「レジェンド&バタフライ」。木村拓哉×綾瀬はるか×東映70周年記念作品の完成度は?<前編>【コラム/細野真宏の試写室日記】
2023年1月24日 16:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
いよいよ今週末の1月27日(金)から邦画実写では久しぶりの超大作映画である「レジェンド&バタフライ」が公開されます。
この映画は総製作費20億円と言われていますが、ここまでの規模感の作品はあまり事例がなく、多くの考察が必要となります。
そこで、本作については、【前編】と【後編】の2つに分け、【前編】では内容の面から、【後編】では、製作費や興行収入という経済的な面から考察をすることにします。
まず、本作が如何に特別な作品なのか、というところから。
通常のマスコミ試写は、完成披露試写会を映画館で行ない、それ以降の試写は、配給会社が持っている試写室で行なうようになっています。
ところが、本作の場合は、完成披露試写会にとどまらず、通常の試写会もすべて映画館で行なっていたのです!
それは、「本作は劇場の大スクリーンでご堪能いただきたく、全回【丸の内 TOEI1】で実施致します」といった超異例の対応。東映の強い意気込みが伝わってきました。
しかも、この通常のマスコミ試写は、1回や2回ではなく、11月から1月にかけて13回も行なわれていたのです!
さらには通常のマスコミ試写の前には、【マスコミ・業界関係者向けお披露目試写会】と銘打った、一部のマスコミ関係者や劇場関係者などにイチ早く見せ、大友啓史監督がプレゼンをする場までありました。
その際に大友監督が話していて興味深かった点として、「映画の完成」以降も、細かなシーンの作り直し作業を、その時点でもやり続けている、ということでした。
ここから、「るろうに剣心」シリーズなどで見せてきた、映画職人らしい「こだわりの強さ」を垣間見ることができました。
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もう1つ興味深かったのは、「コロナ禍での撮影というのも、決して悪いことばかりではなかった」という点です。
というのも、平時では一般に開放し映画では使えないような重要文化財などでの撮影が許可されたり、コロナ禍だからこそ実現できたシーンが生まれたわけです。
その結果、全国30カ所以上という邦画最大規模でのロケ地で撮影が行なわれ、国宝や重要文化財などがそこかしこに映し出されているのです!
本作は、「魔王」と呼ばれるなど数々の伝説を作った織田信長が、「蝶」のように自由を求めた濃姫との出会いから、その生涯に幕を閉じる激動の33年間が描かれています。
かなり本格的な時代劇映画ですが、これまで見てきたような戦闘シーンばかりの時代劇映画とは明らかに違いました。
私が、本作の発表時点で違和感を持っていたのは「横文字タイトル」ですが、実際に映画を見てみると納得できました。
それは、従来の「日本国内だけをターゲットにした時代劇映画」とは違い、「世界をターゲットにした映画」という意思表明なのだと。
そう考えると、これは割と正しいお金のかけ方なのかもしれません。
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「時代劇」の名手は日本には何人かいますが、「時代劇」を進化させるには、「るろうに剣心」シリーズや大河ドラマ「龍馬伝」を手掛けた大友啓史監督というのがベストな選択だと思います。
脚本は「コンフィデンスマンJP」シリーズや「リーガルハイ」シリーズなどを手掛けてきた古沢良太。従来の「織田信長と濃姫」の物語を“誰も見たことのない切り口”で描き出しており、この起用も正解だと言えるでしょう。
さらに、織田信長を木村拓哉、濃姫を綾瀬はるか、というのも、これ以上は考えにくい組み合わせではないでしょうか。
実際に、これらの采配は、見事にハマっていました。
冒頭における「当時16歳の織田信長のヤンチャぶり」の表現によって、緩急が生まれ、結果的には、「木村拓哉×綾瀬はるか」の化学反応が炸裂する序盤となっています。つまり、「織田信長の物語」ではなく、「織田信長と濃姫の物語」なのだと理解できる上手い構成とも言えます。
史実を描いている映画なのですが、特にラストシーンには驚きのある唯一無二の作品となっていました。
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果たして、この映画は、どのくらいのヒットをするのでしょうか?
また、興行収入がいくらいけば、総製作費20億円と言われる巨額なお金を回収することができるのでしょうか?
この経済的な考察については、【後編】で解説します。
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