吉田喜重監督が死去 「エロス+虐殺」「人間の約束」「鏡の女たち」など
2022年12月9日 10:30
1933年生まれ、福井市出身。東京大学卒業後の1955年に松竹入社。木下恵介監督らの助監督をつとめ、60年「ろくでなし」で監督デビュー。松竹の大島渚、篠田正浩両監督らとともに「松竹ヌーベルバーグ」のひとりとして活躍した。
1962年、岡田茉莉子の指名で「秋津温泉」を監督。64年に岡田と結婚。64年「日本脱出」編集を巡った対立で松竹を退社。66年に独立プロ「現代映画社」を設立し、大杉栄と伊藤野枝の日蔭茶屋事件をモチーフにした「エロス+虐殺」(69)はフランスで先行公開され高く評価された。「戒厳令」(73)発表後、映画製作から遠ざかり、多くのテレビドキュメンタリーを制作。
1986年、介護問題を扱った家族ドラマ「人間の約束」で映画に復帰し、カンヌ国際映画祭ある視点部門に選出され、同年の芸術選奨文部大臣賞を受賞。「嵐が丘」(88)はカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選ばれている。評論など執筆活動も行い、「小津安二郎の反映画」(98/岩波書店)は芸術選奨文部大臣賞、フランス映画批評家協会賞を受賞。20年4月には初の小説作品「贖罪 ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争」を刊行した。
近年では、2020年の第33回東京国際映画祭のトークイベントに出席し、フランス国立映画センター(CNC)の助成金制度によって製作された初の日本映画で、原爆がもたらす苦しみを描いた「鏡の女たち」(02)を「映画監督として最後の作品と決めて作りました」とコメント。「戦争の怖さ、恐ろしさは12歳の時から身につけています。したがって戦争反対ですし、平和こそが人間のあるべき姿だと今でも思っています。そういう記憶を鮮明に映画に残したいと思って映画を作りました」と、ポル・ポト政権下の虐殺をテーマにした作品を発表するカンボジア出身のリティ・パン監督と対談し、自身の映画製作の原点を語っていた。
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