同性愛を隠した人気作家の知られざる素顔に迫るドキュメント「パトリシア・ハイスミスに恋して」監督インタビュー
2023年11月2日 10:00

「太陽がいっぱい」「キャロル」「アメリカの友人」を生んだアメリカの作家パトリシア・ハイスミスの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー「パトリシア・ハイスミスに恋して」が、11月3日から公開される。このほどエバ・ビティヤ監督の特別インタビューを映画.comが入手した。
もともとハイスミスのファンだった監督は、2021年、生誕100周年を機に出版されたハイスミスの手記「Patricia Highsmith: Her Diaries and Notebooks: 1941-1995」を出版前に読む機会を得て、これをもとに本作を製作することを決意した。「彼女の未発表の作品を保存しているベルンの国立アーカイブに行きました。資料から浮かんだのは、わたしがそれまでに想像していた彼女のイメージとはまったく異なる顔でした。彼女の一般的なイメージというのは、陰があり人間嫌いで、人付き合いが悪いといったものだと思います。でも資料を読んで感じたのは、とてもロマンティックで繊細な人間像でした。そこにわたしはとても共感しました」と、日記から明かされるハイスミスの素顔を語る。

本作ではハイスミスの親戚、元恋人であるアメリカの女性作家、マリジェーン・ミーカー、本作出演後の2020年に死去し、「アル中女の肖像」(79)などウルリケ・オッティンガー監督作品の女優として知られるタベア・ブルーメンシャインら、関係者の貴重なインタビューが収められている。人選については「私にとってまず一番重要だったことは彼女を実際に直接知っていた人達や緊密な友人であった女性達をインタビューすることでした。ミーカーとブルーメンシャイン以外でも生きている人は多くなかったので、インタビューの対象を見つけるのはかなり難しいことでした」と明かす。

さらにハイスミスの日記やノートを読み上げるナレーションを担当するのは、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズや Netflix ドラマ「ウェンズデー」「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(15)などで知られるグウェンドリン・クリスティー。出演の経緯について「英語圏の女優を探していたのですが、クリスティーの声を聴いて、ハイスミスを思い起こさせる部分があるなと思って起用しました。あとになって彼女が有名な女優であると知りましたが、その役も男性的な役柄だったので、伝統的な女性らしさとは異なるハイスミスの声ととても合っていたと思いました。クリスティーの声は繊細でエレガントで魅力的です。ハイスミスの声もヘビースモーカーながら、亡くなる間際まで美しい声をしていました」と、貴重なコラボレーションが実現した。

またノエル・アクショテが書下ろし、ジャズ・ギタリストのビル・フリーゼルとメアリー・ハルボーソンが参加した楽曲にも注目だ「音楽は元々他のミュージシャンを予定していたのですが、準備段階でアクショテと話したところ、ハイスミスが幼少期に聴いて育ったに違いないというようなさまざまな音楽の素材を彼が私に送ってくれたんです。彼と仕事をしたら素晴らしいだろうなと思って、彼に依頼することになりました。そして彼からフリーゼルとハルヴォーソンの2人を紹介されて、実際に楽曲をつくってもらったのです。ハイスミスの根っこにあるアメリカというものを表現したいと思い、アメリカのミュージシャンにお願いしました」と起用の経緯を語っている。
11月3日から、新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。
(C)2022 Ensemble Film / Lichtblick Film
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