ジャファル・パナヒ監督の長男が描く“イラン社会の現実と夢” 「君は行く先を知らない」予告公開
2023年5月24日 11:00
イラン映画界の巨匠ジャファル・パナヒ監督の長男、パナー・パナヒの長編監督デビュー作「君は行く先を知らない」の日本版ポスター、場面写真、予告編が、このほど一挙に公開された。
「白い風船」「チャドルと生きる」「人生タクシー」などでカンヌ、ベネチア、ベルリンの三大映画祭を制覇した世界的巨匠であり、長年にわたるイラン政府との自由をめぐる闘争でも知られるジャファル・パナヒ。その制作現場で経験を積んだ長男パナー・パナヒは、2021年、満を持して長編デビュー作を発表。カンヌを皮切りに世界96カ国の映画祭を喝采の渦に巻き込んだ。
父ジャファルがプロデューサーを務めた本作は、イランの荒野を車で移動する家族のロードムービー。2021年のカンヌ国際映画祭監督週間でワールドプレミアを迎え、同年の東京フィルメックス・コンペティション部門では「砂利道」のタイトルで上映されている。
荒涼としたイランの大地を走る1台の車。後部座席では足にギプスをつけた父が悪態をつきながら、旅に大はしゃぎする幼い次男の相手をしている。助手席の母はカーステレオから流れる古い歌謡曲に体を揺らし、運転席では成人した長男が無言で前を見据えている。次男が隠し持ってきた携帯電話を道端に置き去ったり、尾行に怯えたり、転倒した自転車レースの選手を運んだり、余命わずかなペットの犬の世話をしたりしながら、一家はやがてトルコ国境近くの高原に到着する。
日本版ポスターは、撮影当時6歳の次男役、ヤラン・サルラクが放つ天真爛漫なエネルギーを凝縮した1枚をセレクト。子どもの演技が魅力的なイラン映画は数多いが、イラン映画史に連なる新たな1作となることを予感させる。予告編は、広大な砂漠や高原と狭い車内のコントラストが印象的な映像や、物語をノスタルジックに彩るイスラム革命以前の歌謡曲の数々が登場。各国の観客や批評家から絶賛を浴びた両親役のベテラン、パンテア・パナヒハとモハマド・ハッサン・マージュニによる人間味あふれる演技、長男役の新人アミン・シミアルの憂いを帯びた佇まいも垣間見える。
「君は行く先を知らない」は、8月25日から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。