【インタビュー】相葉雅紀、30代最後に思うこと
2022年10月1日 11:00
周囲を温かな雰囲気で包み込む、飾らない人柄も魅力的な相葉雅紀。ジャパニーズホラーの名匠・中田秀夫が監督を務める「“それ”がいる森」ではホラー映画初出演を果たし、また新たな扉を開いた。国民的アイドルとして第一線を走り続けて39歳となった今年は、本作への出演だけでなく、12年ぶりとなった舞台「ようこそ、ミナト先生」でも主演を務めるなど、俳優としてもチャレンジングな1年となった。「いつも、何事にも全力。そうしてきたことで、すばらしい出会いやタイミングに恵まれたのかもしれません」とがむしゃらな姿勢を明かした彼が、30代の最後に思う“これまで”と“これから”を語った。(取材・文/成田おり枝)
本作は怪奇現象が多発する森を舞台に、“それ”と呼ばれる得体の知れない何かがもたらす恐怖を描いたホラー。「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」以来8年ぶり、「嵐」活動休止後は初となる映画主演作品で、相葉は“それ”を目撃した衝撃や、恐れながらも息子を守るために“それ”に立ち向かっていく男・淳一を好演し、観客を釘付けにする。
8年ぶりの主演映画として、なぜホラー映画を選んだのか。相葉は「『次はホラーがいい』と思っていたわけではないんですよ」と笑顔を弾けさせながら、「中田監督が『今、撮りたいホラー』ということで、お声がけをいただいて。ホラーの名匠からお声がけいただけるなんて、とても光栄ですから。『ぜひやらせてください』とお返事しました」と「リング」シリーズや「事故物件 恐い間取り」など、数々のヒット作を手がけてきた中田監督とのタッグを喜ぶ。
中田監督にとっても、既存のジャパニーズホラーではやらなかったような“新しい恐怖”にトライしたのが本作だ。相葉はそういったチャレンジの場に参加できたことも「うれしかった」そうで、「台本を読んだときに、『これは好きなタイプの映画だ』と感じて。ホラーがそんなに得意ではなかった僕でもドキドキハラハラとできる作品だと思いました。もちろんホラーとしての見応えもありつつ、親子の絆や家族の絆などヒューマンドラマとしても楽しめると思います」と胸を張る。
「実は怖いのが苦手」と正直に打ち明けた相葉。ホラー映画の現場は刺激的なものだったという。
「現場で、実際に“それ”を見かけるとめちゃくちゃ怖かった!」と実態として現れた“それ”に驚きつつ、「“それ”とのシーンはずっと高いところでの緊張感を保っていたので、撮影後はドッと疲れがくることもありましたが、ものすごくワクワクとしながら撮影できました」とにっこり。「中田組のスタッフの皆さんは、“それ”を撮っているときのテンションがやたら高いんですよ(笑)。『この角度から撮ると怖いね!』『こうした方がもっと怖い』と盛り上がりながら、たくさんのこだわりを込めていく。ものづくりが好きなんだなという愛情も伝わってきて、とても刺激的でした」と充実の時間を過ごした様子だ。
劇中では相葉が、息子思いの父親としての表情を見せている。相葉演じる淳一の息子、一也を演じたのは、本作が映画初出演となる上原剣心だ。
相葉は、「不思議と、僕と剣心の顔がだんだん似ているように見えてくる。僕と(一也の母親役である)江口(のりこ)さん、どちらにも似ているような気がするんですよ。面白いものですよね」と目尻を下げ、上原の印象について「若いのにものすごくしっかりしている。僕が事務所に入ったのが14歳くらいで、剣心はまだ12歳。僕のデビュー当時と比べても、やっぱり相当しっかりしていると思いますね」と感心しきり。
さらに「初めての映像作品ということで、剣心はクランクインの前に何度か演技の稽古をする予定だと聞きまして。僕もスケジュールが合う限り参加して、一緒に演技をしていました」としっかりと“息子”をサポートしたことを明かし、「僕自身、先輩の背中を見ながら『こうやってやるんだ』といろいろなことを学んできました。剣心には緊張したり、気を遣うことなく、120%の力を注いでその役に没頭してくれたらいいなと思っていました」と後輩に愛情を傾ける。
本作は、恐ろしい“それ”が登場するホラー映画でありながら、大事な局面で逃げてしまいがちだった淳一が、息子を守るために立ち上がる……という父親としての成長物語でもある。歌手や俳優業、司会業などマルチに活躍の場を広げてきた相葉。大舞台に立つ場面や、未知なるものへの挑戦も数々経験してきたが、淳一の「逃げたい」という心境に共感はあるだろうか?
相葉は「逃げたくなるようなことも、たくさんありました」と告白。「でも僕の中で重要なのが、『後悔しないようにする』ということで。『これをお断りしたら、あとで後悔するかもしれない。それは嫌だな』と考えることが、とても大事になってくる。『あのとき、少し無理してでもやっておけばよかった』と思うのは、一番嫌ですよね。たとえ失敗したとしても、全力でやれば納得できる。失敗を恐れないわけではないけれど、しっかりとそれも受け入れて、『自分でやると決めたことなんだ』と前を向いていくことが大切だと思っています」とやわらかな表情の裏側に、情熱をみなぎらせる。
39歳となった今年は、久々の舞台出演、初めてのホラー映画などチャレンジが続いた。相葉は「たまたま30代の最後に、新しいことや久しぶりの挑戦が重なった。特別に計画していたわけではないですが、僕はそういった出会いやタイミングが訪れることを大切にしたいと思っています」としみじみ。
続けて「充実した30代でした」と切り出し、「いつも全力でしたね」とこれまでの道のりを噛み締める。「何をやるにも全力。40代も全力で進んでいくんだと思います。『40代はこういう方向で行こう』と無理やり舵を切るのではなく、出会いとインスピレーション、『後悔しないよう』にという気持ちを大切に、これからも歩んでいきたいです」と穏やかな笑顔で未来を見つめる。
「本作をきっかけにホラー映画のオファーが続々と届いたら?」との質問には、「そうしたら、ホラー俳優としても頑張ります!」と楽しそうに話していた相葉雅紀。本作のプロデューサーによると、撮影現場では上原をしっかりと支え、相談や提案をしながら取り組む彼の真摯な姿勢に、中田監督も大いに喜んでいたという。ひたむきさや全力の姿は、周囲を惹きつける。きっとこれからも、相葉にすばらしい出会いが待っているはずだ。
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ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
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