【ネタバレあり】期待していた初体験、主人公の苦い気持ちの理由は…「How to Have Sex」映画.com編集部の解釈に二村ヒトシが感服
2024年7月30日 21:00
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TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回は2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価され、ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みを描いた青春ドラマ「HOW TO HAVE SEX」(モリー・マニング・ウォーカー監督)を取り上げる。
タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく期待し、ともにパーティを楽しむ青年たちに出会うが……という物語。
初めての性体験という、誰にとっても個人的で特別な経験が題材となっている本作、高校を卒業したばかりの主人公、タラの夏休みの出来事が、ある種の苦みとともに描かれている。「今は少し変わってきているけれど、男の経験のなさはある時代においてはイジリの対象になることもある。僕なんかはAVでセックスをすることで過去の自分に復讐しているようなところが正直ある」と二村は吐露。
エビタニは「私はタラに似ている部分が多くて、タラを見ていて心が痛かった。女子校育ちだったし、同級生と性にまつわるいろんな話もしたし……まるで私の10代のようだった」と、その設定に強く感情移入したと語る。
「映画としてすごくいいと思ったのは、言葉で全然説明していないこと」と二村。「タラはさほど緊張している風でもないけど、うまくいかない。最後は嫌な状況になってしまったその後空気も、言葉を使わずに表情でわかる。そして、パーティーのあとの、ゴミだらけの町の祭りの後のような風景も」と具体例を挙げ、エビタニも「あの場面でタラの心象風景がわかる」と優れた映画的描写を称える。
島で出会った青年グループの一人、バディと流されるようにセックスをしてしまったタラ。「最初はいやだと言っていたのだけれど、最後にタラは『イエス』と言ってしまう……二村さんはあのシーンはレイプだと思ったのか聞きたい」と、本作で描かれる微妙な性的同意のシーンについて、エビタニは二村の見解を問い、「悪いのは事後の男の行動。(女性には)私を見ていないし、人として扱われていないと気づくときがある。その瞬間に彼女はレイプされたと思ったのだと思う」と持論を語る。
「多くの女性が同じように感じるから、いろんな映画祭で評価されたんだろうな」と二村。そして、エビタニは、セリフではあまり語られないものの、タラのパーソナリティや家庭環境、繊細な心理描写をはじめ、親友だと言っている女友だち同士の関係、また、浮かない雰囲気のタラに優しく接するバディの幼馴染であるバジャーという青年ふたりについても深く鋭く分析する。
二村は「あのヤリチンたちにもそんなドラマがあるとは……そこまで気づかなかった、エビタニさんの解釈を聞けて良かった」「ワンシーンワンシーンの何から何まで仰る通り……」と解像度の高いエビタニの解釈に感服の様子。
「どのように処女を失うか、というテーマだけど、無意識な差別が描かれている。そして、自分が気が付かない傷つきを表現する、役者さんたちのすごい演技力。いい映画だと思ったが、エビタニさんの言葉を聞いてそれが言語化された」とまとめ、「男性をただ責める映画ではないし、こういう映画の方が男は自分を顧みるのでは」と、エビタニとともに男性の鑑賞を薦めていた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は、男性向け成人雑誌を作る人々の奮闘を描いたドラマ「グッドバイ、バッドマガジンズ」を取り上げる。
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