稲垣吾郎「あんのこと」役づくりの苦労とは? 私情と正義の狭間で揺れ動くジャーナリスト役 新場面写真&メイキング写真披露
2024年5月23日 10:00
虐待の末に売春を強いられ、ドラッグに溺れる少女・杏の姿を描く入江悠監督作「あんのこと」から、稲垣吾郎の新場面写真とメイキング写真がお披露目。稲垣は本作で、私情と正義の狭間で揺れ動くジャーナリスト・桐野を演じ、杏役の河合優実が「影の主人公」と呼ぶ存在感を放っている。
本作は、「SR サイタマノラッパー」「AI崩壊」の入江監督が、2020年6月に新聞に掲載された「あるひとりの少女の壮絶な人生を綴った記事」に着想を得て描く、実話をもとにした人間ドラマ。21歳の杏は、幼い頃から母親に暴力を振るわれ、10代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅(佐藤二朗)という変わった刑事と出会う。大人を信用したことのない杏だが、何の見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。しかし、微かな希望をつかみかけた矢先、どうしようもない現実が彼女の運命を残酷に襲う。
稲垣が演じるのは、週刊誌の編集部で働くジャーナリストの桐野。多々羅が主催する薬物更生者の自助グループ・サルベージ赤羽の取材を通して杏と多々羅を見守り、彼女に小さな老人ホームで介護の仕事を紹介する一方で、実は3年前から多々羅とサルベージ赤羽をめぐるある疑惑を調査している。
場面写真には、最低限の荷物を持って家を飛び出した杏を迎える多々羅と桐野をはじめ、桐野がある衝撃的な事実に呆然とし腰を抜かす姿や、ジャーナリストとしての仕事ぶりが垣間見られる編集部での様子を活写。またメイキング写真には、喫茶店や取調室のシーンが切り取られている。
河合が“影の主人公”と表現する通り、本作は主人公・杏の人生を描く一方で、実際の事件を取材した新聞記者をベースにしたキャラクター、桐野の視点でも語ることができる。劇中では、桐野が自身の心情を語るセリフが一切ないため、稲垣は役づくりに苦労したそう。入江監督は「桐野という人物が抱える独特の居心地の悪さ、どっちつかずの葛藤みたいなものを、稲垣さんが絶妙に体現してくれました。シーンによっては無表情で、何を考えているのか見えにくいこともある。でもトータルの芝居には何とも言えない揺れが滲むんです。見事だと思いました」と、称賛を送っている。
そんな稲垣は自身の役について、「ジャーナリストとしての正義感と、ふたりとの友情と、一会社員としての下心。いろんなところで揺れ動く役なので、それが上手く伝わっていればいいなと僕も迷いながらやりました。答えがひとつではない映画ですが、いまの社会にとって必要な映画だと僕は思います」と、コメントを寄せた。杏へのサポートと、ジャーナリストとしての正義に揺れる人物像に、観客自身も「自分ならどうするか?」と考えずにはいられない、複雑な葛藤を抱えた桐野に注目だ。
「あんのこと」は、6月7日から東京の新宿武蔵野館、丸の内TOEI、池袋シネマ・ロサほか全国公開。
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