ロヒンギャ題材の映画「LOST LAND ロストランド」は藤元明緒監督最大の挑戦作「僕自身救われた」【第38回東京国際映画祭】
2025年10月30日 22:45

第82回べネチア国際映画祭のオリゾンティ部門で審査員特別賞を受賞した藤元明緒監督の「LOST LAND ロストランド」が10月30日、第38回東京国際映画祭のNippon Cinema Now部門で上映された。ジャパンプレミアとなったこの日、TOHOシネマズシャンテには藤元明緒監督、プロデューサーの渡邉一孝氏、撮影監督の北川喜雄氏が顔を揃え、ティーチインに臨んだ。
同作は、世界で最も迫害されている民族のひとつといわれる、ロヒンギャたちの証言をもとに撮影。バングラデシュの難民キャンプで暮らす4歳のシャフィと9歳の姉ソミーラが、離ればなれになった家族との再会を願い、仲間たちとともに国境を越えていく命がけの旅路を描いた。

藤元監督は「べネチアからはじまり、いろいろな国で上映してきました。ようやく日本でお披露目できることをすごくうれしく思っています」と喜び、「主演で出てくれた子どもたち2人。実際のロヒンギャの人たちが出ているんですけど、パスポートがないなど事情があり渡航はできないってことで、立ち会えず残念だなと思っています。その代わり、きょうは僕たちに質問してください」と呼びかけた。渡邉氏は「藤元作品の中でも最大の挑戦作になります。インディペンデント映画としての精神が滲み出るような……。4カ国共同制作で、スタッフは8、9カ国以上の人たちが一丸となってまとまったからこそできた企画だと思う」と感慨深い表情で語った。続く北川氏は「撮影監督として、この2人のチームに『LOST LAND ロストランド』から参加させていただきました。撮影しながらいいものが撮れたと思っています」と目に涙を浮かべながら述べた。


まず観客から寄せられた質問は「子どもたちはどこまでシナリオを理解し、セリフは自然だったのか」。藤元監督は「出演者の人たちには、文字を通してのコミュニケーションが難しかったので、基本的には脚本に書かれていることを口頭で説明していく撮影スタイルでした」と明かし、「子どもたちには、本当に構成上外せないセリフは練習してもらった。特に、ラストシーンの弟くんの話は脚本にあったことなので、4歳とは思えないほど頑張って練習してくれました。それに、お姉ちゃんは勘がいい子でして、こちらが説明することを自分なりに受け取って、現場でどんどん発揮してくれた。2人の頑張りとしか言えないです」と振り返った。
さらに「北川さんが目線の入らないところで撮っているとき、お姉ちゃんは北川さんの位置をチラチラ確認しているのをモニター越しに見ていました。周囲のどこに何があるのかを含めて、どうやるのかを感覚的にやっていた。すばらしい才能だと思いましたね」と絶賛。これに、北川氏は「ブートキャンプのように、撮影しながらどんどんカメラのこともわかるようになっていった。現場の中で進化していったと言いますか、子どもたちに付いていくのが大変でしたね」と共感した。

また、カメラポジションについてトークする場面も。藤元監督は「カメラの近さって、その人への愛着で決める人と、映画的な発見をしたいっていう欲望で決める人、これまでの経験上結構タイプが別れる」と前置きをし、「北川さんが面白いのは、どっちかに偏ってない。それ以上行くと一線を越えてしまうってところで、すごく適切だった」と称賛。これに、北川氏は「自覚なし(笑)」と言い、続けて「自分で思うところは、いつも被写体のことを好きになりすぎて寄っちゃう。あのときは、ちょっと寄りすぎないようにやろう週間だったってのはあります。そこがちょうどよかったのかもしれない」と自己分析した。
最後に「ロヒンギャに切り込んでこの作品を作ったことに覚悟を感じた。これから公開があると思いますが、意気込みを聞かせてほしい」と求められると、藤元監督は「(映画に)出るのが1番リスク。知らないところで上映される。そのときオッケーでも1年後『やっぱりやめとけばよかった』ってなるかもしれない。覚悟を持って出てくれてありがたかったです。チームもそうです。とばっちりを受けて北川さんがミャンマー出禁になるかもしれないですから。みんなのいろいろな想いでこの映画ができたってのは、ミャンマーと関わってきた僕自身救われているなって思いました」とじみじみと話した。
第38回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。
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