【「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」評論】新旧キャラ総出で再考する、共存世界への意識
2022年7月31日 17:00

恐竜テーマパーク崩壊後の野生化したクローン恐竜をめぐり、彼らの生存権に迫った前作「ジュラシック・ワールド 炎の王国」(2018)。奇しくも同作はシリーズ第2作「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」(97)を反復するドラマとして、旧3部作の存在をいみじくも感じさせるものだった。それだけにクリス・プラットが主要キャラクターとなる「ジュラシック・ワールド」編と、クラシックとして同シリーズを先導した「ジュラシック・パーク」編との融合は、手段を問わず必然といえるのではないか? 前者の掉尾を飾るといわれている今回のフランチャイズ通算6作目は、旧3部作の主要キャラとの運命的な出会いをはたす。
古生物学者グラント(サム・ニール)ら「ジュラシック・パーク」編キャラクターは今回、大量発生した巨大イナゴの調査を経て、バイオテクノロジーが悪用されている可能性へと至る。いっぽう恐竜トレーナーのオーウェン(プラット)は誘拐されたクローン少女メイジー(イザベラ・サーモン)とラプトルの子を救出するため、恐竜の売買をしている地下マーケットに潜入する。どちらも陰で糸を引くのは、恐竜保護区を設立したジェネティクス企業バイオシン社の存在。クローン恐竜に留まらないDNA操作の闇が、ここにきて明るみとなるのだ。
映画はこの2本のストーリーラインを一本化し、恐竜版「ワイルド・スピード」あるいは「ミッション:インポッシブル」とでも呼ぶべき、ワールドワイドなダイナソーライドの様相を呈していく。そしてラプトルとのバイクチェイスや新種の襲撃など、幾多の危機的状況を新旧キャラたちは共にし、結束を固めていくのだ。それをもって「盛り込みすぎ」などと言及する海外レビューもあるが、両者を均等に立てて偏りのない構成は場当たり的なものではなく、緊密に練られた成果だと感心を誘うだろう。「ジュラシック・パーク」編を自覚的に連想させるシチュエーションを随所に盛り込み、オールドファンをヒートアップさせる作りも悪くない。
だがなにより、人類が恐竜との共生を余儀なくされ、その環境に適応しなければならない事態は、新型コロナウイルス感染拡大の脅威にさらされた現代においてリアルな質感をまとっている。新旧キャラ総出で再考の機会を得た、生命コントロールの脆弱性と共存世界への意識。そこまで深刻ぶるにはやや狂騒的な内容だが、CG恐竜でビジュアル革命を起こしてから、およそ30年。かつてマイケル・クライトンとスティーブン・スピルバーグが映画にもたらしたコンセプトは、ここまで遠大で奥行きのあるサーガへと発展したのだ。
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