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カンヌ映画祭で声明を出したアジア7カ国のネットワークに日本がなぜ参加していないのか?

2023年10月31日 14:00

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KOFIC(韓国映画振興委員会)のパク・キヨン委員長
KOFIC(韓国映画振興委員会)のパク・キヨン委員長

韓国の文化体育観光部(日本における文科省)が所轄する特殊法人 KOFIC(韓国映画振興委員会)のパク・キヨン委員長が、10月30日に行われた日本メディア合同カンファレンスに出席。韓国映画界の実情や、アジア7カ国共同で映画産業の発展を促すAFAN(Asian Film Alliance Network)などについて現状を報告した。

この日は、フランスのCNC(国立映画映像センター)やKOFIC(韓国映画振興委員会)の仕組みを参考にした新たな映画共助システム・統括機関の設立を求めるべく活動している「action4cinema / 日本版CNC設立を求める会」(是枝裕和監督、諏訪長彦監督が共同代表)の主催。韓国映画界の現状について語るとともに、海外の映画機関が、日本との共同製作・コラボレーションを実施する際に「日本側のカウンターパートナー=窓口」がないことで生じるボトルネックをなくし、スムーズなコラボレーションを実施することの重要性を訴えるべく会見が行われた。

アカデミー賞で作品賞をはじめ4部門を獲得したポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」の例をあげるまでもなく、海外の映画関係者から「近年の韓国映画躍進の理由は?」と質問される機会が多くなったと語るパク委員長。「現在、KOFICで行っている(映画産業への)支援事業は世界的に見ても最高レベルにあるといえる。KOFICと映画業界が協力しあい、相互作用をもたらしたのもその理由だ」と自負する。だがそんな韓国も国内事情は厳しく、「実は今、韓国の映画産業が最大の危機を迎えている」という。

■韓国の映画業界が迎えている最大の危機とは?

パク委員長によると、韓国の映画界にとって秋の連休(日本でいうゴールデンウィークにあたる)を含む9月はかき入れ時で大事なシーズン。だが9月に公開された3本の大作映画の成績が期待を下回る結果となり、劇場の9月売上額は、コロナ前の19年と比較して52%にしか満たない数値に。要因のひとつとして、コロナ禍のために公開できずにいる作品が100本近くあり、6000億ウォン(日本円でおよそ666億円)の製作費が回収できていない状況のため、新作の製作が激減しているが挙げられる。

今年はメジャースタジオが30億ウォン(日本円にして約3億3000万円)以上の製作費をかけた大作映画が11本のみにとどまり、昨年の37本から激減。作品不足がより鮮明になっている。「韓国映画の好況期だった12年には動員1000万人を超える映画は5本あったが、コロナ禍における4年間の中で、動員1000万人を超えた作品は『犯罪都市』シリーズなど3本のみだ」とパク委員長は語る。

劇場側としても収入減を補うためにチケット料金を3回にわたって値上げすることになった。だが、劇場で上映されている作品に見応えのあるものが少ないということで、観客からは不満の声もあがっているという。

■動画配信サービスからも基金を徴収するために法改正も

またOTTプラットフォーム(ネット回線を通して配信されるコンテンツサービス)による映画配信サービスの普及という要因もあるという。例えばNetflixなどの動画配信サービスが制作するシリーズ作品には、国内で製作される劇映画よりもはるかに高額のギャラが支払われており、スタッフや俳優を確保するのが難しい状況になっている。かつ動画配信サービス作品のIP(知的財産権)はすべて動画配信サービスが所有しているということから、韓国のコンテンツが下請け状態になっているのも問題視されているようだ。

KOFICでは、観客が劇場に支払うチケット料金の中から3%を徴収して、「映画発展基金」に蓄積。そこから映画業界の各セクションに再配分するという仕組みを2007年から行っている。当然ながら当初は、配給会社、映画館などからの反発もあったというが、「韓国映画界の発展のために」という旗印のもと、関係各所にも次第にその重要性に理解が及ぶようになった。

だがコロナ禍などの影響もあり、その基金は減少。「この基金だけでは、韓国の映画業界の支援をするのに十分ではない状況にある」とパク委員長は訴え、「そのため、来年ははじめて体育振興基金や、宝くじ振興基金などからも、資金を拝呈されることとなった」と明かす。

そしてその現状を打破するために、また現在、劇場の入場料に限られている基金への徴収金を「OTTの動画配信サービスにも広げるよう法改正を進めている」というが、そうした法改正を進める上では、政治家の協力体制も必要となる。だが、どれほどの政治家が“映画”産業に関心を持っているのだろうか。

「映画が政治家たちの関心を集めているというよりは、OTTが社会に対して大きな影響を持っている、ということが政治家の関心を集めたといえる。わたしはKOFICとして、機会があるごとに国会に行って、国会議員たちにこの話をし続けてきた。最初は『話にならない』『正気か?』といった対応もあったが、1年かけて話し続けた結果、その必要性に関して理解してもらえるようになってきた。そうした問題を周知してもらうということには寄与できたと思う」と自負するパク委員長。しかし課金に対してはOTTを管轄する3つの省庁の考えがそれぞれ違っているなど、まだまだいくつもハードルが残っているとのことで、政治的な働きかけが必要。「まだまだこれを実現するのは難しい」という状況だという。
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■アジア7カ国が映画の共同声明…だがそこに日本が加わることができない理由は?

こうした映画界の厳しい状況を打破するためにも、アジア各国との共同製作や、映画人の育成など、アジアの枠組みの中でともに取り組み、拡大していくことが重要だと語るパク委員長。KOFIC(韓国)は今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭で、BPI(インドネシア)、FDCP(フィリピン)、FINAS(マレーシア)、SFC(シンガポール)、MNFC(モンゴル)、TAICCA(台湾)という、国立の映画もしくは映像機関を持つ7カ国と共同で、AFAN(Asian Film Alliance Network)の結成を宣言。しかしここに日本は参加していない。

「(今年5月のAFAN結成以来)AFANのシンポジウムも2回行われ、第3回のシンポジウムは11月にマニラで行われます。AFANの目的は、さまざまな協力体制を通じてアジアの映画業界を成長させていくことにあります。しかし残念ながらAFANに日本は参加していません。その理由とは、日本には参加7カ国のような、映画に関する国家機関がないから。その窓口となるカウンターパートナーがいない状況だからなのです」と明かしたパク委員長。

それだけに、パク委員長は是枝監督、諏訪監督が共同代表を務める「action4cinema / 日本版CNC設立を求める会」の支持を表明するととともに、「日本は名実ともにアジア映画の軸となる国。わたしも含め、韓国の映画人は日本の古典映画を観て映画を学びました。アジア映画を発展させるためにも日本の役割は重要だと思っていますが、日本にそうした窓口がないことを残念に思っています」とメッセージを寄せた。

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