【第95回アカデミー賞】助演男優賞はキー・ホイ・クァン! 「エブエブ」で初受賞
2023年3月13日 09:30
第95回アカデミー賞の授賞式が3月12日(現地時間)、米ロサンゼルスのドルビーシアターで行われ、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のキー・ホイ・クァンが、助演男優賞を初受賞した。
「スイス・アーミー・マン」の監督コンビのダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)が手がけた、カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を掛け合わせた異色のアクションアドベンチャー。クァンは、経営するコインランドリーが破産寸前で、生活に追われるごく普通の中年女性・エヴリン(ミシェル・ヨー)の、優しいだけで頼りにならない夫ウェイモンドを演じた。ある日、エヴリンの前に、突如として「別の宇宙(ユニバース)から来た」というウェイモンドが現れる。混乱する彼女に、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と、驚きの使命を背負わせるウェイモンド。そんな“別の宇宙の夫”に言われるがまま、マルチバースに飛び込んだ彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、救世主として覚醒する。
昨年、助演男優賞と助演女優賞を受賞したトロイ・コッツァー、アリアナ・デボーズがプレゼンターを務めた。デボーズが、涙声でクァンの名を告げると、クァンは感極まった様子で、共演したカーティス、ヨーと熱いハグを交わした。登壇したクァンは、目に涙を浮かべ、口元をおさえながら、「ありがとうございます。私の84歳の母が、今日、家から見てくれていると思います。お母さん、オスカーをとったよ。私の旅路は、ボートで、難民キャンプで始まったんですが、いまはこのハリウッド最大の舞台にいるんです。こんな話は映画にしかないといいますが、実は自分の人生なんですよ。これこそが、アメリカンドリームだと思います」と、力強く語る。
クァンは、「アカデミーにこのような栄誉を頂きまして、本当にありがとうございます。お母さん、これまでのサポート、本当にありがとう。そして弟のデビッド、毎日電話をしてくれて、『ちゃんと体に気をつけてね』と言ってくれます。ケン、全てのサポート、本当にありがとう。A24、監督のダニエルズ、ミシェル、ジェイミー、そして『グーニーズ』のブラザー、ジェフ・コーエン、ありがとう。そして、妻エコに感謝します。もう何カ月も何カ月も、何年も何年も、20年間、言い続けてくれました。『いつか、あなたの時が来るわよ』と」と、万感の表情。「夢というのは、信じなければ実現できない。諦めたときもありました。皆さん、夢を諦めないで。このようにまた歓迎してくださって、本当にありがとうございました。ありがとう、ありがとう、ありがとう!」と、誰しもの心に刺さるメッセージで、スピーチを締めくくった。
ベトナム・サイゴン出身のクァンは、1978年にインドシナ難民となって香港に渡り、その後、米カリフォルニアに移住する。12歳のとき、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」(1984)のオーディションに合格してメインキャストを務め、「グーニーズ」(85)にも出演。シットコム「ヘッド・オブ・ザ・クラス」(90~91)のレギュラーキャストとしても人気を博す。南カリフォルニア大学で映画を学び、99年の卒業後はスタントコーディネーターや、「2046」(2004)のアシスタントディレクターとして活動していた。
20年ぶりの俳優復帰を果たした「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」では、第80回ゴールデングローブ賞をはじめ、2022年ニューヨーク映画批評家協会賞、第28回クリティックス・チョイス・アワード、第29回全米俳優組合(SAG)賞、第38回インディペンデント・スピリット賞など、映画賞を総なめ。そして作品賞、監督賞を含む最多10部門11ノミネートされた第95回アカデミー賞で、初ノミネートにして初受賞を果たした。
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