【「氷の微笑」評論】30年前の衝撃が再び。大ブームを巻き起こしたエロティック・サスペンスの金字塔
2023年6月24日 15:00
カンヌ映画祭の開幕を飾り、全米ボックスオフィスで1億ドルを突破、全世界で3億5千万ドル以上を売り上げた衝撃作が、30年の時を経て4Kレストア版となって公開される。
ロック歌手のジョニー・ボズが自宅寝室で惨殺された。サンフランシスコ市警の刑事ニックの捜査線上に浮かんだのは、ボズの愛人で若き推理作家のキャサリン。捜査を進めるニックだったが、いつしか彼女の魅力に翻弄されていく。そして新たな殺人事件が起こる。
ジョー・エスターハスの脚本は、映画史上最高額(当時)の300万ドルで落札され、製作前から大きな話題を呼んだ。マリオ・カサール率いるカロルコ社はサスペンス映画としては超高額の5000万ドルを製作費として計上。監督は「ロボコップ」のポール・バーホーベン、撮影はヤン・デ・ボン、音楽はジェリー・ゴールドスミスと、超一流のスタッフが集められた。
13キロ減量して臨んだマイケル・ダグラスの出演料は1400万ドル、対するシャロン・ストーンのギャラは50万ドルだった。彼女は、ジュリア・ロバーツ、ミシェル・ファイファー、レナ・オリンなどの有力候補を押しのけての大抜擢。原作には無いあの脚組みシーン(通称「レッグ・クロス・ショット」)で着用した白いドレスは、ストーン自身がショップに赴き、キャサリンをイメージして選んだ衣装だった。
実はこの作品、日本特有のエンタメ事情も絡んでいた。映画公開の前年は、樋口可南子、本木雅弘、宮沢りえが写真集を出版し一気にヘアヌード・ブームが到来。映画界もその影響を受け、ジャック・リベット監督「美しき諍い女」と、本作「氷の微笑」(R18)が立て続けに無修正上映(正確には映倫規定第6項2「性器、恥毛は描写しない」の審査基準見直し)となり、ヘア解禁元年としてメディアの話題をさらった。一足先に上映された仏映画「愛人 ラマン」のヒットで、セクシャルな作品でも宣伝次第では広く老若男女を動員できる、という実績も追い風になった。
92年作品だが古さは感じない。特にキャサリンの人物設定は時代の先駆けだった。作家として成功し、経済的にも自立。男性刑事たちに囲まれても臆せず、逆に支配するカリスマ的バイセクシャル女性。そして豪華な衣装や海辺のロケ、殺害の手口などがヒッチコックやデ・パルマ作品を想起させ、映画ファンからの満足度も高かった。また「真犯人は胸の形で分かる」という俗な噂が広がり、確認のため劇場に通うリピーターまで現れた。
同92年の映画館年間入場者数は当時戦後最低を記録、バブル崩壊とも重なり映画不況が叫ばれる中、「氷の微笑」は約40億円の興行収入で年間第4位の好成績を残し、映画業界に大きく貢献した作品となった。
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