秋津温泉

劇場公開日:

解説

藤原審爾原作を「甘い夜の果て」の吉田喜重が脚色・監督した文芸もの。撮影もコンビの成島東一郎。

1962年製作/112分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1962年6月15日

ストーリー

昭和二十年の夏、岡山県の山奥の温泉場“秋津荘”の娘新子は、河本周作を自殺から救った。周作は東京の学生だが、暗い時代に絶望し、体は結核に冒され、岡山の叔母を頼ってやって来たのだった。新子と周作の関係はこれから始まった。それから三年、周作は再び秋津にやって来た。荒んだ生活に蝕まれた体の療養だが、岡山の文学仲間と酒を飲み歩き、終いには新子に「一緒に死んでくれ」と頼んだ。そんな周作に惹かれる新子は、二人で心中を図った。しかし、新子の余りにも清い健康な心に周作は、生きることの美しさを取り戻し帰っていった。昭和二十六年周作はまた秋津にやって来た。女中のお民から知らせをうけて新子の心は弾んだ。周作は文学仲間松宮の妹晴枝と結婚したことを告げて帰っていった。それでも新子は、周作を忘れられなかった。二人が出逢ってから十年目、四度び周作がやって来たのは、別れを告げるためだった。松宮の紹介で東京の出版社に勤めることになったのだ。その夜二人は初めて肉体の関係を持った。昭和三十七年、周作は四十一歳。都会生活の悪い面だけを吸収した神経の持主と変ってしまった周作が、松宮の取材旅行の随行員として五たび秋津にやって来た。周作は料理屋の女将お民をみてびっくりした。お民から新子は“秋津荘”を銀行に売り、母親にも死なれて孤独でいることを聞いた。新子は翌晩、周作の旅館に訪ねて来た。二人は静かに酒を飲んだ。その晩、初めて新子は自分から「一緒に死んで」と頼んだ。俗悪な中年男となっている周作は、一笑にふし、肉体の交わりだけに溺れた。翌朝、新子は周作を送ってから、剃刀で手首を切った。知らせを受けて周作が引返した時は、新子は安らかな死顔をみせて、三十四年の生涯に鮮やかな終止符をうっていた。

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映画レビュー

4.5秋津温泉‼️

2023年11月14日
スマートフォンから投稿

泣ける

悲しい

怖い

この作品は岡田茉莉子さんですね‼️彼女のいろんな魅力が全編にあふれた作品です‼️戦後の混乱の中で出会った男と女‼️女は温泉宿の娘で、男はたびたび宿を訪れるが、歳月が経って堕落したつまらな中年男になり、女も時代の変化についていけず、命を捨てる・・・。とにかく岡田茉莉子さんが魅力的‼️病弱な男のために一生懸命薬を手に入れようとしたり、終戦の知らせを聞いて涙を流したり、男が宿を再訪してくれたときの嬉しそうな表情、一夜を共にした翌日に男を追いかけて行ったり、そして男に心中を迫り断られたときの絶望した表情とセリフ「どうしてなのよ」‼️純真で明るい少女が戦後の時代の流れの中で、好きだった男との気持ちがすれ違い、人生に絶望していく姿を凄まじい演技力で魅せてくれていて、キャリアの頂点ですよね‼️そんな彼女の姿をフィルムに収めた吉田喜重監督‼️さすがは旦那様‼️そんな岡田茉莉子さんの情感あふれる演技を彩ってくれる、林光さんの音楽も耳から離れないほど素晴らしいです‼️ちなみに美しい風景に癒される秋津温泉のモデルは岡山県の奥津温泉らしいです‼️一度は行ってみたい‼️

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共感した! 2件)
活動写真愛好家

3.5男は

2023年7月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

萌える

女のクローンばかりでは種の保存が効かないから生み出されたワクチンのような存在だとどこかの科学者が言ってたが、本作で出てくる男(長門演じる河本)はハズレワクチンだった。と言えよう。それに対し本年御年90歳とご紹介されている岡田茉莉子さん演じる女はそんなハズレで駄目になるには惜し過ぎる女で現代でも涎ものの入浴シーンを惜しげもなく披露する。しずかちゃん状態だったわけである◎こりゃぁ、前情報なければ前はおっきしておちおち寝られない映画である🎞️若者よ!現代の最新話題作ばかり追わず古きも掘りたまえ。とカツ入れられそうだわw

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tomokuni0714

3.0古き良き時代の名画

2023年3月12日
PCから投稿

17年間の愛を描く、悲しい恋のお話でした。
とても良かったです。

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みる

4.0運命の分岐点

2021年4月3日
Androidアプリから投稿

助けられた男より 助けた女の方が
最後は男に入れ上げてしまう

死にかけていた者と そうでない者が入れ変わってしまう

太宰治の出来損ないみたいな男に
新子(岡田茉莉子)は魅力を感じてしまったのだろうか

回復した男はグダグダしながらも 戦後の日本に意外と順応してゆく

温泉宿を継いだ女は 閉ざされた世界の中で
男との思い出も美化していったようにも思えた

この辺が恋愛のわからない処でもあるが
宿というものが〈待ちの姿勢〉である処も
関係していったのかもしれない

日本の敗戦で泣いたあの時が
彼女の終わりの始まりだったのだろうか
(今の日本を予想していたようにも感じられた… )

生きながらえることは大変であるが
そう立派なものでもなかったりする
それでも男には妻子がある

一方、女は温泉宿も失うことになる
妥協しなかった女は 決断しなかった女でもあり
〈拠り処〉すべてを失う

辛い恋愛の映画だった
そして恋愛にも〈純度の高低〉みたいなものがあるのだろうか… と思ったりした

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jarinkochie
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