映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ネタバレ解説 主人公と少佐の関係、感動の神回など
2022年11月25日 21:05
京都アニメーション制作の「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が、日本テレビ系「金曜ロードショー」で11月25日午後9時~午後11時34分に放送されます(放送枠40分拡大)。
本記事は、劇場版をご覧になる方に向けて、「テレビシリーズのここを知っておけばOK!」な要素を解説していきます。
あらすじ・キャラ&キャスト紹介のほか、「ヴァイオレットの成長や葛藤」「ヴァイオレットと少佐の関係」「少佐との出会いと別れ」「少佐の消息」、そして話題を呼んだ神回エピソードなどなど……これらの要素は、劇場版にも密接につながっていくのです。
なおテレビシリーズは、感情を持たない少女ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、人々の思いに触れ、愛を知るまでの物語。すべてが神回と言っても大げさではないほどに、毎話大きな感動と話題を呼んでいました。
戦時中、戦うための道具として生きてきた、感情を持たない少女ヴァイオレット。大陸を南北に分断した大戦は終結し、戦地で傷ついたヴァイオレットがベッドの上で目を覚ますと、砲弾をうけた両腕は義手に替わっていた。
彼女の心に残されたのは、戦場の記憶と上官であるギルベルト・ブーゲンビリア少佐が最後に告げた“ある言葉”だけ――。そんな時、元陸軍中佐のクラウディア・ホッジンズが迎えにやってくる。ホッジンズとともに、南部の港町・ライデンシャフトリヒの首都、ライデンを訪れたヴァイオレットは、手紙を代筆する仕事「自動手記人形」として働くことになる。
依頼主の気持ちを言葉に代えて手紙につづる仕事。代筆する女性たちは「ドール」とも呼ばれています。ヴァイオレットは、ホッジンズが立ち上げたC.H郵便社でドールをすることになります。
命令すれば戦う「人の形をした武器」「ただの道具」同然だったヴァイオレット。戦争が終わり、彼女の心に残ったのは、少佐から最後にもらった「あいしてる」という言葉でした。だが、感情を持たないヴァイオレットは、その言葉の意味がわからずにいました。
そんな時、他のドールが「愛してる」と代筆する場面に遭遇します。思わず、「『あいしてる』がどうしてわかるのですか」と問いかけるヴァイオレット。そしてホッジンズに自動手記人形になりたいと言い、その理由を告げました。
「『あいしてる』を知りたいのです」
「少佐は最後の命令の後に、その言葉を私におっしゃいました。少佐からその言葉が出たのは初めてでした。それがどのような状態を意味するのか、私には理解できないのです」
テレビシリーズでは、ヴァイオレットが手紙の代筆を通してさまざまな愛に触れ、少しずつ「あいしてる」を理解していきます。ヴァイオレットが出会った人々、代筆した手紙をご紹介します。
故郷の両親への手紙(第4話)
王女と王子が交わした、飾らない恋文(第5話)
亡き娘を思い、完成させた戯曲(第7話)※依頼内容は手紙の代筆ではなく戯曲執筆の手伝い
なかでも神回と言われているのが第10話。自身の命が長くないことを知った母親が、幼いひとり娘・アンのために、死後50年分の手紙の代筆を依頼するというエピソードです。
母とヴァイオレットが手紙を書いている間は、近づくことを禁じられたアン。それでも、母と一緒にいられる時間が長くないことに気づいていたアンは、「せめて手紙を書いている側でお母さんの手を握らせて欲しい」と懇願します。
ついには「手紙なんて届かなくていい」と泣き出したアン。そんなアンの側で、気丈にふるまっていたヴァイオレットですが、すべての手紙を書き終えてC.H郵便社に戻ると「(手紙が)届く頃にはお母さまは……」「まだあんなに小さい……寂しがり屋でお母さまが大好きなお嬢様を残して……」と大粒の涙を流しました。
劇場版には、アンの孫である女性が登場し、彼女をきっかけに“テレビシリーズのその後”が明かされます。また劇場版には、その他のエピソードのキャラクターたちも登場しており、彼らのその後も知ることができます。
ヴァイオレットにとっても何よりも大切な存在。それがギルベルト・ブーゲンビリア少佐です。ヴァイオレットとギルベルトの関係は、ギルベルトの兄であるディートフリート大佐がある少女を“武器”として連れてきたことからはじまります。
「そいつは子どもじゃない。そいつは武器だ」
上官の命令に抗えず、少女を戦場に連れていくことになったギルベルトは、少女の圧倒的な戦闘力を目の当たりにします。表情ひとつ変えず、次々と敵兵を仕留めていく少女。それでも、ギルベルトは少女を武器として扱おうとはせず、名前をつけ、読み書きを教えました。
「ヴァイオレットだ。君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」
次第に、ヴァイオレットにとってギルベルトの存在が大きなものになっていきました。
2人が最後に言葉を交わしたのは、聖地インテンスでの戦いでした。
南北大戦の決戦の地となる聖地インテンス。この地を制すれば戦いは終わる――ギルベルト部隊は内部への侵入に成功し、全軍突撃の合図を出しますが、直後にギルベルトが敵兵に撃たれます。
ヴァイオレットは致命傷を負ったギルベルトを抱えて逃げようとしますが、敵の攻撃によって自身も両腕を失います。腕をなくしてもなお、ギルベルトとともに逃げようとするヴァイオレットに対し、ギルベルトは最後の命令をします。
「君は生きて自由になりなさい」
「心から……愛してる」
ヴァイオレットは、涙ながらに「『あい』ってなんですか……? 私、わかりません、少佐」と問いかけるばかりでした。
戦争が終わった時、少佐は無事だと聞かされていたヴァイオレットですが、ギルベルトの親戚が「亡くなったギルベルト」と口にしたことによって、彼は無事ではなかったことを知ります。
ホッジンズが明かした真実は、インデンス最終決戦の後、ヴァイオレットは聖堂の下に倒れていたが、そこにギルベルトの姿はなかったということ。そして、瓦礫の下にギルベルトの認識票だけが残されていたため、未帰還扱いになっているということでした。
「少佐はきっとご無事です」
少佐の死を受け入れられないヴァイオレット。さらに、自動手記人形の仕事を通して「あい」を知りはじめたことで、戦時中に自らが奪った命の重さに気づき、苦悩します。
ヴァイオレットが立ち上がるきっかけになったのは、同僚のドール、アイリスとエリカからの手紙。彼女にとって、初めてもらった手紙でした。
「手紙をもらうというのは、とてもうれしいことなのだとわかりました」
多くの命を奪ったという事実と向き合い、そして「生きていていいのか」と悩みながらも、自動手記人形として懸命に手紙をつづったヴァイオレット・エヴァーガーデン。テレビシリーズでは、全13話を通して、ヴァイオレットの心が丁寧につづられました。
劇場版では、ヴァイオレットとギルベルト少佐のその後を中心に描いていますが、ヴァイオレットの歴史を知りたい、ヴァイオレットの心に触れたいという方は、ぜひテレビシリーズ全13話をご覧になってみてください。