「オッペンハイマー」ノーラン監督×「ゴジラ-1.0」山崎貴監督の特別対談が実現! 渡辺謙ら著名人のコメントも
2024年3月15日 19:00
第96回アカデミー賞(2024)の作品賞を含む最多7部門での受賞を果たした「オッペンハイマー」(3月29日公開)のクリストファー・ノーラン監督と、視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」の山崎貴監督(公開中)のスペシャル対談(https://youtu.be/YY0S68nwOOM)が実現。あわせて、各界の著名人からのコメントが披露された。
「オッペンハイマー」を「パーフェクトに近いスペクタクル」と讃える山崎監督。「ゴジラ-1.0」を「とても刺激的で細かいこだわりが感じられる、観る者を引き込む映画」と語るノーラン監督。そんな2人の対談は、山崎監督の「知的好奇心を刺激されました」という感想から始まる。
山崎監督「パンドラの箱を開けてしまった人間が、どのような社会的な立ち位置でいたのか。時系列を組み替えながら描いていて、ハードなテーマのエンターテインメントになっている。凄く面白い、素晴らしい作品。オッペンハイマーが残酷な幻影をみるという、栄光と悲惨さが同じ画面に収められている作り方が凄い」
山崎監督の評価に、ノーラン監督は「私が物語の中で興味があるのは頭脳明晰な人たちが世界を理解し驚くべき創造性を飛躍させテクノロジーを用いてどのようなことを可能にするのか、そしてその裏に潜む恐ろしい暗示です。そのコントラストを映画に映し出し観客のみなさんに直で感じてもらいたい」と応じ、「開発を進めていく先に待ち受けている恐ろしさの片鱗が既に見えているわけです。しかし時代の状況ゆえに行動するしかなかった。その緊張感を観客のみなさんに体験してほしいと思いました」と述懐している。
「悪い人間、素晴らしい人間を決めつけていない、その両方が渾然一体となっている」描写に驚嘆したとする山崎監督。
ノーラン監督は「それは物語を伝える上で大切にしたことでオッペンハイマー役のキリアン・マーフィともよく話し合いました。観客にはオッペンハイマーを裁くのではなく理解してほしかったのです。みなさんにこの人物の両面を体験してもらい、彼がした選択について自分だったらどうするか考えてみてほしかった。自分とは考えや立場が全く違う人の、考えや思いがわかるというところが映画の魅力です」と、どう受けとめるかは観客それぞれの判断に委ねることを最優先したとコメントしている。
やがて「オッペンハイマー」に触発された山崎監督が「日本が返答の映画を作らねばならない」と宣言。ノーラン監督は「アンサー映画を作るのであれば山崎監督以上にふさわしい監督は思い浮かびません。ぜひ実現していただけたらと思います。これからも山崎監督の作品を楽しみにしています」と笑顔で応じた。
また、ノーラン監督は、映像へのこだわりについて「観客の感覚に訴えかける映画を常に作りたいと思っています。今まで多くの映画をIMAX用の70ミリフィルムで撮影してきました。驚くほど鮮明で色の再現度が高いからです。大きなスクリーンに投影するとスクリーンの枠が消え映画に没入することができます。劇場の様々なサウンドシステム 音響や音楽との融合によって観客を物語に引き込むことができるのです。こういった没入感を これからも映画制作で大事にしていきたいです」と説明。山崎監督は「すごい伝わってきました。IMAXならではの作品だと思います」と話し、対談を締めくくった。
「クリス・ノーラン」僕にとってだけでなく、多くの観客の脳内をかきまわす監督である。
ノーラン監督の作品には常に知的好奇心を刺激される。 パーフェクトに近いスペクタクルを完成させながらも、 パンドラの箱を空けてしまったオッペンハイマーという科学者の、善悪が渾然一体となった人間性を浮かび上がらせ、彼の思惑や社会的地位を、時系列を組み替えハードなテーマながらエンターテインメントとして見事に創り上げた。 あの時代に何が起こっていたのか目撃して欲しい。
凄まじい映画体験。人類が悪魔を生み出す瞬間を全身震えながら目撃する。
映画の中でいかに物語を伝えるか。数奇な運命に翻弄された実在する人物を紹介するか。
映画史に燦然と輝く「市民ケーン」に匹敵する偉業をクリストファー・ノーランは成し遂げた。音と光のインパクトでオッペンハイマーの心奥に飛び込む導入部から、核分裂の連鎖反応のようにぶつかり火花を散らす華麗なる演技陣の対決が続く終盤部まで、ノーランの緻密な映画力学に圧倒される。日本の映画人としては、この大傑作に応ずる形で、破壊の雨(レイン・オヴ・ルイン)を浴びた広島・長崎の人々の姿を克明に描く義務を、震えが来るほど強く感じた。
広島・長崎への原爆投下に対する評価。魔女狩りのように吹き荒れた赤狩り。そして最先端科学と軍事の接合(デュアルユース)。 アメリカの戦後における3つのダークサイドに、ノーランは正面から切り込んだ。
「核兵器は狂気の天才のしわざ」なんて逃げ道は、この映画にはありませんでした。
天才物理学者の一生を彩る才気と驕りと判断ミス、静かな没落。悍ましい兵器の開発をつぶさに描き、主人公の視点から遠く離れないことでむしろ破壊をいまだ正視できないアメリカの矛盾と、本人の呵責を鮮やかに炙り出した力作。
心が深く、えぐられました。物理学が世界を変えていく、それが物理学者の生活感情に深く結合している。僕が漠然と感じてきたことが、非常にリアルな体験へと変換され、一挙に心になだれ込みました。僕は、なすすべがありませんでした。本作は物理学者の心に迫る映画であると同時に、人類に問いかける、傑作です。
人類史上初の原爆製造の責任者オッペンハイマーの生涯をクリストファー・ノーラン監督が描く。前半は徹底した機密の実験成功までをリアルに描く。成功に沸くなか、オッピーの心の底には「自分は死神」という悩みが始まる。トルーマン大統領に面会すると彼はその悩みを告白する。トルーマンはこんな弱虫は二度と連れてくるなと言い放つ。後半は、原爆から水爆に進もうとする米国の核政策に抗い、国側の政治家たちと核の非人道性を理解する科学者の対決となって、ついには原子力界から追放される。これは核なき世界が遠のきつつある現在の世界の根本問題にもつながる。ここにノーラン監督の政治家の責任を追求する秘めたメッセージが感じられるのである。
あれだけの悲劇を経験してもなお私達は手にしていないものがある。目を逸らし、面倒くさがり、遠ざけているもの。それは「政治」への関与だ。馬鹿馬鹿しい政治家の権力闘争は放置され続け、科学を暴力へと貶めていく。日本人だからこそ、この映画を見るべきだ。
『オッペンハイマー』は『アラビアのロレンス』を想起させる。どちらも、明晰で鋭敏で繊細で、しかし評価をめぐって物議を醸した人物の映画だ。謎めいた化学記号のようなその肖像を、クリストファー・ノーランはめざましい手腕で描き上げる。イメージはもちろんのこと、情感やオブセッションを「積み重ねる力」に眼をみはった。
この映画は衝撃の連続でした。天才の見ている世界はこうなっているのか、と思わせる美しい映像と音楽の世界観に。歴史の大きな波と人々の思惑が重なり合ったストーリーの重厚さに。世界を変える未知の技術への興奮とその影響力への恐れは、開発者の手を離れたが最後、それらの運命を決めることはできないのでしょう。
オッペンハイマーは英雄ではなく、矛盾に満ちた人間である。
数奇な理論物理学者ロバート・オッペンンハイマーに聞こえていた発明の漣(さざなみ)は、想像し難い原爆という全てを飲み込む大波となり、歴史という海原を超えて我々の魂にこだまし、放射能という戦争が生んだ深い痕跡を残してゆく。忘れられない傑作。
世紀の発見が人類の未来を永遠に変えたばかりか、国にも見放された男の混乱と苦悩をかつてない映画的表現で描き、観客を物語に没入させる。 オッペンハイマーの原爆開発を美化するのではなく、想像の範疇を超えた悲劇と後悔に苛まれた研究者の運命を描く“反戦映画”。
マンハッタン計画を時系列で捉えると単調な人間讃歌になる.予期はできたが予期せぬ結果,その利用と称賛,自己批判,これは研究者当人以外には理解し難い内的葛藤がある.その内的葛藤に切り込んだストーリーを時系列を絡み合わせて提示することで作品としての旨みが作り込まれている.難解か?そんなことはない.何より単純に原子爆弾の圧倒的エネルギーの暴力性が音と光で満ち溢れ,我々の脳裏に様々なカタルシス,畏怖や悲しみを想起させる.
物理学をここまでスリリングに描いた映画は前代未聞だ。しかも極秘の開発プロジェクトの内部を、インサイダーの視点でぼくらに見せてくれる。見事なセリフの刺激は絶えず脳を覚醒する。人類初の核兵器を作ったオッペンハイマーたちこそ、最初のヒバクシャにもなったことが、身にしみる。
日本での公開は全世界より大きく遅れた。日本人には過酷過ぎるのか?
否!強烈な反戦映画であり、繊細な科学者の葛藤を想像を超えた編集と大迫力の音響で描くIMAXで見るべき伝記映画などこれまで存在しなかった。
ナチスよりも先に原爆開発に成功することは、ユダヤ人であるオッペンハイマーにとって差別との戦いでもあった。ただその「大成功」は永続的な苦しみの拡大再生産の始まりだった。そこに至るまでのオッペンハイマーの心の動きを追体験できるのが、この映画だ。
世界を崩壊させるかもしれない、恐ろしく、興奮する場面に居合わせた。
神の力を手に入れようとする人間、男たちの、情熱と、欲望と、その尊大さと卑小さに戦慄する。その美と恐怖と自己中心的な思考を残酷なまでの緻密さで織りあげ、私たちに体感させる。
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