「スパイダーマン」5つのユニバースを徹底解説! 水彩画、「ブレードランナー」、インドのコミックなどをイメージ
2023年6月3日 10:00
映画「スパイダーマン」シリーズの新作「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」では、それぞれ異なる独自のルックを持つ、さまざまなユニバースから集まったスパイダーマンたち(=スパイダー・ピープル)が登場する。この記事では、5つの異なるユニバースの特徴を徹底解説。それぞれ水彩画、映画「ブレードランナー」、インドのコミックなど、さまざまなものからインスパイアを受けている。
本作は、「スパイダーマン スパイダーバース」の続編。前作では、時空の歪みで、異なる次元で活躍するスパイダーマンたちが集められた世界を舞台に、ピーター・パーカーの遺志を継いだ少年マイルス・モラレスがスパイダーマンとして成長していく姿が描かれた。続編では、マイルスは久しぶりに再会したグウェンに導かれ、スパイダー・ピープルが集結する、マルチバースの中心に足を踏み入れる。そこで彼は未来を目撃し、愛する人と世界を同時には救えないという、かつてのスパイダーマンたちが受け入れてきた“悲しき定め”を知る。それでも両方を守り抜くと誓ったマイルスの決断が、やがてマルチバース全体を揺るがす最大の危機を引き起こす。
グウェンが住むのは、彼女の感情とともに、周囲の色や質感も一緒に変化していくという、まるで水彩画のような美しくも不思議なユニバース。アートディレクターのディーン・ゴードンは、「劇中に時折、シルエットに縦の色の筋が入っているのが見られるでしょう。グウェンの世界には独自の『色の世界』があり、それはとても表現豊かに彼女の感情を表します」と明かす。彼女の世界は、まるで米マンハッタン・チェルシー地区が高級化する前の1990年代のアートシーンや、ニルヴァーナのミュージックビデオのような雰囲気を持っている。
ホアキン・ドス・サントス監督は、マイルスが住むのが、「クラシックコミックへの壮大なラブレター」を表現した世界だと語る。30年代以降のアメリカンコミックのカラー表現に特徴的な、ベンデイドット(小さな色の点の間隔をあけたり重ねたりして、画像の濃淡や色彩を表現する印刷方法)という技法をベースに、色の濃淡や質感を絶妙に組み合わせ、同時に“オフセットカラー”といわれる4色を重ね塗り。まるでアメリカンコミックのなかに入り込んだかのような感覚に陥る、ユニークな世界となっている。
パヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディアが住むのは、近代都市マンハッタンと伝統的なインド・ムンバイのハイブリッドである“ムンバッタン”の世界。古代の石造寺院のような装飾と、ガラスと鉄で作られたカラフルな高層ビルが、見渡す限り広がる。つまり建築学的には、現代と古代が融合した世界が、まるで万華鏡のようにきらびやかに映し出される。
この世界を作り上げるにあたって、クリエイティブチームは、70年代に出版されたインドのインドラジャル・コミック(インドのコミックシリーズ)にインスピレーションを受けた。「これらのコミックは特殊な方法で印刷されており、それを映画のパヴィトルの部分で再現しました。印刷された紙の質感を表現したかったのです」と語っている。
ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099が暮らすのは、地上は整備が行き届いた未来のニューヨークのようだが、地下には「ブレードランナー」のようなダークな世界を持つ“ヌエバ・ヨーク”だ。
キャラクターアニメの責任者であるアラン・ホーキンスは、ジャスティン・K・トンプソン監督と同様に、「ミゲル・オハラの世界は、(「ブレードランナー」「スター・トレック」など SF大作映画で重要なデザインを担当した)シド・ミードのコンセプトアートに大きな影響を受けている」と明言。トンプソン監督は、「手入れが行き届いていて、理想の未来像を想起させるように常に心がけました。全てがクリーンでシャープ、そしてクールで、ブルータリズム(50年代に見られるようになった、無骨な意匠を建物の外観に使用し、荒々しい印象を与える建築様式)の建築が至るところにあるような雰囲気です」と、付け加えている。
スパイダー・パンクは、ロンドン初期のパンクシーンがベースの世界で暮らしている。デザイナーたちは、この時代にオマージュを捧げるビジュアル背景を実現するため、70年代イギリスのアートワーク、コミック、雑誌を徹底的にリサーチ。コラージュや、既存の枠にとらわれないニューメディアやコピー機を使い、物理メディア(物理的な記憶媒体)を何度も複製し、そのことで生じる劣化を利用して作り上げられた。
「この世界はジム・マーフッドやアシュレイ・ウッドのようなアーティストから影響を受けたワイルドな世界であり、その興奮とエネルギーを線のクオリティに再現し、その時代の“パンクイズム”の精神を維持しているのです」と、プロダクションデザイナーのパトリック・オキーフは解説している。
脚本とプロデューサーを務めたクリストファー・ミラーは、「この映画ではさまざまなユニバースを描いており、それぞれに独自の美学とアートスタイルがあります。どのユニバースもほかのユニバースとは全く違うビジュアルですし、デザインしたものにリミットは一切ありません。想像し、描き、思いつくものは何でも作ることができます。それは本当に驚くべきものです」と述べる。
ストーリー責任者であるオクタビオ・E・ロドリゲスも、「AKIRA」「ブレードランナー」などのクラシック作品や、素晴らしいデザイナーであるシド・ミードの作品を参考に、スパイダーバースのあらゆる面をチームとともに研究することは刺激的だったと述懐。「私たちは多種多様なキャラクターや環境について、できるだけ忠実に描こうと努力しました。インドやイギリス、ほかの地域に並行して存在するスパイダーヒーローたちを描いています。人々が何度でも繰り返し見るような、細部まで堪能するために巻き戻してしまうような映画に取り組めることは、本当に素晴らしいことです」と、世界中の異なる文化、人種、国を表現しようとする本作での取り組みに、充実感をにじませた。
「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」は、6月16日に全国公開。
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