【第74回ベルリン国際映画祭】金熊賞はフランスのマティ・ディオップ監督「Dahomey」 植民地時代に略奪された西アフリカの美術品をめぐるドキュメンタリー
2024年2月25日 11:00
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第74回ベルリン国際映画祭が現地時間の2月24日に閉幕し、フランスの女性監督マティ・ディオップのドキュメンタリー、「Dahomey」に金熊賞が授与された。昨年のニコラ・フィリベール監督による「アダマン号に乗って」に続き、再びドキュメンタリーが制する結果となった。
前作「アトランティックス」(2019)でカンヌ国際映画祭のグランプリを受賞したディオップの新作は、フランスによる植民地時代に略奪された美術品が、2021年にベナン共和国(元ダホメ王国)に返還された際の、故国での反応を追ったもの。ドキュメンタリーとはいえ、この監督らしくファンタジックな要素もあり、個性と政治性の融合が審査員から評価された理由のようだ。
審査員グランプリは、ベルリンでなんと5度目の受賞(審査員グランプリは2022年製作「小説家の映画」に続く2度目)となったホン・サンスの「A Traveler’s Needs」。ホン監督とは「クレアのカメラ」に続き2度目のタッグとなったイザベル・ユペールが、フランスから韓国に来た不思議な女性のたゆたうような日常を演じる。受賞にはホン監督自身も驚いた様子で、「審査員の方々がどこを評価してくれたのか、とても興味があります」とコメントをして笑いを誘った。
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監督賞は下馬評の高かったドミニカ共和国の“カバ映画”「Pepe」のカルロス・デ・ロス・サントス・アリアスが受賞した。カバの視点から物語が語られる大胆で独創的な手法が心憎い。一見ユーモラスなようで、人間の愚かさや残酷さを風刺している。
主演俳優賞は、A24製作の「A Different man」で、顔の整形手術を受けて別人のようになるものの、昔の自分を演じることになったことから精神的なバランスを崩していく俳優を演じたセバスチャン・スタンに。助演俳優賞は、オープニング作品「Small Things Like These」で、若い女性たちを虐待する修道院の院長に扮したベテラン、エミリー・ワトソンにわたった。

また脚本賞は、ドイツ映画「Dying」を執筆、監督したマティアス・グラスナーに、審査員賞にはブリュノ・デュモンのSFパロディ映画「The Empire」が、さらに芸術貢献賞は、18世紀のオーストリアの実話を映画化したホラー、「The Devil’s Bath」で、美しくも陰湿な森林地帯の映像を映した撮影監督、マルティン・ゲシュラハトが受賞した。
今年のコンペティションは、「気鋭の若手監督と、ベルリン好みの作家主義系監督のバランスがとれたセレクション」と銘打たれていたが、全体的にはあまり豊年と言える年ではなかった。むしろ名前のある監督作品のクオリティがいまひとつという印象があった。
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開催前は、政治的スタンスの曖昧さが指摘されていた今年のベルリンだが、おそらくはそのことが映画祭に関わる者すべてに影響を与えたのだろう。今年で任期を終える映画祭ディレクターのマリエッテ・リッセンビークとアーティスティック・ディレクターのカルロ・シャトリアンのコンビをはじめ、ほとんど舞台に立った受賞者全員が、イスラエルに休戦を求めるコメントや、ロシアのウクライナ侵略を非難する声明など政治的な発言をして、結果的に政治色の濃いベルリン国際映画祭の面目を保つことになった。(佐藤久理子)
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