「セックスは人間の根幹だ」二村ヒトシ、映画.com編集部が語る「ラ・メゾン 小説家と娼婦」 2023年ベスト作も紹介
2024年1月18日 22:00
TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回取り上げたのは、作家であることを隠して高級娼館に潜入したエマ・ベッケルが、その体験をもとにアンダーグラウンドで生きる女性たちのリアルな姿を描き、フランスで賛否両論を巻き起こしたベストセラー小説を映画化した「ラ・メゾン 小説家と娼婦」。そのほか、年始最初の放送ということで、二村、エビタニの2023年のベスト作品も紹介した。
順位はナシでの二村の2023年のベスト作品、邦画は「エゴイスト」「さよならほやマン」。「『さよならほやマン』は前知識を入れないで見てほしい。ずっこけ映画だと思って観ると度肝を抜かされる。僕は号泣しました」と激オシだ。エビタニも邦画は「エゴイスト」だと意気投合。ふたりで改めてトークしたいと次回のテーマ作となった。
二村の洋画ベストは「レッド・ロケット」。エビタニは1位として「バービー」を挙げ、ほか「聖地には蜘蛛が巣を張る」「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」を紹介。そして、早くも2024年暫定1位として1月26日公開の「哀れなるものたち」を「ダークファンタジー版『バービー』」と激賞した。
今回のテーマ作「ラ・メゾン 小説家と娼婦」に二村は、「性風俗産業に関係ある人も、関係ない人も見てほしい。見た後にものの見方が変わる映画は素晴らしい」と感想を述べ、「感心したのが、店内で男性にサービスするシーンがほぼワンカットでいいところまで撮られている。エッチなシーンをしっかり役者にやらせていることに感動した」と、リアルな描写を褒め、配給会社からの依頼で「僕の意図で、エッチなシーンをノーカットで」予告編を再作したと明かす。
エビタニは、「AV新法やトー横の立ちんぼなど、今の日本でも言いたいことが凝縮されている映画。職業選択の自由で、自らの意思で選んでいる人もいるし、ある種の搾取で性的サービスを行う仕事に就いている人もいる。また、この仕事しかできないからやっているという人も。いろんな人がかかわっていて、お客さんも良い人も、悪い人もいる。リスクはあるけれど、そこから得られるものはマイナスだけではないと感じられた」と述べる。
そして、ふたりは本編中の様々なエピソードについて言及。二村は「僕が気になったのは、主人公のエマはお金に困っているわけじゃない。そして彼女の恋人でもなく、セックスをしている仲の良い、既婚の男がいう言葉『売春宿と精神科医が同じビルにあるのがヤバい』という言葉にむかついた。そこに彼女は違和感を感じたのだと思う」と持論を述べる。
エビタニは「私が衝撃だったのが、娼館で働く子育て中のママさんのセリフ。『昼の仕事をしていたら、子どもと話す時間がなかったけど、今、この仕事で良かった』と。そのことは理解できると同時に、親がこの仕事でもいいのか? という気持ちになって、自分としてはのみ込めなかった。最後に主人公は危険な目に遭って耐え切れなくなるし。『どんなプレイも大丈夫』と言っていたSMの子も脱落してしまう」と職業的なリスクの高さを指摘する一方で、「この映画はコミュニケーションの話でもある。性的なことって話しにくいので、全肯定はできないけれどオープンに話す場としてあるのかも」と、性風俗産業が存在する理由を考察していた。
二村は50年前にセンセーショナルに登場した、同じくフランスのエロティック映画「エマニエル夫人」と比較してその感想を述べ、「売春は自己決定だけど、それをさせてしまう世の中は間違っている。世の中は変わっていくから、昔の映画と今の映画を見比べるのは面白い。セックスは人間の根幹だな」としみじみと語っていた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は、ふたりの2023年のベスト作品「エゴイスト」を取り上げる。
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ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
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