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堀田真由、俳優生活で目の当たりにした恐怖体験は菅田将暉の……

2022年8月19日 10:00

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撮影現場で笑顔の堀田真由
撮影現場で笑顔の堀田真由

白石晃士監督とWOWOWがタッグを組んで制作したオリジナルドラマ「オカルトの森へようこそ」に、ドラマ版では放送されない短編を加えた劇場版が、「オカルトの森へようこそ THE MOVIE」として8月27日から全国の劇場で3週間限定公開される(デジタル配信も開始)。今作に主演し、助監督の市川美保役に息吹を注いだ堀田真由に話を聞いた。(取材・文/大塚史貴)

貞子vs伽椰子」や「不能犯」を手掛け、ホラー映画を得意とする白石監督の真骨頂ともいえる、編集も兼ねたオリジナルPOV(ポイント・オブ・ビュー=主観視点)ホラーとして描かれた「オカルトの森へようこそ」。ホラー映画監督の黒石光司(白石)が、助監督の市川(堀田)を連れて実録映画の撮影のために山奥の家を訪れるところから物語は始まる。そこには、黒石作品のファンだという精神状態が錯乱気味の美女・三好麻里亜(筧美和子)がいた。

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「私が体験した出来事は、監督の映画の内容そのものなの」と必死に訴える麻里亜に懐疑的な眼差しをおくっていた市川だったが、黒石のカメラが思いもよらぬ現象を捉え始める。事態は不可解で危険な方向へ猛スピードで進展し、次々と恐怖が迫りくる森の中で、“スーパーボランティア”の男性・江野祥平(宇野祥平)やイケメン霊能者のナナシ(飯島寛騎)に助けられるが、カメラは絶えず恐ろしい出来事を記録していく……。

これまでも、白石監督は「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズや「ある優しき殺人者の記録」などで自らがカメラマンとなり、POVで展開する臨場感たっぷりの映像を生み出してきた。その中で、堀田が挑む「助監督の市川」は、白石作品のファンのあいだではお馴染みの役名だ。

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■ホラーが苦手で「貞子vs伽椰子」も…

堀田が体現してみせた市川は、助監督として支えながら時に弱気になる黒石を叱咤するなど、キュートな見た目とは裏腹にタフで毒舌な一面を劇中で披露している。勝手に動くドアを蹴飛ばしてブロックするなど、不可思議な出来事に動じない姿は頼もしく、時に笑いを誘う。役作りをしていくうえで、意識した事はあったのだろうか。

堀田:フェイクドキュメンタリーという事だったので、監督からはドキュメンタリーの部分を大事にして欲しいと言われていました。生っぽさというか、セリフの語尾を変えても大丈夫だからと言って頂きました。

最初はそれがなかなか難しくて……。キャラクターがぶれないようにしなくちゃいけないのですが、やり過ぎると誇張しているように見えるし。監督が抱いていらっしゃる市川像と、私が持ってきた市川が当初は微妙に違ったみたいで、そこのすり合わせに関しては何度もテイクを重ねましたね。

そもそも堀田はホラーが苦手で、白石監督と会うまでは「私でいいんだろうか……」という思いを抱いていたという。

堀田:「貞子vs伽椰子」も大事なシーンを観られなかったりして……。そんなこともあって「私でいいのかな」と思っていたんですが、お会いしてみたらとてもチャーミングな方で安心しました。柔らかい方でしたし、作品に対する愛も強く感じたので、撮影はとてもやりやすかったです。

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■現場ではヒルに血を吸われないように注意

撮影はほぼ順撮りだったそうだが、長回しのシーンも多く、白石監督が俳優として演じながらカメラを回していたこともあり、自然とスタッフ、キャスト全員が集中力を発揮する濃密な現場になったことは想像に難くない。

堀田:真夏の撮影でかなり暑くて、割と過酷な現場だったんです。ロケ地が山の中とか廃墟だったので、交通手段も車では途中までしか行けず、そこからは皆で歩いて行ったりして(笑)。ヒルがいたので血を吸われないように気を付けたり、スタッフ・キャストの一体感は一段と強かったかもしれません。

朗らかな笑顔、はきはきとした語り口は、自然と周囲の空気を和ませる。今年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に小栗旬扮する北条義時の正室・比奈として出演しており、これまで以上に飛躍の年といえる。堀田にとっては、俳優としてのデビュー作はWOWOWのドラマ「テミスの求刑」(2015)。7年間、地道にキャリアを構築するなかで、主演として凱旋するという意味合いをどうとらえているのだろうか。

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堀田:原点ともいうべきWOWOWに主演という形で戻ってこられるということが嬉しくて、オファーを受けさせて頂きました。7年間……、特に変わっていないんですよね。これまで原作ものの実写化作品に出演させて頂く時期も長くあったのですが、原作を大事にしている分、一文字でもセリフを言い間違えることが許されませんでした。

そして私がナチュラルというか、あまり誇張し過ぎないお芝居を得意としていたのですが、もっと大きく演じて欲しいと言われていたんです。そういう時期を越えて、フェイクドキュメンタリーという形でナチュラルな芝居に戻ってきた時に一瞬、生っぽい感覚を忘れていたんですね。得意としていた部分を失いかけていたのですが、白石監督にまた引き出してもらえたと思っています。

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■芸能生活で忘れられない“恐怖体験”

それにしても、恐怖をにじませながら森を全力疾走する姿は堂に入っていた。恐怖の質は人によって様々だろうが、堀田にとってこれまでの芸能生活の中で忘れられない“恐怖体験”というのは、どのような類のものなのだろうか。

堀田:「3年A組-今から皆さんは人質です-」という作品での菅田将暉さんでしょうか。菅田さんは先生役だったんです。それほど年齢が離れているわけではないのですが、生徒役の誰もが菅田さんの芝居に圧倒された“恐怖”というのはありましたね。

凄い長回しで、教壇に立たれている菅田さんの話を私たちが聞いているシーンでした。菅田さんが急に鼻血を出されたのですが、集中されていたので鼻血を止めることなく、そのままお芝居を続けられて……。その集中力が尋常ではなく、生徒役が今でも顔を合わせると「凄かったよね」と話をするくらい、良い恐怖を体験させてもらいました。

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今作には、原点ともいうべきWOWOW作品に主演として凱旋するということのほかに、もうひとつ大きな意味がある。堀田にとって、劇場公開される実写映画作品としては出演20本目という節目にあたるからだ。16年の「全員、片想い」から始まった、銀幕の世界で生きるということを、どう受け止めているか聞いてみた。

堀田:わたし自身、何かに行き詰った時に、現実から離れたい時に映画を観る事が多いんですね。そうして心が救われて、この世界に入りたいと思ったので、自分が関わった20本の中の1本でも誰かにとって、そんな風に思ってもらえていたら嬉しいと思います。作品ではなく、シーンでもいいんです。少しでも誰かの救いになっているのだとしたら、わたしはこの仕事を続けて来て良かったなと思います。

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執筆者紹介

大塚史貴 (おおつか・ふみたか)

X(Twitter)

映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。

Twitter:@com56362672


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