端正な容姿を武器に、ユダヤ人青年が誘惑したナチス将校の妻たちを無慈悲に捨てる… 愛と復讐の狭間で葛藤するR15+映画「フィリップ」予告
2024年3月21日 12:00
1961年に発刊後、その内容の過激さから、すぐに発禁処分となった小説を映画化した「フィリップ」の予告編と場面写真がお披露目。映像には、ユダヤ人としての素性を隠して生きる美青年フィリップが、ナチス将校の妻たちを次々と誘惑することで、ナチスへの復讐を果たす姿が切り取られている。
物語の舞台は41年、第二次世界大戦、ナチス支配下のポーランドとドイツ。ワルシャワのゲットーで暮らすポーランド系ユダヤ人のフィリップ(エリック・クルム・ジュニア)は、恋人サラと出かけた舞台で、ナチスの銃撃に遭い、サラや家族、親戚を目の前で殺される。2年後、フィリップはフランクフルトにある、高級ホテルのレストランで、ウェイターとして働いていた。自身をフランス人と偽り、戦場に夫を送り出し孤独にしているナチス将校の妻たちを次々と誘惑し、ナチスへの復讐を果たしていた。孤独と嘘で塗り固めた生活のなか、彼はプールサイドで知的な美しいドイツ人のリザ(カロリーネ・ハルティヒ)と出会い、愛し合うようになる。しかし戦争は、容赦なくふたりを引き裂いていく。
予告編では、「これは復讐だ」と呟くフィリップが、自らの端正な容姿を武器に、次々とドイツ人女性に近付き、無慈悲に捨てるさまを映す。「ドイツの男は全滅する」「君の愛する人も死体になる」と呟くフィリップ。ある日、いつものように次のターゲットを物色していた彼は、リザと出会い、ふたりは穏やかな時間を過ごすようになる。リザは「あなたはいつも怯えてる」と心配し、ついにフィリップは「俺はユダヤ人だ」と自らの素性を告白。しかし時を同じくして、同僚がドイツ人女性と交際したという罪で絞首刑に処される場面に出くわす。「ふたりでここから逃げ出そう」――復讐から始まった思いがやがて、本物の愛に変わっていく。映像は、禁断の愛と復讐の狭間で葛藤するフィリップが、何かに銃口を向ける、緊迫したシーンで締めくくられている。
場面写真には、ナチス・ドイツを賞賛するパーティが開かれるなか、総統ヒトラーへの賞賛を表す「ハイル・ヒトラー」のジェスチャーをする人々に囲まれながらも、固く口を閉じ、真っ直ぐ前を見据えたフィリップを活写。その姿は、決して消えることのない「ナチス・ドイツへの抵抗」の意志を感じさせる。
原作は、ポーランドの作家レオポルド・ティルマンド(1920~85)の自伝的小説として、ポーランド当局の検閲後、大幅に削除されたものが61年に出版された「Filip」。ティルマンドが、42年にフランクフルトに滞在した実体験に基づいて書かれている。発刊後すぐに発禁処分となり、長い間、日の目を見ることがなかったが、2022年にオリジナル版が出版された。
監督は、90年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ作品のプロデューサーとして、後期代表作である「カティンの森」「ワレサ 連帯の男」、そして遺作「残像」まで製作を務め上げたミハウ・クフィェチンスキ。映画化の理由のひとつとして、「ポーランドで愛する人を亡くしたユダヤ人の主人公は、そのような状況下で何を感じるでしょうか? 私はティルマンドの本を心理的で緻密な映画にし、トラウマから感情が凍り付いた男の孤独を研究することに決めました」と明かしている。
「フィリップ」は、6月21日から東京の新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開。R15+指定。
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