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【第76回カンヌ国際映画祭】役所広司主演「PERFECT DAYS」に大喝采 ビム・ベンダース監督「役所さんは僕の笠智衆」

2023年5月27日 21:26

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日本の公衆トイレをモチーフにした物語
日本の公衆トイレをモチーフにした物語
(c) Kazuko Wakayama

カンヌ国際映画祭の終盤を迎えた5月25日、ビム・ベンダース監督が日本で撮影した新作、「PERFECT DAYS」(原題)がコンペティション部門で披露され、ベンダース監督とともに主演の役所広司と、田中泯中野有紗、アオイヤマダ、脚本家の高崎卓馬がカンヌを訪れた。公式上映では大喝采が起き、「ベンダースの近年の最高傑作」「役所広司が素晴らしい」という声が上がった。

本作は日本財団「The Tokyo Toilet」プロジェクトを発端に、映画制作を依頼されたベンダースが、トイレの清掃員、平山(役所)を主人公にして描いたフィクション。過去にわけがあって裕福な実家を飛びだした平山が、毎日決められた清掃の仕事をしながら、清貧な生活のなかで充足した生活を送る日々を描く。「都会のアリス」のようなベンダースの初期の作品を彷彿させるところもありながら、ジム・ジャームッシュの「パターソン」のような、なにげない景色のなかに希少価値を見出す主人公が、精神性に満ちている。とくに平山が愛する“木漏れ日”が効果的なモチーフとして用いられる。

画像2(c) Kazuko Wakayama

日本のマスコミ向けの取材に応じたベンダースは、「東京で撮影をするのに、小津安二郎監督を思い出さないのは不可能。平山という名前は脚本家の高崎卓馬さんのアイディアで、小津映画に出てくる笠智衆が演じた役の名前なんです。役所さんは僕の笠智衆です」と小津愛を披露した。

さらにトイレ・プロジェクトが象徴する日本の精神と日本社会について、「トイレに象徴されるもの、たとえばみんなが綺麗に使って綺麗なままであるとか、そういう精神は自分の国にはみられないもの。そこに感銘を受ける。もちろん便座が温かいのも日本ならではで、一度座ったらもう他のトイレは使いたくなくなる(笑)。コロナのあと、みんなが自己中心的になり連帯感が薄れていくなかで、日本には人と人をつなぐ糊のようなものが残っている。それはとても貴重なことだと思いました。平山というキャラクターはとてもユニークで、いまこの瞬間を生きている。でも世界中のみんなが共感できる普遍的なキャラクターだと思います」と語った。

画像3(c) Kazuko Wakayama

一方、平山というキャラクターについて役所は「ベンダース監督は『平山の生活は羨ましいなあ』とおっしゃっていたのですが、僕も同感です。決して豊かな生活ではないものの、満ち足りている。物欲がないから手に入れるために誰かを傷つけることもない。とても尊敬できる人です。世界が平山さんみたいな人が増えると、いい世界になると思います」と評した。

さらにベンダースは俳優としての役所について、「素晴らしい俳優というのは、自然に空間を埋められるもの。役所さんはそれができる。じつはカメラマンが彼を撮りながら感動して涙を流していることがあって、わたしはちゃんと撮れているか心配になったほどなのですが(笑)、撮影監督がそんなに感動しているのを見たことがなかった。それほど素晴らしかったです」と、役所を絶賛した。

現地での反響の良さから、今後の展開について大きな期待が持てそうだ。(佐藤久理子)

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