妻夫木聡×安藤サクラ×窪田正孝! 石川慶監督が平野啓一郎「ある男」を映画化、豪華キャスト9人結集
2021年8月31日 08:00
妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝らが共演し、石川慶監督(「愚行録」「蜜蜂と遠雷」)が芥川賞作家・平野啓一郎氏の小説を映画化する「ある男」が、2022年に公開されることがわかった。3人に加え、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、仲野太賀、真木よう子、柄本明という豪華キャストが出演する。
原作は、映画化された「マチネの終わりに」に続く作品として、18年に平野氏が発表した同名小説。第70回読売文学賞を受賞し、累計発行部数19万部を突破した。自分ではない全く別の人間として生きてきた“ある男”の真実に、主人公の弁護士・城戸章良が迫っていく姿を描く。
映画版のメガホンをとるのは、第73回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ・コンペティション部門に選出された「愚行録」や、第74回毎日映画コンクールの日本映画大賞を受賞した「蜜蜂と遠雷」の石川監督。「リンダリンダリンダ」「聖の青春」で知られる向井康介が脚本を担当し、「愚行録」に続き石川監督と再びタッグを組む。
城戸は、かつての依頼者である谷口里枝から、彼女の亡くなった夫・大祐の身元調査という奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経験後、子どもを連れて戻った故郷で大祐と出会い、再婚。新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日突然、夫が不慮の事故で命を落とす。そして大祐の法要の日、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が現れるが、遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と衝撃の言葉を放つ。大祐として生きた“ある男”は一体誰だったのか、なぜ別人として生きていたのか――。城戸は彼の正体を追うなかで様々な人物と出会い、衝撃の事実に近付いていくが、いつしか城戸の心にも、他人として生きた男への複雑な思いが生まれる。
城戸を演じる妻夫木は、石川監督とは「愚行録」「イノセント・デイズ」に続く3度目のタッグとなる本作で、初の弁護士役に挑む。里枝に扮するのは、「百円の恋」「万引き家族」の安藤。NHK連続テレビ小説「エール」に出演し、「決戦は日曜日」が待機する窪田が、大祐を名乗る謎に包まれた男を体現する。さらに清野は“本物の”大祐の元彼女・後藤美涼、眞島は“本物の”大祐の兄・恭一、小籔は城戸の同僚・中北、仲野は“本物の”大祐、真木は城戸の妻・香織、柄本が戸籍交換ブローカーの小見浦憲男を演じる。日本映画界を代表する実力派キャストが顔をそろえた。
「ある男」は21年1月25日~3月1日に撮影され、22年に全国で公開。なお、原作「ある男」の文庫版が、9月1日に文春文庫から発売となる。キャスト陣、石川監督、原作者・平野氏のコメントは、以下の通り。
人間のアイデンティティとは何かを問い詰めるこの作品との出会いは、自分の人生を見つめ直す良いきっかけとなりました。人生に正解はない。かといって間違いもない。どんな答えであってもいいと思う。だから恐れずに向き合って欲しい。見てくださった方にとって、この作品が人生の道標のような存在になるのであれば僕は幸せです。
わたし自身がこの作品がどんな映画なのか、なかなか想像ができません。ミステリーと一括りにしてしまうのは勿体ないなと思いつつラブストーリーなのかサスペンスなのか……と問われるとこれまたわかりません。でも現場では、ジャンルにとらわれず人間模様をやさしく繊細に、且つ淡々とシンプルに描いていたように思います。久しぶりの映画、石川監督のもと、たくさん笑ってたくさん泣いて、苦しみながらも楽しく撮影させていただき、あ~わたしは現場が好きだ!と再確認しました。この作品だったからそう感じられたのだと思います。公開が楽しみです。
ある男の静寂な心の中にうごめく「おぞましいナニカ」をずっと感じながら演じてました。人の皮を被った怪物が身体の中からずっと自分だけをみている。そんな支配されて壊れきった空っぽの心を里枝が少しずつ溶かしていく。里枝役のサクラさんはやはりとても刺激的で芝居の面白さ、やりがい、その答えをどこまでも追求していきたい衝動に駆られました。ある男が見て頂く方々にどんな感情を残すのか今から楽しみでなりません。
今、日本映画を牽引する俳優陣の中に畏れ多くも入れていただき毎日が刺激的でした。完成した作品を見るのを、心待ちにしています。
大好きな石川組に再び参加することができて、大変嬉しく思っています。しかし、石川組では繊細な緩急が求められますので試練の場にもなりますが、その緊張感の心地よさが石川組の魅力でもあります。頂いた役がほんのちょっとでも映画のスパイスになってますように……。
台本を読んで、撮影に入る前からビビり倒しておりましたが、撮影に入り改めてとても素晴らしい映画に参加させて頂いていると、恐縮しっぱなしでした。パッパと撮影していくものかと思いましたが、じっくり監督が向き合ってくださり、演出してもらえて助かりました。妻夫木さんはただの気のいい兄ちゃんで、撮影の合間では楽しくおしゃべりしていたんですが、本番はがっつり俳優オーラ全開出してくるので圧倒されました。素敵な映画のひとつのパーツになってしまった事を、ビビりながらも密かに光栄に思っております。
石川組「ある男」に参加できたこと、とても嬉しく思います。脚本を読んだ時、この役の人生を辿ってみたいと強烈に惹かれました。それは物珍しさではなく、心に共感めいたものが湧き上がったからだと思います。空白になってしまった時間に色を塗っていくように、実人生では経験できないような感情を手繰り寄せて、心を込めて演じました。
台本を読んで「心憂い」そんな言葉が思い浮かびました。重く、深く、心が滲むような……何と表現すれば良いのか……。でもどこかで、こんな映画を待っていた。とても素晴らしい作品に携われたことが大変光栄です。
初めての石川組、妻夫木さんとの共演、楽しかったです。ぜひ劇場で、翻弄されながら見て欲しいです。
シンプルなタイトルに惹かれて手に取った「ある男」。「これは誰もが映画化したがるに違いない」という思いと同時に「こんなに映画化が難しい小説もそうそうない」という、相反する感想を持ちました。でも、すでに「ある男」に強烈に共鳴してしまっていた自分には、手を挙げないという選択肢はありませんでした。この大きな挑戦に、妻夫木聡という役者が一緒に戦ってくれたことは、とても大きな意味を持っています。常に変わらず、そして常に新しく、底が見えずとも物語の深層へ、躊躇なく一緒に潜ってくれる、自分にとって唯一無二の存在です。そこに、安藤サクラさん、窪田正孝さん、清野菜名さん、眞島秀和さん、小籔千豊さん、仲野太賀さん、真木よう子さん、柄本明さんといった、日本映画界の最前線にいる俳優たちが集結してくれました。カメラの後ろで日々目撃した、あの奇跡のような瞬間の数々を、早くみなさんに届けたくてうずうずしています。
「ある男」は、私の小説家生活20年目のタイミングで刊行された長篇です。前作「マチネの終わりに」で描いた「未来は過去を変える」という主題を、分人主義的に更に発展させ、「愛にとって過去は必要なのか」という切実な問いを追求しました。重層的に入り組んだ複雑な構成美が持ち味の小説なので、映像化はなかなか難しいだろうと思っていましたが、素晴らしい監督と俳優陣に恵まれ、強く胸を打つ映画となったことに感動し、また感謝の気持ちを抱いています。原作と映画、両方の世界を是非お楽しみください。
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