男性目線で作られた映画の在り方に疑問を呈する「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」 二村ヒトシ&映画.com編集部がトーク

2024年5月23日 20:00


「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」
「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」

TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。

今回は女性が対峙する内面世界や孤独・暴力などを題材に、1980年代初頭より独自の美学で映画制作を続けてきたニナ・メンケス監督が、映画というメディアがいかに「男性のまなざし」に満ちているかを解き明かしたドキュメンタリー「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」を取り上げる。

現在に至るまでの映画がいかに「男性のまなざし」にあふれているか、そしてその表現が人々に及ぼす影響(ブレインウォッシュ=洗脳)を、ハリウッドの巨匠と呼ばれる監督たちの代表作をはじめとした大量の映画のクリップを使用しながらメンケス監督が考察する。

「この映画の宣伝で見た場面写真に感動して、“映像の魔女”と書かれていた」ことに興味を持ち、メンケス監督の作品に「何の予備知識もなく引き付けられた」という二村。代表作の劇映画「クイーン・オブ・ダイヤモンド」と本作を鑑賞し、「この作品についてエビタニさんとラジオで話したかった」と話す。

「映画の功罪を解く、メンケス監督の講義を受けているようで勉強になった。男性のまなざしが、(現代で報じられるような)性加害や雇用の不均衡につながり、ハリウッド的な映画の描かれ方が、人間の無意識にそれが当然のこととして埋め込まれている」「女性の体、女性であることが消費されるモノであると説いている」とエビタニは感想を述べ、本作を要約する。

二村は家父長制の影響を挙げながら、「映画を通して社会を見て、その証拠探しをしているよう」といい、エビタニは「この映画を見ながらメモをとっていたら110本以上の作品を扱っていた」とその作品の中でもハリウッド映画の多さを指摘する。そして「ウォール街の資本がハリウッドに入って来た時から変わったという話に驚いた。大恐慌前は女性監督もいて男女均衡だったのに、映画製作が商業的になってからお金を持っている、払える男性が喜ぶ物を作るようになっていった」と巨大な資金が動く大スタジオによる製作システムについても触れる。

二村は、映画史を振り返り、映画の中の“男性のまなざし”は「人間が動画のカメラを持った時からではなく、アメリカで映画産業が発展し、男が威張っている社会になったから」と補足し、その一方で、「しかし、例えば女性に買わせるための化粧品の広告は、なぜ皆美しいモデルを使うのだろう。カメラを見つめるときに、男を見つめていると思ってしまうし、僕は顧客じゃないのにそこにエロスを見てしまう」と吐露。

そして、アダルトビデオ監督として、ポルノ的な映像を撮る際の手法が、ハリウッドをはじめとした一般映画にも応用されている具体例を挙げ、「(メンケス監督は)ポルノ反対と言っているのではなく、普通の映画に男性性に奉仕するポルノ(の手法)が刷り込まれている、それがブレインウォッシュ、洗脳なんだと思った」と語る。

エビタニも「男性の話のように見えるけれど、女性を客体として美しくエロティックに撮ることによって、女性はそうならなくてはいけないと思わされてしまう。女性にもブレインウォッシュが行われている」とルッキズムについての問題を呈すると、二村も「映画やテレビに美人しか出ていないのがおかしい。美人が普通の人の役をやっている。逆差別になるけれけど、美人は普通じゃない」と同調していた。

そのほか、ふたりの話題は多岐にわたり「フェミニズムの視点の映画と言われると、見るのが怖いと思うかもしれないけど、そうではなく世の中を疑ってみるための映画」(二村)、「私たちが良いと思っているものは本当に心から良いと思っているのか? ブレインウォッシュされて、良いと思わされているのか、考えさせられる映画」(エビタニ)と本作鑑賞を推薦していた。

トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は、𠮷田恵輔監督、石原さとみ主演作「ミッシング」を取り上げる。

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