「るろ剣」「鬼滅」の原点 時代劇アニメの歴史と魅力、これからを會川昇×虚淵玄が語る【第2回新潟国際アニメーション映画祭】
2024年3月20日 14:00
新潟市で開催中の「第2回新潟国際アニメーション映画祭」で3月19日、時代劇をテーマとしたオールナイト上映がシネ・ウインドであり、脚本家の會川昇氏と虚淵玄氏による「時代劇アニメの魅力、ファンタジー全盛期のいま作られるべきものとは?」と題したトークイベントが上映前に行われた。
虚淵氏は体調不良のためオンラインでの登壇となった。大ヒット作「鋼の錬金術師」で知られる會川氏は、この日上映された「劇場版 戦国奇譚妖刀伝」 (1989/山崎理監督)、「機巧奇傳ヒヲウ戦記(21話)」(2000/アミノテツロ監督)の脚本を担当し、時代劇に対して深い知識を有している。
「もともと日本映画の歴史を考えれば1950~60年代はほぼ時代劇の歴史だった。僕より先輩の映画評論家の方々はかなりの知識を持たれているのは当たり前。今では、テレビの時代劇はほとんどなく、映画もめったに作られなくなった。本数として考えれば、テレビアニメの方が多いかもしれない。それは皆さんが時代劇だと捉えていない作品も含まれる。『るろうに剣心』は時代劇だと思われていると思いますが、例えば『犬夜叉』や『鬼滅の刃』を時代劇と認識される人は少ないかもしれない。戦争前まではすべて時代劇でいいと思っている」「『ゴールデンカムイ』も完全に時代劇。土方歳三だって出ている」と語る。
「魔法少女まどかマギカ」原作・脚本「PSYCHO-PASS」原案・脚本で知られる虚淵氏は、昨年放送された時代劇アニメ「REVENGER」を手がけた。
司会を務めた映画祭プログラム・ディレクターの数土直志氏から時代劇への思い入れを問われると、子ども時代に見たという「カムイの剣」を挙げ、「当時としてはものすごくスタイリッシュな映像で心に残っている。日本史観がゆがむような作品だった。刀と忍者とスタイリッシュアクションへの憧憬」と紹介。そして、會川氏による「妖刀伝」があこがれのコンテンツだったそうで「他のアニメにない画面の暗さ、シリアスさ。日常がありながら戦争映画と同じように人が死にうる世界観の中でのドラマツルギーに惹かれた」といい、「学園物よりは、僕は戦場や極限状態の方が話が作りやすい」と現在まで影響していると明かす。
會川氏は「子どもの頃からいつも時代劇を見ていたわけではないが、大河ドラマなどをテレビの一つのコンテンツとして受容したり、人形劇で『新八犬伝』『真田十勇士』を見ていて、『仮面ライダー』や『マジンガーZ』と同じよう面白いコンテンツとして受け取っていた。中学校に入るころにはもう時代劇は古く、衰退していくコンテンツという思いがあったが、SF小説を読むようになり、平井和正さん、小松左京さんなどの作家さんが時代ものに手を出すようになる。筒井康隆さんも。そういった時代物SFが異常におもしろかったが、でもびしっとはまるアニメはなかった。しいて言えば『どろろ』かな」と振り返る。
時代劇アニメーションは多くの傑作、名作が存在しているにもかかわらず、「ロボットアニメや今のなろう系ファンタジーなど、普通一つ成功すると追従する作品がたくさんできるが、時代劇にはそういう波が来たことが一度もない」と現代の時代劇を分析する會川氏。そして、「お金がないから時代劇は作れなくなったと言われるが、アニメが一番向いていると思う」と話題は時代劇アニメーションの歴史に移行する。
数々の東映動画の傑作を紹介しながら、「日本の長編アニメでは時代劇が一種の企画の宝庫だと思っていた。しかし東映さんは時代劇アニメの決定版は作らないままだった。そこが面白い」と會川氏が述べると、「実写の時代劇を作っていた方が東映動画に来て、その方たちは『サイボーグ009』『マジンガーZ』『北斗の拳』だったり、時代劇ではないけれど、敵味方がいて最後は武器で決着をつける時代劇的作法、時代劇だから許される行動が『ワンピース』まで受け継がれている』と虚淵氏。
また、自身が時代劇アニメーションにかかわる際の、制作面について會川氏は「自分が時代劇を書くようになって一番惹かれたのは、史実を調べることができて、そこから何かを見つけて話を広げること、伝記的な作りができる。それが気持ちが良い」と時代劇ならではの楽しさを語る。一方虚淵氏は「時代考証の大変さ、生半可な気持ちじゃ作れないという気持ちがある。例えば僕は武侠ものは自分は中国人じゃないし、外様だから怒られはしないだろうという、甘えというかいたずら心が出しやすい。でも時代劇はそれに対して妙な責任感を感じてしまう」と作り手の気持ちを吐露する場面も。
その後もさまざまな作品の時代やキャラクター設定、作画や様々な話題に及ぶ。「実は1997年からしばらく映画の興収トップは時代劇で、それは『もののけ姫』。みんな『もののけ姫』を時代劇だとは思わないけれど、ちゃんと時代考証もされている。こういう作品がヒットするなら、時代劇アニメは幅があるのでいいと思う。そして、その後に記録更新したのは『鬼滅の刃』。その記録は破られていない。時代劇アニメにポテンシャルがない、とか構えちゃうのは作り手の思い込みで、本当は観客から求め続けられているのかもという期待があります」と會川氏はまとめる。
この日のオールナイト上映は完売、満席の観客を前に熱を帯びたトークが展開され、トーク後半には、虚淵氏とともに「REVENGER」脚本を担当した大樹連司氏も参加。「時代背景として女性を活躍させることに難しさがある」という課題もあるそうだが、新しい時代劇アニメーションへの期待や展望を語り合った。
第2回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケットは絶賛発売中。公式HP(https://niaff.net)でのクレジットカード決済、または上映会場にて現金でも購入可能(※一部例外もあり)。チケット販売、プログラム、会場など詳細は公式HP、SNSで随時告知する。
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