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ブイ・タック・チュエン×藤元明緒 ベトナムと日本、両監督作の共通点を語る

2022年10月25日 19:30

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ブイ・タック・チュエン監督(左)と藤元明緒監督
ブイ・タック・チュエン監督(左)と藤元明緒監督

第35回東京国際映画祭と国際交流基金による共同トークイベント「『交流ラウンジ』ブイ・タック・チュエン×藤元明緒」が10月25日に開催され、コンペティション部門出品作「輝かしき灰」のベトナム人監督ブイ・タック・チュエンと、「海辺の彼女たち」で外国人技能実習生として来日したベトナム人女性たちの置かれた現実を描いた藤元明緒監督が互いの作品について語り合った。

ブイ監督の「輝かしき灰」は、ベトナム南部のメコンデルタの貧しい村に住む3人の女性の愛情を繊細な表現と美しい映像で描いた作品で、「私はアジアの映画を作っています。アジアにはアジア人同士でないと十分に理解し合えないことがあると思います」と話す。

輝かしき灰」を鑑賞した藤元監督は「ブイ監督の過去の作品を見てきたので、こうやってお話ができるのがうれしいです。ワールドプレミアという形で東京で公開されるのが奇跡のよう。3人の女性の愛の多様性、愛情というもののの複雑さや多様性、メタファーが全体を包んでいて、ベトナムの映画ですが日本人としてシンパシーを感じました」と感想を伝えた。

そして、「『漂うがごとく』と今回の『輝かしき灰』、共に結婚式の2次会、祝いの場からファーストシーンが始まっているのを見て、ブイ監督の作品に立ち会っていると思いました。群像劇の始まりとして、人々が集まる場所で始まる、ということが勉強になりました」と、ベネチア映画祭国際批評連盟賞を受賞した前作との共通点を挙げると、ブイ監督は「正直に告白すると、脚本を書くときに、結婚式のシーンだと前の作品と同じになってしまうからやめようと思ったのですが、あれ以外の導入はなかったのです。藤元さんにバレてしまいましたね(笑)。群像シーンは映画の中で作りにくいもの。今回の撮影時に前作のことは思い出していませんでした。前作は都会の話でしたし、今回は場所も変わって、前作から10年以上もたっていたので、まるで学校を卒業したばかりの気持ちで取り組んだ作品です」と明かす。

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藤元監督の「海辺の彼女たち」について、ブイ監督は「日本にいるベトナム人がベトナム語を話していたこと」に驚いたそうで、「そして、藤元さんは社会の弱い立場にいる人達を描いています。私も同じテーマでドキュメンタリーを撮ったことがあり、実際の人生は芸術よりも興味深いと思っています。そして、芸術家としてそれを語り直すことをしていますがやはり現実の方が面白い」と持論を述べ、なぜベトナム人技能実習生をテーマにしたのか質問した。

藤元監督は「妊娠した技能実習生のベトナムの女性が、日本で働き続けるために中絶を選んだという実際の事件があり、日本に来たことによって個人が生きていく尊厳が、人間ではなく労働力として扱われる葛藤を知りました。自分の妻も家族を支えるために日本に来たので、シンパシーを感じたこともこの作品を作ったきっかけのひとつ」と回答。そして、両監督それぞれの作品のキャスティングの話題に移行し、その重要性と、条件が許せば、キャストにしばらく撮影場所で過ごしてもらうという共通点について語る。

さらに、ふたりの作品のもうひとつの共通点として、「ブイ監督の作品では俳優と水や海が同じように重要なものとして出てくるのが印象的」と言及し、「一般的にも愛に関する映画は水が出てくることが多いですが、ブイ監督の作品は水と人が溶け合っているような場面が、普遍的な芸術表現のように感じた。それは意識的な表現ですか?」と藤元監督。

ブイ監督は「日本もベトナムも長い海岸線を持っていることが共通していますね。水は“情”と繋がっていると考えます。情けや愛や性欲という意味でも」「『輝かしき灰』の中では、水の流れは人間の本質を表している」と制御することができない、様々なメタファーを持つものとして捉えていると答えた。

最後に藤元監督は「ブイ監督は国籍や国境で区切れないようなものを捉えられているので、いつか日本を舞台にしたベトナム映画を撮ってほしい」と、ブイ監督は「藤元さんもベトナムに対してまた違った視点を持ってもらって、新しい映画を作ってほしい」と今回のトークをきっかけに、お互いの新作への期待を語り、友好を深めていくことを誓っていた。

第35回東京国際映画祭は、10月24日~11月2日、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。

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