カトリック人口多数、男性優位社会で中絶の権利を勝ち取った女性政治家描く「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」7月28日公開
2023年4月25日 11:00
エディット・ピアフ、グレース・ケリーと世紀の女性を描いてきたオリビエ・ダアン監督3部作のラストを飾る映画「Simone」が、「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」の邦題で7月28日公開される。日本版ポスタービジュアル、予告編、場面写真が披露された。
1974年パリ、カトリック人口が多数を占め更に男性議員ばかりのフランス国会で、シモーヌ・ヴェイユはレイプによる悲劇や違法な中絶手術の危険性、若いシングルマザーの現状を提示して「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」と圧倒的反対意見をはねのけ、後に彼女の名前を冠してヴェイユ法と呼ばれる中絶法を勝ち取った。
その後ヴェイユは、1979年には女性初の欧州議会議長に選出され、大半が男性である理事たちの猛反対の中で、「女性の権利委員会」の設置を実現。女性だけではなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など弱き者たちの人権のために闘い、フランス人に最も敬愛された女性政治家。その信念を貫く不屈の意志は、かつてアウシュビッツ収容所に送られ、“死の行進”、両親と兄の死を経て、それでも生き抜いた壮絶な体験に培われたものだった。
主演のエルザ・ジルベルスタインの威厳ある演技、8キロ増量という役作り、当時を再現した豪華な美術や、カール・ラガーフェルドがシャネルのアトリエで特別にデザインする程ファッションも愛したヴェイユの衣装も見逃せない。
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」に続く世紀の女性を描く3部作の渾身のラストとしてダアン監督が完成させた本作は、公開初週No.1に躍り出た後10週連続トップ10入りのロングランヒット。240万人を動員し、2022年フランス国内映画の年間興行成績No.1の記録を樹立した。シモーヌ・ヴェイユが2017年に89歳で生涯を閉じた際には、国葬が執り行われ、キュリー夫人などの偉人たちが眠るパンテオンに5人目の女性として合祀された。
予告編では、家庭に入り学業を断念した母が幼いシモーヌに「勉強して自立しなさい。女性も働かないと」と言い聞かせる場面から始まり、16歳で家族とともに強制収容所に送られ壮絶な体験を強いられた記憶が切り取られている。生き延びたシモーヌは結婚し子育てをしながらパリ政治学院を卒業し、周囲に反対されながら、男性優位社会の中でキャリアを積んで司法官となり、劣悪な刑務所内の環境や囚人たちの待遇の改善に奔走する。やがて政界入りし中絶法成立のために闘う姿、欧州議会で弁舌を振るう姿が次々と映し出され、シモーヌの不屈の人生が垣間見える映像だ。
7月28日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほかにて全国順次公開。