【世界の映画館めぐり】「イカゲーム」撮影スタジオを擁する韓国・大田 隠れ家のようなミニシアターで「HAPPYEND」を鑑賞
2025年6月19日 20:00

映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回は韓国・大田(テジョン)のミニシアター「テジョンアートシネマ」を紹介します。
大田広域市は、ソウルから高速列車で約1時間ほど、韓国中部地方の中心都市で、1993年には大田世界博覧会が開催され、韓国の科学技術の先端都市として知られている街です。
今回筆者は、ゴールデンウイーク休暇と併せて、5月の全州国際映画祭取材をメインに渡韓し、「タクシー運転手」の舞台となった光州市、そして韓国最古級の映画館「光州劇場」などを訪問しました。ソウルではなく清州発着の飛行機を利用したため、全州からの帰り道に大田に寄ってみました。実は、この大田市には、世界的人気を誇り、まもなく新シリーズ配信のNetflix「イカゲーム」をはじめとした、韓国の人気コンテンツが生み出される映像制作センター、スタジオキューブがあります。

韓国クリエイティブコンテンツエージェンシー(https://www.kocca.kr/kocca/)の施設情報などによると、大田広域市儒城(ユソン)区に位置するスタジオキューブは、2017年に政府の支援によりエキスポ科学公園敷地内に設立された、その敷地面積は約5000平方メートル級の韓国最大規模のスタジオなのだそう。各種最新設備を誇り、水中やCG用など特殊撮影も可能なのだとか。

もちろんアポイントは取っていないので、外観だけ見てきました。週末だったので、撮休だったのでしょうか、入口ゲートは閉じられており、駐車場に停められた車の数もまばら。あわよくば、スタジオ入りする俳優さんを目撃できるのでは……という淡い期待は実現しませんでしたが、日本での映画業界のシンポジウムなどで、韓国の映像産業界は週休2日、撮影時間の上限順守など労働環境が非常に整っている、という話題がよく挙がっていたことを思い出しました。

「イカゲーム」のカラフルな迷路のような階段、OXゲーム会場など、数多くの印象的なシーンはここで撮影されたそう。セットだけでもメディアやファンが見学できるツアーなどがあったら、大人気になるでしょう。韓国の人気コンテンツを生み出す聖地を訪問できただけでも大満足の筆者、その後はレトロフューチャーなエキスポの記念塔を見学したり、儒城は温泉地としても有名とのことで、日本の健康ランドのような温浴施設で長旅の疲れを癒したりと、つかの間の小旅行も楽しめました。


そして、高速鉄道が発着する大田駅のある市中心部に移動します。繁華街に数えきれないほどの人々が長蛇の列をなしているお店を発見しました。筆者、コスメやスイーツなどのトレンドに疎く、まったく知らなかったのですが……聖心堂という名の、今、韓国で一番人気のパン屋さんなのだそう。並ぶ時間がなく入店はしませんでしたが、韓国国民を虜にするパン、どんな美味しさなのか気になるところです。


大田にはどんな映画館があるのだろうと検索したところ、韓国各地で展開する大手シネコンチェーンのほかに、「テジョンアートシネマ」というミニシアターがあることを知りました。大田駅ほど近くのビルの3Fに位置し、筆者が帰りの電車を待つまでの時間には空音央監督の「HAPPYEND」が上映中でした。なんという良いタイミング! さっそく映画館へ向かいます。

「テジョンアートシネマ」の裏手には、大田中央市場という韓国中部地方最大の市場が広がっています。食品や日用品、衣料などのほか、美味しそうなローカルグルメの屋台もいっぱい。英語ではなく、韓国語を勉強して、いつか屋台のおばちゃんたちとやりとりできるようになりたいなあと夢が膨らみました。映画祭取材の帰路ということもあり、正直なところほとんど情報収集をしていなかった大田ですが、こういった寄り道にこそ、旅の醍醐味があるのだなあと実感します。大田に数日滞在するのもとても面白そうです。


そして、古いビルの階段を上って「テジョンアートシネマ」へ。階段の壁に、「かたつむりのメモワール」「ゴンドラ」「私たちが光と想うすべて」と、日本のミニシアターでも話題を集めた作品のポスターが貼られており、入口を開けると、たくさんの名作映画ポスターやチラシ、バーカウンターとその後ろに数多くの書籍と撮影機材が並ぶ書棚が目に入ります。こちらで、コーヒーなどの飲み物を提供しているようです。


館内はまるで隠れ家のような趣のある空間で、館主と思われる男性に日本から来た旨を伝えて、館内の写真撮影の許可をいただきました。時間がたっぷりあったら、ここでコーヒーを飲みながら、オーナーさんやスタッフさんといろいろとお話できたら楽しいだろうなあ、と思いました。


映画のポスタービジュアルを用いた入場券は、鑑賞記念に取っておきたくなるほど素敵で、本のしおりなどにしても良さそう。ミニシアターだからこそできるこだわりですね。通常上映が行われるスクリーンは一つで、座席は約130ほど。この回の観客は、筆者の他に地元の若者が数人という感じでした。

筆者は「HAPPYEND」はすでに日本で鑑賞済みでしたが、韓国の地方都市の映画館をめぐり、さまざまな文化や歴史を学ぶことができた旅の終わりに、インディペンデント映画を愛する人々が集う小さな劇場でこの作品を観ることができたのが非常に感慨深かったです。

そして鑑賞後、映画館を出ると……入館時には貼られていなかった山中瑶子監督の「ナミビアの砂漠」のポスターを発見。私が日本から来たと伝えたので、もしかしたら、スタッフの方の計らいだったのかもしれません。交通の要所として、韓国のどこからでもアクセスのよい大田、海外のミニシアターを体験してみたい映画ファンには、是非訪れてほしい施設です。

テジョンアートシネマ公式インスタグラム(https://www.instagram.com/djartcinema/)
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