本作は、人生に悩む医者と余命宣告された患者の2人が、人は何のために生き、何を残すのかという永遠の問いの答えを求めながら各地を巡るヒューマンドラマ。監督は、映画「余命1ヶ月の花嫁」「月の満ち欠け」「母性」などを生み出した廣木隆一、音楽は大友良英が務める。
妻夫木が人生に悩む内科医・佐倉陸役、渡辺が陸と旅をする余命宣告を受けている男・成瀬翔役として登場。渡辺は、7キロの減量をする“役作り”で本作に挑んだ。
佐倉陸(妻夫木)はたぐいまれなる才能を持った外科医だったが、あるときからメスを握れなくなる。精神的にも追い詰められた結果、外科を追われ内科医となった。入院患者と向き合う日々が続く中で、余命宣告されたがん患者である成瀬翔(渡辺)の担当医に。繰り返される手術と抗がん剤治療にうんざりした成瀬は陸に「殺してくれよ」と言った。陸はあっさりと「いいですよ」と。「でもその前に、やりたいことはありませんか」。そして2人は病院を抜け出し、バイクで旅に出た。キャンプをしたり、生まれた街へ行ったり、初恋の人に会ったり。成瀬はたびたび体調を崩すが、主治医である陸がついているから安心だった。しかし、陸は密かに「ある薬」を持っていたのだった…。
『生きとし生けるもの』北川悦吏子/文春文庫「生きとし生けるもの」は、5月6日の午後8時~9時54分にテレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送で放送。3月6日には、文藝春秋よりノベライズ文庫が発売される。コメントは以下の通り。
(C)テレビ東京今回、
北川悦吏子さんとご一緒するのは約20年振りとなりました。そんなに月日が経っていたとは全く想像もつかなかったのですが、終わってみたらこの作品で再びご一緒するのは、どこか運命だったのではないかと思うくらい、僕にとって素晴らしい出逢いとなりました。死生観というものは人それぞれにあると思います。だけど、こんなにも真っ向からぶつかった作品はなかなかありません。生きる上での、喜び、哀しみ、希望、絶望、その全てを受け止めて僕は陸と共に旅に出たいと素直に感じました。いえ、出なければいけないという、どこか使命感にも近いものを感じていたのかもしれません。それくらい僕は北川さんの覚悟を感じましたし、北川さんは僕を信じて託してくれたのだと思います。想いとは相手を思う心。そんな想いが溢れたこの脚本で生きれたことに喜びを感じています。
渡辺謙さんにはとにかく感謝しています。謙さんがいなければ僕は陸になることはできなかったでしょう。役としてだけでなく、常に僕と向き合って一緒に闘ってくれた。オッサン(成瀬)と一緒にいることが当たり前になっていた僕は、撮影が終わった今、心にポカンと穴が空いたような状態です。スマートだけど、どこかチャーミングな謙さんはまさにオッサンそのものでした。そんなオッサンこと、謙さんが僕は大好きです。この作品で謙さんと一緒に旅をできたことは僕の財産となりました。
こんなにも役と共に生きた感覚を得られたのは久しぶりでした。生きることは何なのか、僕自身も陸と共にオッサンに導いてもらったような気がします。皆さんもこのドラマの中で、陸とオッサンと共に一緒に旅をしてもらいたい。そして、ドラマの中で精一杯生きる僕たちの想いを体感してもらいたい。きっと皆さんにも、幸せの瞬間が訪れることを確信しています。
(C)テレビ東京医者と死に行く患者の話だという。
私は、かねてから医療に関するドラマを固辞していた。
自分の体験から本当に苦しむ患者の気持ちはドラマでは描けないと感じていたからだ。
そこからメールのやり取りが数回続いた。
北川さんは難病と向き合い、独特の死生観を持たれていた。彼女の感じてきた「生きること」「死に向かうこと」それを演じてみたいと思った。
ある時は、薬の袋の裏に台詞を殴り書きしたという。
彼女流の軽いやりとりの向こうに浮きあがる“死”中々にハードルの高い作品だった。
生きる事の苦しさ、喜びを感じながら
北川悦吏子の「死生観」を体現した。
Photo by LESLIE KEE点滴を見つめる生活を続けた。なぜ、生きなければならないのか? また死を迎える人は、なぜ死ななければならないのか?生きるって何だ?死ぬって何だ?人間ってどうだ?
この15年来、脚本家としてどうしても書きたいと思っていたテーマだ。
書いてみたら意外にも愛の話になった気もする。わからない。
この物語に、生と死に関してはっきりした結論があるのかどうかもわからない。答えなんてない中で、私たちは、ただ、生き続けるのかもしれない。
どうせ100年経ったらこの世は総入れ替え。
今、この世界に生きる、どこかの誰かの胸に届くことを願って。
【番組プロデューサー・
祖父江里奈(テレビ東京 制作局ドラマ室)】
青春時代にテレビに食い入るように観ていた北川さんのドラマの数々。キラキラした恋の物語は永遠の憧れとして心に残っています。そんな北川さんとご縁あってお会いすることができ、「テレビ東京の60周年のドラマを書いて頂きたい」とお願いしたところ「ずっとやりたかった企画がある」と。ラブストーリーの神様がずっと温めていた企画とは?と思っていたら、まさかの「男2人の医者と患者のロードムービー」でした。テレビ東京でやるなら普段やらないジャンルのものを書きたい、とのこと。
何年も難病と闘いながら執筆を続けてこられた北川さんが、ご自身の経験と募る思いと言葉の数々を込めて産み出したこの大切な作品をテレビ東京に托してくださったのは本当に嬉しく、また身が引き締まる思いです。生と死を描く物語でありながら、どこか爽やかさや瑞々しさを感じさせるのは北川さんならでは。
それを
妻夫木聡さん、
渡辺謙さんというこれ以上ないお二人に演じていただけることになりました。
妻夫木聡さんと
北川悦吏子さんの「オレンジデイズ」のタッグ再び、となれば私を含め多くの人々が心躍るはず。そして、悩み抜いた末、出演を決めてくださった
渡辺謙さんには感謝してもしきれません。さらにこの物語を
廣木隆一監督がご自身の地元・福島で撮影してくださいました。風光明媚な景色の中で撮られた数々のシーンはどれも叙情的で見応えがあり、また監督を慕う多くの才能あるスタッフが集結しテレビドラマとしては最高のクオリティに仕上がりました。
きっと多くの人の心に響く、普遍的な物語です。是非ご覧ください。