濱口竜介監督、「悪は存在しない」でスタッフを主演に抜擢「見る目があった」と笑顔
2024年4月26日 14:19
濱口竜介監督が4月26日、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で行われた第80回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した映画「悪は存在しない」の初日舞台挨拶に、キャストの大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁と共に出席。当初スタッフとして参加していた大美賀を主演に抜擢した経緯を明かした。
本作は、「ドライブ・マイ・カー」でアカデミー国際長編映画賞、カンヌ国際映画祭脚本賞、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞するなど国際的に高く評価される濱口監督による最新作。舞台となる自然が豊かな高原に位置する長野県の水挽町に、グランピング場を作る計画が持ち上がったことから町内に動揺が広がっていくさまを描く。
主演に抜擢された大美賀は、水挽町で代々暮らす巧役を演じた。初日舞台挨拶で上映後の観客の前に立った大美賀は「これを超えるハイライトが、今後の自分に訪れるかはちょっとわからない。もう迎えてしまったのではないかと思っています」と率直な気持ちを明かし、会場を笑わせた。
濱口監督は「図太い」と大美賀の印象について切り出し、「今日も戦隊モノで言えばレッドの位置に立ちつつ、そういうのもちゃんとできちゃう人なんだなと。それは頼む前には知りませんでした」とにっこり。「この映画を作る前にリサーチをしていて、その時はドライバーとして入ってもらっていた。カメラの前に立ってもらったりしていると『あれ、いいかも』という気持ちになって、ここまで来ました」と台本を書くための取材に同行してもらっているうちにピンと来たそうで、「見る目があったなと思っています」と大満足の表情を浮かべていた。
「濱口監督から電話があった」とオファーの瞬間を振り返った大美賀は、「『驚かないで聞いてください』と。『何かやらかしたのか』と思った」と話して、再び会場も大笑い。「『出る側に興味がありますか』と言っていただいて、当然びっくりしたんですが、こんな貴重な機会はないということで参加しました」と喜びをにじませると、濱口監督は「その電話の中で(大美賀は)『やります』と決めた。肝が座っている」とその度胸を称えた。司会から「大美賀の演技はどうだったか」と問われた会場は熱い拍手で応えるなど、思い切った起用ながら観客も大いに心を動かされた様子だった。
本作は「ドライブ・マイ・カー」で音楽を手がけたシンガーソングライターの石橋英子が、濱口監督へ映像制作のオファーをしたことをきっかけに誕生した。ステージにはサプライズで石橋から手紙が届く場面もあり、「私の人生にとって大切な作品となりました。参加してくださったスタッフの皆さま、キャストの皆さま、お一人一人のそれまでの人生、すばらしいお仕事によってすばらしい作品になった」と石橋による感謝のこもった手紙を渋谷が代読した。
ひと足先にフランスで公開となり、濱口監督によると「すごく好意的に受け入れてくれている印象がある。2週間で7万人くらい入っているらしい」とのこと。濱口監督は「私自身もフランスで観ていて、一人一人が存在として輝いている印象があった。自分でも感動した。一人一人の有り様、仕事を観ていただきたい」と呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。
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