニア州がハリウッドというアイデンティティを守る決意の表れといえる。世代を超えて築き上げてきた映画産業の中心地としての地位を取り戻せるか、今後の動向が注目される。
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