イザベル・ユペールが来日、日本で撮影した主演作「不思議の国のシドニ」 フランス語で演じた伊原剛志を絶賛「この役は伊原さんしかできない」
2024年11月4日 13:00
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第37回東京国際映画祭特別上映部門「不思議の国のシドニ」が11月3日、丸の内TOEIで上映され、主演を務めたフランスの名優イザベル・ユペール、共演の伊原剛志、エリーズ・ジラール監督がQ&Aに応じた。
夫を亡くし、喪失感を抱えるフランスの女性作家シドニが、日本人編集者の溝口とともに日本各地を旅する中で、さまざまな未知の経験を経ながら、新たな人生の一歩を踏み出していく姿を軽やかにつづった人間ドラマだ。
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ジラール監督は、2013年に長編デビュー作「ベルヴィル・トーキョー」のプロモーションで初来日した経験が、本作構想のきっかけとなったと明かす。
「その時、1週間も日本に滞在することができたんです。その時の配給会社の方々が、私に日本のいろんな場所を体験する機会を与えてくれました。そこで、この『不思議の国のシドニ』で映した美しい風景を私自身が体験し、インスピレーションを受けました。日本の文化と出会って、魅了され、日本という国とアーティスティックな出合いをしたと感じたのです。私は日本の持っている伝統とモダン、そんな二面性に恋をしたので、京都の伝統、それから直島という今の現代アートの2つをこの映画に取り込むことができました」
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本作出演のオファーを受けたユペールは、「脚本を読んだとき、シンプルに良い作品だと思いました。文章、セリフが素晴らしかった。監督の前作『静かなふたり』に私の娘、ロリータ・シャマが出演していますが、彼女が素晴らしい演技をしていたのです。そして、『静かなふたり』は映画の中で文学を扱っており、文学が映画の中でうまく機能していました。また、彼女の最初の作品『ベルヴィル・トーキョー』も素晴らしかったので出演を即決しました。『不思議の国のシドニ』は、観光的な映画ではなく、シドニが日本に来ることによって、見失っていた自分を再発見するという、深い意味合いがあります」と、ジラール監督の紡ぐ物語にほれ込んだという。
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劇中では、全編フランス語のセリフでシドニとやりとりした伊原は、「フランス語は全く喋れなかったんです。最初4カ月ぐらい準備期間があって、ゆっくり普通の速さのセリフをいただいたのですが、それを聞いてもさっぱりわからなくて」と当初の苦労を明かす。
フランス語のセリフを英語に翻訳したものも指導担当者に用意してもらい、「日本語で意味を理解して、英語とフランス語で照らし合わせて覚えました。先生がよかったのと、私の耳もよかったようで。また、コロナ禍で撮影が一旦中止になったので、翌年また4カ月の準備期間をとることができたのもラッキーでした。オンラインで監督とセリフについて細かくディスカッションできて、撮影に臨むことができました。しかし、フランス語入門の本は読んだこともないので、セリフしか言えませんが」と、大きな挑戦について振り返った。
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劇中でシドニは、死んだ夫の幽霊と出会う。観客から、幽霊の夫が明るく、生きている妻が暗く撮られている理由を問われると、「シドニは夫を亡くして悲しみから立ち直れず喪に服しています。幽霊という形で夫は出てきますが、身体を持った幽霊として出すことを考えました。ジョセフ・L・マンキウィッツ監督の『幽霊と未亡人』という映画を着想源とし、生前の夫がとても愉快な人だったという設定です。明るく、ヨーロッパ的幽霊として出現させました」とジラール監督。
ユペールは、「そのアイデアをエリーズから聞いて、良いアイデアだと思いました。映画を観てその理由が腑に落ちました。夫は、死者にもかかわらず生き生きしている。そして、死んでいるけれど、生に執着している。シドニは亡き夫が明るく出てきたことによって、ようやく悲しみから自分を解放できるのです」と付け加えた。
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そして、日本での映画撮影を「何度もまた身を置きたいと思えるような特別な体験だった」と振り返り、フランス語のセリフについて語った伊原に対し「伊原さんはちょっと謙虚すぎます。彼がやった仕事は、本当に例外的な、唯一無二のことです。フランス人女優の私が、全て日本語で演じなさいと言われたら、おそらくできません。本当に素晴らしい仕事をしてくださいました。伊原さんが演じる溝口がおぼつかないフランス語で話すことによって、2人の距離が縮まり、もっと近づきたい、そういうことを彼は見事に体現してくれたと思います。ですから、この役は伊原剛志さんしかできないと思いますし、彼がこの素晴らしい成果を収めてくれなかったら、この映画は成り立たななかったでしょう」と伊原の努力を称えた。
「不思議の国のシドニ」は12月13日公開。第37回東京国際映画祭は11月6日まで開催。
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