「シャンタル・アケルマン映画祭2024」6月19日開催 映画祭初上映作品3作含む15本をラインナップ、来日ゲストのトークも

2024年5月23日 18:00


映画祭初上映作もラインナップ
映画祭初上映作もラインナップ

ベルギー出身、フランスを中心に活躍した女性監督シャンタル・アケルマンの特集上映「シャンタル・アケルマン映画祭2024」が、6月19日から東京日仏学院エスパス・イマージュで開催される。本映画祭では初上映となる「ホテル・モンタレー」「」「向こう側から」を加えた全15作品が上映される。

平凡な主婦の日常を描き、映画界に革命を起こした3時間を超える大作「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」が2022年、英国映画協会が10年ぶりに更新した「史上最高の映画100」にて1位に選ばれるなど、今もなお世界に衝撃を与え、ファンを増やし続けているアケルマン。

この度、3回目となる「シャンタル・アケルマン映画祭2024」では、昨年までに上映した「ジャンヌ・ディエルマン~」を含む12作品に加え、アケルマン監督にとって重要な連作<ドキュメンタリー三部作>より、アメリカ部に根強く残る人種差別の実態を描く「」と、危険を冒してでもアメリカに渡ろうとする移民たちの運命を追った「向こう側から」、そしてアケルマンの感性が冴えわたる初期の「ホテル・モンタレー」を本映画祭で初めて紹介する。

また、<ドキュメンタリー三部作>ほか「囚われの女」「オルメイヤーの阿房宮」、遺作の「ノー・ホーム・ムーヴィー」の編集も手掛け、30年以上も公私共にアケルマンと親交があったクレール・アテルトンの初来日が決定しており、全5回、トークイベントに登壇する。外に飛び出し、社会や歴史を自らの目で見つめた、旅する映画作家でもあったアケルマン。彼女の静謐な眼差しが刻み込まれた作品群は、現代を生きる我々にとっての“世界”の入り口としてなお、ひろく開け放たれている。実験的な作品からミュージカル、文芸作まで、約半世紀にわたるアケルマンのキャリアに多面的に触れることができる絶好の機会となる。

「シャンタル・アケルマン映画祭2024」は、6月19日~7月7日、東京日仏学院エスパス・イマージュにて開催。※6/22(土)、24(月)、25(火)、7/1(月)、2(火)は休映

◆本映画祭で初上映作品

「ホテル・モンタレー」
「ホテル・モンタレー」

■「ホテル・モンタレー」(1972)
エドワード・ホッパーの絵画を彷彿とさせるフレームで描き出される、ニューヨークのとあるホテルの内部。ロビーから寝室、時々姿を現す住人たち、思わず暗闇に目を凝らしたくなる無限に続く長い廊下、そして外へ…。アケルマンと盟友のキャメラマン、バーベット・マンゴルトの魔法によって、街中にたたずむ安ホテルも非現実的な、ぞっとするほどの美が目配せする舞台へと変貌してゆく。

「南」
「南」

■「」(1999)
作家ウィリアム・フォークナージェームズ・ボールドウィンにインスパイアされ、アメリカ部での映画製作を計画していたアケルマン。しかし撮影の数日前、テキサス州ジャスパーでアフリカ系アメリカ人のジェームズ・バード・ジュニアが白人至上主義者たちによって壮絶なリンチの果てに殺害される事件が起こる。この恐ろしい事件に焦点を当てながら、アケルマンは地元の人々へのインタビューを通し、アメリカ社会に潜む憎悪とその背景を検証していく。

「向こう側から」
「向こう側から」

■「向こう側から」(2002)
9.11の同時多発テロの直後、アケルマンはメキシコを訪れ、危険を冒してでもアメリカ合衆国に越境しようとする移民たちの運命をとらえた。ひとつひとつ積み重ねられる痛みや悲しみの言葉、不条理な状況を受け入れざるを得ない人々の証言。アケルマンの眼差しによって、国境や砂漠の地の不在そのものが強烈な重みを増し、21世紀初頭の<行き止まり>を観客に内から体感させる。「東から」「」と続くドキュメンタリー三部作を締めくくる作品。

◆ほか上映作品

■「街をぶっ飛ばせ」(1968)
当時18歳だったアケルマンが、ブリュッセル映画学校の卒業制作として初めて監督、主演を務めた記念すべきデビュー作。狭いキッチンで縦横無尽に暴れ回った彼女の支離滅裂な行動は、驚くべき事態で幕を閉じる。その後の反逆的な作品群の原点とも言える破壊的なエネルギーに満ちた、あまりに瑞々しい短編。

■「私、あなた、彼、彼女」(1974)
アケルマン自身が演じる名もなき若い女性がひとり、部屋で家具を動かし手紙を書き、裸で砂糖をむさぼる。部屋を出た彼女はトラック運転手と行動を共にし、訪れた家で女性と愛を交わす。観客は彼女の道程を緊張感を持って見つめることによって、その“時間”を彼女と共有する。

■「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」 (1975)
ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、“平凡な”暮らしを続けているジャンヌだったが……。アパートの部屋に定点観測のごとく設置されたカメラによって映し出される反復する日常。その執拗なまでの描写は我々に時間の経過を体感させ、反日常の訪れを予感させる恐ろしい空間を作り出す。

■「家からの手紙」(1976)
路地、大通りを走る車、駅のホームで電車を待つ人々、地下道……1970年代ニューヨークの荒涼とした街並みに、母が綴った手紙を読むアケルマン自身の声がかぶさる。都会の寂しさと、遠く離れた家族の距離がエレガントな情感を持って横たわる、映画という<手紙>。

■「アンナの出会い」(1978)
最新作のプロモーションのためにヨーロッパの都市を転々とする女流映画監督を描く、アケルマンの鋭い人間観察力が光る一本。知人たちとの接触を挟みながら、孤独に彷徨う主人公アンナの姿と、日常に溶け込みはしない断片的な空間と時間とを通して、アイデンティティや幸福の本質が絶妙な構成で描き出されている。

■「一晩中」(1982)
ブリュッセルの暑い夜、眠りにつくことのできない人々。ある者は恋人の腕のなかに飛び込み、ある者は街に繰り出し、夫婦は語らい、そしてある者はバーでダンスを踊る……。官能的な熱を帯びた一晩の中で連結していく、数々の出会いや別れ。

■「ゴールデン・エイティーズ」(1986)
美容院やカフェが並ぶパリのカラフルなブティック街を舞台に、そこで働く従業員たち、客たちが恋模様を歌い上げるミュージカル。パステルカラーの衣装に身を包んだ登場人物たちが歌い踊るロマンティックな浮遊感と、愛に対するアケルマンの容赦ない視線が巧みにバランスされている。

■「アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学」(1989)
まるで「家からの手紙」からのバトンのように、霧の中のニューヨーク湾から始まり、夜の摩天楼が映し出される。次々にフレーム内に現れては自分のエピソードを語り、去っていく老若男女。記憶を手繰りながら時にユーモラスに、辛辣に語られていく彼らの幸福や悲しみ、それぞれの<アメリカン・ストーリー>。

■「東から」(1993)
ポーランドやウクライナ、東ドイツといった、ソ連崩壊後の旧共産主義国の都市とそこで暮らす人々の姿をとらえたドキュメンタリー。ナレーションや場所の名前をも排して、アケルマンは時折市井の人々の家庭の様子を散りばめながら、果てしない距離や文化情勢、生活様式を記録した。透徹した眼差しがその場所で確かに流れる時間と観客を近づけ、好奇心を駆り立て、映像そのものが静かに語りはじめる。

■「囚われの女」(2000)
祖母とメイド、そして恋人のアリアーヌとともに豪邸に住んでいるシモンは、アリアーヌが美しい女性アンドレと関係を持っていると信じ込み、次第に強迫観念に駆られていく。マルセル・プルーストの「失われたときを求めて」の第五篇、「囚われの女」の大胆で自由な映像化。嫉妬に苛まれ、愛の苦悩に拘束される虜囚の境地をアケルマンは洗練された表現で描写する。

■「オルメイヤーの阿房宮」(2011)
アジア奥地の河畔にある小屋で暮らす白人の男オルメイヤー。彼は現地の女性との間に生まれた娘を溺愛し外国人学校に入れるが、娘は父親に反発するように放浪を重ねていく……。「地獄の黙示録」のもとになった「闇の奥」で知られるイギリスの作家ジョゼフ・コンラッドの処女小説を脚色。

■「ノー・ホーム・ムーヴィー」(2015)
ポーランド系ユダヤ人であるアケルマンの母親の日常をアケルマン自身が撮影、ブリュッセルのキッチンで、時にはテレビ電話越しの会話で語られるのはささやかな日々の出来事や家族の思い出、そしてアウシュヴィッツ収容所で過ごした母の記憶。母は編集作業中に亡くなり、アケルマンも本作が完成した後にこの世を去った。深い痛みと愛情に満ちたドキュメンタリー。

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