少女が“人生最期の1日”に天使と出会う 「祝日」新人俳優・中川聖菜が経験した、日記を使った役づくり
2024年5月18日 20:00
優しかった父が死に、母が姿を消し、ひとりぼっちになった少女が天使と出会う物語「祝日」(公開中)の初日舞台挨拶が、5月17日に東京・シネマート新宿で開催された。本作が初の主演映画となった新人俳優・中川聖菜をはじめ、岩井堂聖子、芹澤興人、中島侑香、伊林侑香監督が登壇した。
「祝日」は、「幻の蛍」でデビューを果たした富山県出身の伊林監督と、第33回フジテレビヤングシナリオ大賞で佳作を受賞した脚本家・伊吹一氏が再タッグを組み、全編オール富山ロケを敢行した作品。第2回横浜国際映画祭でプレミア上映され、5月10日からの先行上映(富山県の4館)で、ミニシアターランキングの4位に入るなど、話題を呼んでいる。生きることを諦めかけた少女が、“人生最期の1日”に、数奇な人々と出会い、変わっていくさまを描く。
本作が生まれた経緯を、伊林監督は「デビュー作は『幻の蛍』という映画になりますが、その作品の編集中に今回の企画ができました。2年前はコロナ禍が明ける少し前くらいで、世の中というか、皆さんの気持ちも、未来もちょっと暗いような雰囲気で。どこか光を差すような作品をつくれないかということで、この企画が生まれました」と明かした。
200人以上からオーディションで選ばれ、主演に抜てきされた中川は、「初の主演映画で、このような場所で舞台挨拶ができること、すごく嬉しく思います」と、緊張気味に話し始める。中川が「選ばれた時はとてもビックリしました。ですが、一生懸命頑張ろうと意気込んだのを覚えています」と振り返ると、伊林監督は「中川さんは、お芝居を見た時から、はかない雰囲気や、魅力的なお芝居が上手で。引き込まれるというか、目で追いかけてしまうようなお芝居が上手だったので、今回も暗い過去を持つ、奈良希穂役にピッタリだと思い、お願いしました」と伝えた。
撮影当時13歳だった中川との共演について、岩井堂は、「『幻の蛍』に出演させていただいていて。その時に聖菜ちゃんと同じシーンがあって」「監督が目で追うような女優さんとおっしゃっていましたが、主人公の持つはかなさ、繊細な部分を大事にしていているなというのを私も感じていて。初主演だなんて思えないような、堂々とした佇まいでした。学ぶことがたくさんありました」と述懐。さらに、「毎日、役として日記を書いていたと聞いた時は、そうなんだとグッときました。絶対に一緒に頑張って、成功させたいなと思いました」と語った。
そんな日記を使った役づくりの意図について、伊林監督は「『幻の蛍』でも、(主演の野岸紅ノ葉に)役になりきって日記を書くということをしていただいて。今回も天使と会う『祝日』の日を撮影初日に設定して。カウントダウンのようにして日記を書いていただいたので、余計入りやすかったという感じがあったのではないでしょうか」と尋ねると、中川も「はい!」と笑顔で返していた。
本作で天使を体現した岩井堂は、「皆さんが天使と聞いてイメージするのとは違う、変わった天使をやってまして。私自身、台本を読んで難しそうだなと思いました。ですから本当に細かいところを監督とその都度、相談させていただいて。監督や皆さんと共有している天使の裏設定みたいなことをいろいろと決めて。それはネタバレになるので多くは言えないのですが、それをみんなでシェアして、という感じで。たくさん相談しました。なので、監督と一緒につくってもらったなと思いました」と、感謝を伝える。
芹澤が演じるのは、ある理由で、喪服が脱げなくなったアフロさん役。「自責の念というか、過去に脱げない理由があって。心が壊れちゃうというところまでいった男だと思いますが、逆を返せば、喪服を脱がないでいたからこそ、心が壊れないでいられたんだなと。そういうことを思いながらやっていましたね」と明かす。忘れられない人がいるカフェの店員に扮した中島は、「映画に出てくるシーンとしてはそんなにないですが、ダンスを踊るシーンがありまして。それが社交ダンスなんですよ。しかもひとりで踊ると書いてあって。このシーン、どうなるんだろうと思いながら、撮影現場に行ったことを思い出します。初めての社交ダンスを踊って、不思議な空気になりましたね」と振り返った。
さらに中島は、名優・西村まさ彦との共演について、「オーラがすごかった」と振り返る。「初日にしっかり挨拶をして。(役者としての心得などを)たくさん盗んでいきたいぞと思って。おはようございますと近づいて。まだ映画の撮影が2回目くらいの時だったので『役者ってどうしたら演技が上手になるんですか』と思い切って聞いたら、『それはもう、相手の人がいるなら、相手の人に任せちゃえばいいんだよ。自分ですべての責任を負わなくていいんだよ』と言われて。その時はちょうど役に対していろいろと考えすぎていた時だったので、それで心が楽になりました」といい、中川も深くうなずいていた。
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