【「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」評論】タフでクールな“運び屋”ヒロインの魅力が炸裂するカー・アクション

2023年1月29日 08:00


「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」
「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」

韓国発のさまざまな映像コンテンツが、ここ数年で急激に世界的なプレゼンスを高めていることは周知の通り。とりわけ筆者が目を見張っているのは、ジャンル映画における“見せ場”の充実ぶりだ。

一例としてカー・アクションを挙げてみよう。近作の「人質 韓国トップスター誘拐事件」「犯罪都市 THE ROUNDUP」には、犯罪事件をめぐる一連の流れの中に、極めて高度で激烈なカー・チェイスが当たり前のように盛り込まれていた。それに先立つ「モガディシュ 脱出までの14日間」は非ジャンル系の実録ものだが、クライマックスでかつて観たことのない車による脱出活劇がビジュアル化されていた。韓国映画のカー・アクションの水準自体が飛躍的にレベルアップしているのだ。

いささか前置きが長くなったが、「パラサイト 半地下の家族」で注目された若手女優パク・ソダムが裏社会の“運び屋”を演じた本作の出来ばえも素晴らしい。主人公ウナが釜山の入り組んだ路地や坂道で華麗なハンドルさばきを披露し、緩急自在の運転テクで敵をまく序盤のシークエンスを観れば、たちまちスクリーンに釘付けになるだろう。

しかもこのカー・アクション映画の優れた点は、ことさらスケール感や派手さを追求していないことだ。クールな不良少女風の身なりからして魅力的なパク・ソダムの表情や仕草をカメラに収めながら、ウナがピンチの際にとっさに繰り出すサバイバル術を描出。つまりアクションそのものが、脱北者でもあるウナのしぶとくてしたたかなキャラクターを表現している。だから本作のアクション・シーンには無駄がなく、キレとうまみがつまっている。

そもそも「ザ・ドライバー」のような古典や「ドライヴ」「ベイビー・ドライバー」などの犯罪映画で繰り返し描かれてきた運び屋/逃がし屋というアウトローを、女性主人公に応用したアイデアがいい。ウナは脱北時に家族を皆殺しにされた悲惨な過去の持ち主だが、パク・デミン監督はメロドラマになりかねないその設定に深入りせず、悪徳警官や殺し屋につけ狙われる少年とウナの交流劇をユーモアたっぷりに描いた。やがてこの疾走感あふれる逃亡劇は、いつしか天涯孤独なふたりが姉弟のような絆を育むロードムービーに変容していく。その転調も、実に自然で巧みである。

というわけでアクションとドラマの配分も文句なしの快作なのだが、工具の“ドライバー”も活躍する乱闘シーンの血の気の多さは、明らかに度が過ぎている。それもまた韓国映画の“スタンダード”ということか。

(高橋諭治)

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