俳優・松村北斗が愛される理由 日本を代表する監督からのラブコールが絶えない魅力とは?
2023年11月25日 11:00

瀬尾まいこ氏の小説を映画化する「夜明けのすべて」で、パニック障害を抱えたことで人生が一変する青年・山添くんを演じる松村北斗。新海誠、岩井俊二、堤幸彦、三木孝浩、蜷川実花、そして本作の三宅唱ら、日本を代表する監督からのラブコールが絶えない。この記事では、俳優・松村北斗が愛される理由に迫る。
松村は、「坂道のアポロン」(2018/三木監督)、「ホリック xxxHOLiC」(22/蜷川監督)、「すずめの戸締まり」(22/新海監督)、「キリエのうた」(23/岩井監督)、ドラマ「ノッキンオン・ロックドドア」(23/堤監督)といった作品で、その魅力を開花させている。
新海監督の「すずめの戸締まり」では、“災い”をもたらす扉を閉めることを使命とする“閉じ師”の青年・宗像草太役で声優に初挑戦。閉じ師という浮世離れしている存在でありながらも、現代を生きる等身大の青年のイメージを具現化するために、新海監督が直接声を聞くオーディションを実施。声優発表ニュースのなかで新海監督は、声の美しさの源泉が「内面の豊かさ」にあるとコメントし、「表現への追求と、絶え間ない内省と、切実な使命感。北斗くんのそういう精神性が、草太というキャラクターにぴったりと重なりました。彼の声の芝居は鮮烈です」と高く評価した。
また、松村自身が大ファンである岩井監督の「キリエのうた」では、姿を消したフィアンセを探し続ける青年・潮見夏彦役を務めた。主人公・キリエ(アイナ・ジ・エンド)とある経緯で交わり、心が揺れ動く姿を絶妙なバランスで演じ、13年という月日の流れも巧みに表現。10月に行われた公開記念舞台挨拶で岩井監督は、「ただ一色の役ではないというか、いろんな心模様が変遷しながら、いろんな状況に追い込まれて進んでいく」と、その役どころを解説。順撮りではない撮影のなかでも「そのときそのときの瞬間を的確に演じてくれた姿を見て、まさにこの役は松村北斗が作り上げた潮見夏彦だと思っています」と、的確な理解力と瞬発力、役を確実に自分のものにする姿を絶賛した。
そんな松村が「夜明けのすべて」で演じる山添くんは、仕事も恋も順調だったが、パニック障害を抱え、人生が変わっていく青年。月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音)との交流を通して、少しずつ心情が変化していく難しい役どころだ。三宅監督は、「初めてお会いした時点で既に、こちらから事前にお願いしたわけでなくご自身の強い思いで、山添くんを演じるために髪を伸ばし始めていて、またパニック障害についても書籍などで丁寧に調べられていて、頼もしいプロフェッショナルな俳優であるということがすぐにわかりました」と、並々ならぬ熱意と、役に向き合う真摯な姿勢について、印象深く語っている。
演じる役をとことん追求し、自分のなかに落とし込み、的確な瞬発力でその姿をスクリーンに焼き付けることで、監督陣から強く支持されている松村。本作で描かれる山添くんと藤沢さんの関係は、友だちでも恋人でもなく、どこか同志のように“救い合う”特別な関係だ。松村は、そんな唯一無二の関係をどのように表現したのか――その裏にある、彼のプロフェッショナルとしての姿勢にも思いを馳せながら、その演技に注目したい。
「夜明けのすべて」は、2024年2月9日に公開。
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