山田涼介×浜辺美波「サイレントラブ」は「ミッドナイトスワン」のようになれるのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年1月27日 10:00

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
2024年1月26日(金)から山田涼介×浜辺美波による「サイレントラブ」が公開されます。この作品の大きな注目点は、原案・脚本・監督を内田英治が務めたということでしょう。
内田英治監督といえば、2020年9月25日公開の草なぎ剛主演作「ミッドナイトスワン」で一般に知られる映画監督になりました。
トランスジェンダーとバレエを題材にした作品でしたが、草なぎ剛が「男性として生まれたが肉体の性別違和のため女性の姿で暮らす」という難役を見事にこなし第44回・日本アカデミー賞において「最優秀主演男優賞」に輝いています。
ここまでは想定内でしたが、「ミッドナイトスワン」のムーブは「最優秀作品賞」にまで到達したのでした。

個人的には、難しい設定を“草なぎ剛が演じ切った”というのが最大の功績だと考えていますが、内田英治監督による音楽を巧みに使った独特な演出力の相乗効果も大きかったと思っています。
こうして時の人にもなった内田英治監督ですが、次の劇場映画で原案・脚本・監督を務めたのは、阿部寛主演の「異動辞令は音楽隊!」(2022年8月公開)でした。
警察音楽隊を題材にする独特な切り口ではありましたが、作品の出来としては、そこまではレベルが高いわけではなかったと感じました。
同作は製作幹事と配給をギャガが務め、製作委員会は、ギャガ、TBSテレビ、レオス・キャピタルワークスの3社になっています。
採算ラインは、映画上映後の2次利用の相場も考慮すると、興行収入7.5億円くらいだと想定されますが、興行収入4.7億円で終わってしまっています。

そして、設定が「ミッドナイトスワン」に似た構造になっていると思えたのが、本作「サイレントラブ」なのです。
まず、不遇な境遇を抱えたメインキャラクターに扮した山田涼介と浜辺美波の2人の演技は、非常に良かったと思います。
次に、「ミッドナイトスワン」のキャッチコピーに「世界で一番美しいラブストーリー」というのがありますが、「サイレントラブ」のほうは「世界で“いちばん静かな”ラブストーリー」となっています。
確かにタイトルのように「静かなラブストーリー」でした。

また、幹事会社も、前作ではギャガでしたが、本作ではギャガとフジテレビの2社が担っています。
フジテレビ映画は、ヒット率は高めではあるので、注目に値する作品なのです。
ちなみに、「ミッドナイトスワン」は現時点でも“上映中”です。
TOHOシネマズは2021年7月から「TOHOウェンズデイ」を開始し、毎週水曜日に「誰でも」オトクに映画を見られるようにしています。
そして「ミッドナイトスワン」は「TOHOウェンズデイ」限定(毎週水曜日)の作品として、2021年7月14日(水)から、TOHOシネマズ日比谷で上映が続いているのです。

また、2024年2月23日には、内田英治が原案・脚本・監督を務める「マッチング」の公開も予定されていますが、そろそろ新たなヒット作が必要なタイミングでもあるのです。
「ミッドナイトスワン」の興行収入は現在8億円を突破していますが、「サイレントラブ」における採算ラインは、映画上映後の2次利用の相場も考慮すると、興行収入7.5~9億円くらいが必要だと想定されます。
そのため、このラインを無事に突破できるかどうかが重要なヒットの分かれ道になるので注目したいと思います。
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