ディズニープラスが“解き放った”衝撃作「ガンニバル」は、いかに世界を驚かせたか? 山本晃久プロデューサーが語る舞台裏【メイキング・オブ・ガンニバル 連載第4弾】

2023年1月24日 15:00


山本晃久プロデューサー「常に“大いなる外輪”を意識していた」
山本晃久プロデューサー「常に“大いなる外輪”を意識していた」

ディズニープラス「スター」と、日本映画の第一線で活躍する気鋭クリエイター&豪華キャストがタッグを組んだ衝撃のヴィレッジ・サイコスリラー「ガンニバル」。全世界に配信する実写ドラマシリーズという画期的なプロジェクトは、いよいよ佳境を迎え、最終回に向けて怒とうの展開を加速させている。そんな本作の裏側を、関係者の言葉から紐解いていく映画.com独占連載第4弾には、プロデューサーを務めた山本晃久が登場。ディズニープラスが“解き放った”衝撃作が、世界を驚かせた舞台裏を語っている。

本作は、2018年に連載が開始され、累計発行部数210万部を超える二宮正明氏による同名コミックを実写ドラマ化するもの。都会から遠く離れた山間にある「供花村」を舞台に、ある事件をきっかけに供花村の駐在として左遷された阿川大悟(柳楽優弥)が、老婆の奇妙な死を境に、「人が喰われているらしい」と噂される村の異常性に飲みこまれていく。

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プロデュースを手がけた「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)が第94回アカデミー賞の国際長編映画賞に輝き、現在はウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社で、「拾われた男」「すべて忘れてしまうから」といった作品に携わりながら“ディズニーらしからぬ”新機軸を開拓している山本。センセーショナルな題材をディズニープラスで映像化したことについて、「確かにディズニーというブランドの観点からすると、非常に挑戦的な企画。観客のみなさんが『この凄惨なテーマの物語をディズニープラスで?』と意外に感じてくださるのではないかと」と、“狙い”を振り返る。

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そして「それは、ほとんどその通りになったように思います」と確かな手応えを示し、「ご覧いただくと、意外性だけに止まらない、作品の奥行きというものも感じてくださっていると思います」と、作品の魅力をアピールする。山本が語る“奥行き”とは、本作が決してスリラーやサスペンスだけでは終わらない、人間の弱さや業が描かれるドラマ性があるということ。「主人公が非常に特殊な物語」と分析し、「序盤からして、阿川大悟とその家族が『人喰い村でただただ追い詰められていく』という予想の範囲にはおさまらず、大悟がむしろ村人らと対立し、時に暴力を行使して闘争するという流れは、驚きを感じます」と、見どころを語る。

「さらに、その対立軸に交差するように、阿川家、もっと言えば大悟自身の抱える問題が浮き彫りになっていくという構造になっています。この構造の土台になっているのが、『生きる上で何を信じ、何を大切にするか』という社会、あるいは人間同士の価値観の衝突とその変容です」(山本)

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その上で目指したのは、「ガンニバル」が持つ特徴的なエッセンスを、映像化でさらに強化し、エンタテインメントとして純粋に楽しめる作品に仕上げること。片山慎三監督(「岬の兄妹」「さがす」)、「ドライブ・マイ・カー」で濱口竜介監督と共同脚本を担当した大江崇允ら、信頼を寄せるクリエイターが集結し、プロジェクトは大きな飛躍を遂げていく。

片山監督を起用した理由を、「作家性と娯楽性のバランス感覚です。事象を深く理解しながら、それに振り回されることなく、映像言語のなかに制御する感覚は貴重だと思います」と明かす山本。再タッグを組んだ大江についても、「作品世界に対するアナライズ(分析)能力と再構築力に絶対的な信頼を持っていました。また演出家でもある分、映像的なアプローチにおいても、片山さんと共鳴してくれる部分があると思っていました」と、その手腕を高く評価する。

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先ほど「主人公が非常に特殊な物語」という発言があったが、そんな主人公を担うキャスティングが非常に重要だったことは言うまでもない。大悟を演じるのは、いまや日本映画界になくてはならない存在に成長した柳楽優弥。山本は「これほど素晴らしい創造力と、胆力を持った俳優は稀有だと思います。そこに立つだけで、物語が充満してくるような深い影響力を持っておられます。そしてまさに、初めてレンズを通してモニターで“阿川大悟”を見た時に、とてつもないキャラクターが誕生すると確信させてくれました」と、手放しで称賛している。

日本が世界に誇るスタッフとキャストが集結し、“国際基準の作品づくり”を追求した「ガンニバル」。それだけに「我々は『内輪だけのネタを避ける』ということを常々意識していた」と振り返り、どこの国・文化でも起こりうる物語の普遍性を描き切るため、「ストーリーテリングの、いわば骨の太さのようなものを支えにしながら、片山さん、柳楽さんをはじめとしたスタッフ・キャストの映像設計のあり方は、常に“大いなる外輪”を意識していたように思います」と、胸を張る。

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「日常ではあまり体験できない恐さと慄きを感じながら、しかし、それを楽しむことができるドラマです。辺境の地で、人はかくも狂気の底に降りていけるものかという、世界の深淵をのぞき見るような物語は、見終わった後で、きっと皆さんの心のなかにただならぬ興奮が宿っていると思います。それは柳楽優弥さん、笠松将さん、吉岡里帆さんをはじめとした素晴らしい俳優たちが、おぞましい出来事を生々しく受け止め、反応し、それぞれの人物をまさに血の通った表現で生きてみせてくれたから。そして、片山監督、川井監督(第4~6話を担当した川井隼人)、全スタッフがそれらの瞬間を、現場で誠実に汲み取ってくれたからです。この稀有な力が結集した、またとないヴィレッジ・サイコスリラーを、ぜひご覧ください」(山本)

ガンニバル」(全7話)は、第5話までがディズニープラスで独占配信中。毎週水曜午後5時に、最新話が更新される。

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